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第2部 5章
3 側妃候補の転落③
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そのまましばらくカナリーと話ながら調度品やドレスを見て歩いた。
臣下の結婚式には参列できないレイヴンとアリシアだが、降嫁するカナリーの結婚式には参列することができる。
カナリーがアリシアのドレスに興味を示したので、今作っている最中のドレスについて少し話した。ドレスのデザインはレイヴンと一緒に決めたのだ。
「お2人の仲睦まじいお話を聞いていると、私も嬉しくなりますわ」
カナリーが嬉しそうに笑う。
そんなカナリーにアリシアは軽く頭を下げた。
「カナリー殿下のおかげですわ。感謝しています」
「まあ、何のことですの?」
カナリーが不思議そうに首を傾げる。
アリシアはそんなカナリーに微笑みだけで応えた。
カナリーが何も知らない振りをするならそれで良い。
だけどアリシアは、カナリーがルシアの態度にそれ程腹を立てていないことを知っていた。
それなのに謝罪を受け入れなかったのは、アリシアの為だ。マルグリットが強く反応したのも同じことだろう。
アリシアはそんな2人に心から感謝していた。
その気持ちが少しでも伝われば良いと思う。
側妃の話がなくなったわけではない。
ただ議会も、乗り気ではないレイヴンに無理矢理あてがった最有力候補の失態である。
形でいえばルシアの次に爵位の高い令嬢が最有力候補へ繰り上がることになるが、同じ失態を恐れて中々指名できずにいるようだ。
側妃といえば、あの悪夢を見た後、アリシアはシーラという令嬢を調べ尽くした。
思い返してみても現実では知らない令嬢である。
側妃になるような令嬢がこれまで社交界に出たことがないとは考えにくい。それにシーラの実家である伯爵家にも聞き覚えがなかった。
図書室に籠ったアリシアは、アナトリアの貴族名鑑を隅々まで読み尽くした。
最新のものから数年前まで遡っても、シーラも伯爵家も出てこない。やはりアナトリアの貴族ではないのだ。
その後アリシアは周辺諸国の情勢を思い浮かべながら、レイヴンに側妃を差し出しそうな国の貴族名鑑を読んでいく。3つの国の貴族名鑑を読み終えると、ホッとして図書室を後にした。
アリシアの選んだ貴族名鑑には、シーラの名前も伯爵家もどこにも載っていなかった。
シーラは夢の中だけの存在だとやっと安心することができたのだ。
だけどあれは、有り得る未来だ。
レイヴンが側妃を迎えたら、帰ってこない夜が出てくる。
そうしたらアリシアは、あの広く寒い寝室で1人過ごさなけれなならない。
夢の中で感じた肌寒さや寂寥感を思い出したアリシアは、自室へ続く廊下がやけに長く感じていた。
「アリシア?どうしたの?」
レイヴンに話し掛けられたアリシアは、ハッとして顔を上げた。
レイヴンが心配そうに顔を覗き込んでいる。
上手く言い訳を思いつけずに、アリシアは曖昧に微笑んだ。
「……凄く顔色が悪いよ?気分が悪いんじゃない?」
「いえ、何でもありません」
そう言いながらアリシアはレイヴンの背中へ腕をまわし、胸に頬を寄せる。
レイヴンは驚きながらもアリシアをぎゅっと抱き締めた。
ここにはカナリーがいる。
いつもなら人前でこんなことをするアリシアではない。
それだけに何かあるのだと察せられた。
しばらくそうした後、アリシアが小さな声で「夢を、思い出したのです」と言った。
それだけで何のことかすぐにわかる。
レイヴンはもう一度アリシアを強く抱き締めた。
カナリーはその間、1人で違う方向を向いていた。
臣下の結婚式には参列できないレイヴンとアリシアだが、降嫁するカナリーの結婚式には参列することができる。
カナリーがアリシアのドレスに興味を示したので、今作っている最中のドレスについて少し話した。ドレスのデザインはレイヴンと一緒に決めたのだ。
「お2人の仲睦まじいお話を聞いていると、私も嬉しくなりますわ」
カナリーが嬉しそうに笑う。
そんなカナリーにアリシアは軽く頭を下げた。
「カナリー殿下のおかげですわ。感謝しています」
「まあ、何のことですの?」
カナリーが不思議そうに首を傾げる。
アリシアはそんなカナリーに微笑みだけで応えた。
カナリーが何も知らない振りをするならそれで良い。
だけどアリシアは、カナリーがルシアの態度にそれ程腹を立てていないことを知っていた。
それなのに謝罪を受け入れなかったのは、アリシアの為だ。マルグリットが強く反応したのも同じことだろう。
アリシアはそんな2人に心から感謝していた。
その気持ちが少しでも伝われば良いと思う。
側妃の話がなくなったわけではない。
ただ議会も、乗り気ではないレイヴンに無理矢理あてがった最有力候補の失態である。
形でいえばルシアの次に爵位の高い令嬢が最有力候補へ繰り上がることになるが、同じ失態を恐れて中々指名できずにいるようだ。
側妃といえば、あの悪夢を見た後、アリシアはシーラという令嬢を調べ尽くした。
思い返してみても現実では知らない令嬢である。
側妃になるような令嬢がこれまで社交界に出たことがないとは考えにくい。それにシーラの実家である伯爵家にも聞き覚えがなかった。
図書室に籠ったアリシアは、アナトリアの貴族名鑑を隅々まで読み尽くした。
最新のものから数年前まで遡っても、シーラも伯爵家も出てこない。やはりアナトリアの貴族ではないのだ。
その後アリシアは周辺諸国の情勢を思い浮かべながら、レイヴンに側妃を差し出しそうな国の貴族名鑑を読んでいく。3つの国の貴族名鑑を読み終えると、ホッとして図書室を後にした。
アリシアの選んだ貴族名鑑には、シーラの名前も伯爵家もどこにも載っていなかった。
シーラは夢の中だけの存在だとやっと安心することができたのだ。
だけどあれは、有り得る未来だ。
レイヴンが側妃を迎えたら、帰ってこない夜が出てくる。
そうしたらアリシアは、あの広く寒い寝室で1人過ごさなけれなならない。
夢の中で感じた肌寒さや寂寥感を思い出したアリシアは、自室へ続く廊下がやけに長く感じていた。
「アリシア?どうしたの?」
レイヴンに話し掛けられたアリシアは、ハッとして顔を上げた。
レイヴンが心配そうに顔を覗き込んでいる。
上手く言い訳を思いつけずに、アリシアは曖昧に微笑んだ。
「……凄く顔色が悪いよ?気分が悪いんじゃない?」
「いえ、何でもありません」
そう言いながらアリシアはレイヴンの背中へ腕をまわし、胸に頬を寄せる。
レイヴンは驚きながらもアリシアをぎゅっと抱き締めた。
ここにはカナリーがいる。
いつもなら人前でこんなことをするアリシアではない。
それだけに何かあるのだと察せられた。
しばらくそうした後、アリシアが小さな声で「夢を、思い出したのです」と言った。
それだけで何のことかすぐにわかる。
レイヴンはもう一度アリシアを強く抱き締めた。
カナリーはその間、1人で違う方向を向いていた。
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