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第2部 5章
1 側妃候補の転落
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廊下を走る音がして、扉が叩かれる。
エレノアが扉を開くと、待ちきれないようにレイヴンが飛び込んできた。
「アリシア!会いたかった!!」
駆け寄ってきたレイヴンがアリシアをぎゅっと抱き締める。
最近では落ち着いてきていたレイヴンの愛情表現がまた激しくなった。
夢の中でアリシアを失う疑似体験をしたレイヴンは、アリシアの傍を離れるのが恐ろしくなったようだ。
それはアリシアも同じだった。
このまま、あの夢のようにレイヴンが戻って来なくなってしまったらどうしようと思う時がある。
だからこうして急いで帰って来てくれると嬉しい。
アリシアもレイヴンの背中へ腕をまわしてそっと囁いた。
「私も……会いたかったです」
「アリシア!!」
アリシアを抱き締めるレイヴンの力が強くなる。
耳元や頬に触れる唇の感触がくすぐったくて、自然に笑みが浮かんでいた。
「今日はカナリーの嫁入り支度を見に行かない?調度品とか色々運び込まれたみたいだよ」
「まあ!ぜひ見せていただきたいですわ」
レイヴンの提案にアリシアは喜んで頷いた。
ジェーンの時とは違って幸せな結婚式の準備は見ている方も幸せになれる。
2人は早速正殿へ向かった。
月日が流れるのは早く、カナリーが学園を卒業してから既に数か月が経っている。
ホッとしたことに、議会が進めていた側妃候補の学園卒業後すぐの輿入れは実現していない。
最有力候補だったルシア・ブラウニング侯爵令嬢は、側妃になるどころか社交界から姿を消している。
レイヴンやアリシアにとって幸運だったのは、ルシアが高慢でうぬぼれの強い令嬢だったことだろう。
側妃の最有力候補になったルシアは、学園で既に側妃になったかのように振る舞っていた。取り巻きを周囲に侍らせ、他のクラスメイトを見下すような態度を見せる。
同級生だったカナリーは、そんなルシアを冷めた目で見ていた。相手にしていなかった、と言っても良い。
そんなカナリーの態度が目についたのだろう。授業の課題やダンスレッスン、試験結果など、事あるごとにカナリーと張り合うようになっていた。
そして事件は起こる。
「カナリー殿下は侯爵夫人になられるのでしょう?王太子殿下の側妃となる私を尊重するのは当然ではありませんか?!」
ルシアがそういった時、教室の中は凍り付いた。
確かにカナリーは卒業後降嫁して侯爵子息の夫人となる。だけどカナリーが国王の、それも王妃所生の娘であることが変わるわけではない。同様に王太子の側妃になってもルシアが侯爵家の生まれであることを変えることはできない。
だから嫁いだ後、互いに身分が変わってもカナリーを王女として尊重するのが暗黙のルールなのだ。
それをルシアは真っ向から否定した。
勿論ここで黙っているカナリーではない。
「あら。私の知らない内にルシア様はお兄様の側妃になっておられたのですね。何も知らず、失礼を致しました」
「……何を言っておられるのです?」
「あら、側妃になられたのでしょう?だから私に、そのようなことを仰られたのですわよね?まさか侯爵令嬢が言われたわけではありませんわね?」
「っ!!」
いくら最有力候補と言われていても、ルシアはまだレイヴンに嫁いだわけではない。今はまだルシアは侯爵令嬢で、カナリーは王女である。
思い上がり、正しく周りが見えなくなっていたルシアは、ここで初めて己の失態に気がついて青褪めた。
「あら?でも側妃の輿入れは、確か学園を卒業した後だったはず……。やはりまだ輿入れ前のような……。私、今日のことは帰って母に報告致しますわ」
「カナリー殿下。それがよろしいかと存じます」
「ええ、私も」
ルシアの態度に嫌悪感を抱いていたカナリーの友人が口々に賛成の意を述べる。
青褪めたルシアが一言も弁明できずにいる内に、カナリーたちは教室を出て行った。
その日、ブラウニング侯爵邸にマルグリットからの抗議文が届いたのはいうまでもない。
エレノアが扉を開くと、待ちきれないようにレイヴンが飛び込んできた。
「アリシア!会いたかった!!」
駆け寄ってきたレイヴンがアリシアをぎゅっと抱き締める。
最近では落ち着いてきていたレイヴンの愛情表現がまた激しくなった。
夢の中でアリシアを失う疑似体験をしたレイヴンは、アリシアの傍を離れるのが恐ろしくなったようだ。
それはアリシアも同じだった。
このまま、あの夢のようにレイヴンが戻って来なくなってしまったらどうしようと思う時がある。
だからこうして急いで帰って来てくれると嬉しい。
アリシアもレイヴンの背中へ腕をまわしてそっと囁いた。
「私も……会いたかったです」
「アリシア!!」
アリシアを抱き締めるレイヴンの力が強くなる。
耳元や頬に触れる唇の感触がくすぐったくて、自然に笑みが浮かんでいた。
「今日はカナリーの嫁入り支度を見に行かない?調度品とか色々運び込まれたみたいだよ」
「まあ!ぜひ見せていただきたいですわ」
レイヴンの提案にアリシアは喜んで頷いた。
ジェーンの時とは違って幸せな結婚式の準備は見ている方も幸せになれる。
2人は早速正殿へ向かった。
月日が流れるのは早く、カナリーが学園を卒業してから既に数か月が経っている。
ホッとしたことに、議会が進めていた側妃候補の学園卒業後すぐの輿入れは実現していない。
最有力候補だったルシア・ブラウニング侯爵令嬢は、側妃になるどころか社交界から姿を消している。
レイヴンやアリシアにとって幸運だったのは、ルシアが高慢でうぬぼれの強い令嬢だったことだろう。
側妃の最有力候補になったルシアは、学園で既に側妃になったかのように振る舞っていた。取り巻きを周囲に侍らせ、他のクラスメイトを見下すような態度を見せる。
同級生だったカナリーは、そんなルシアを冷めた目で見ていた。相手にしていなかった、と言っても良い。
そんなカナリーの態度が目についたのだろう。授業の課題やダンスレッスン、試験結果など、事あるごとにカナリーと張り合うようになっていた。
そして事件は起こる。
「カナリー殿下は侯爵夫人になられるのでしょう?王太子殿下の側妃となる私を尊重するのは当然ではありませんか?!」
ルシアがそういった時、教室の中は凍り付いた。
確かにカナリーは卒業後降嫁して侯爵子息の夫人となる。だけどカナリーが国王の、それも王妃所生の娘であることが変わるわけではない。同様に王太子の側妃になってもルシアが侯爵家の生まれであることを変えることはできない。
だから嫁いだ後、互いに身分が変わってもカナリーを王女として尊重するのが暗黙のルールなのだ。
それをルシアは真っ向から否定した。
勿論ここで黙っているカナリーではない。
「あら。私の知らない内にルシア様はお兄様の側妃になっておられたのですね。何も知らず、失礼を致しました」
「……何を言っておられるのです?」
「あら、側妃になられたのでしょう?だから私に、そのようなことを仰られたのですわよね?まさか侯爵令嬢が言われたわけではありませんわね?」
「っ!!」
いくら最有力候補と言われていても、ルシアはまだレイヴンに嫁いだわけではない。今はまだルシアは侯爵令嬢で、カナリーは王女である。
思い上がり、正しく周りが見えなくなっていたルシアは、ここで初めて己の失態に気がついて青褪めた。
「あら?でも側妃の輿入れは、確か学園を卒業した後だったはず……。やはりまだ輿入れ前のような……。私、今日のことは帰って母に報告致しますわ」
「カナリー殿下。それがよろしいかと存じます」
「ええ、私も」
ルシアの態度に嫌悪感を抱いていたカナリーの友人が口々に賛成の意を述べる。
青褪めたルシアが一言も弁明できずにいる内に、カナリーたちは教室を出て行った。
その日、ブラウニング侯爵邸にマルグリットからの抗議文が届いたのはいうまでもない。
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