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第2部 5章
55 進み出す時間②
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「ノティス殿下も学園で友人ができたのですね。こう申し上げては失礼ですが、殿下の楽しそうなお姿を見て、私、安心致しました」
アリシアはハッとした。
ジェーンはこれまでと変わらず笑顔で話をしている。
だけどその笑顔は、言葉以上のことを告げているように見えた。
ジェーンは舞踏会でノティスの姿を見ている。
それならばノティスが子爵令嬢と親し気に接していたことにも気がついていたはずだ。
「……あれは学園のクラスメイトだよ。来年クラスを上げる為に、一緒に勉強したり討論会を開いたりしているらしい。確かに子爵令嬢の距離感はおかしかったけれど、学生時代の僕とジェーン嬢のようなものだと思う」
ノティスと子爵令嬢の様子はレイヴンも気がついていたようだ。
アリシアとの間でその話をすることはなかったけれど、思うところはあったらしい。
ただレイヴンはノティスよりも子爵令嬢の振る舞いを問題視しているようだ。
確かにアリシアの目にも子爵令嬢の方が周りから親し気に見えるよう振舞っているように見えた。ノティスはそんな思惑に気がつかず、令嬢が傍にいることを許しているだけだろう。
だけどジェーンは穏やかな表情のまま首を振った。
「どうかノティス殿下には何も仰らないで下さい。学園で新しい出会いがあり、外の世界へ目を向けるようになられたのです。その中で年の頃も釣り合う素敵な令嬢と出会われたのなら素晴らしいことではありませんか。令嬢に惹かれる気持ちがあるのなら、見守って差し上げて下さいませ」
「それは……っ!」
ジェーンとノティスは正式に婚約しているわけではない。
国王夫妻やレイヴンは2人の結婚を望んでいるけれど、それを知っているのも限られた人数だけだ。
つまりもしノティスが子爵令嬢を望むのなら、誰の瑕疵にもならず婚約することができる。
「確かに子爵令嬢では殿下のお相手として身分が足りないように思いますが、お2人が本気なのであれば、殿下が伯爵になられてもよろしいのではないでしょうか」
ノティスは学園を卒業したあと臣籍に下ることが決まっている。
順当にいけば公爵位を与えられるが、国王たちはキャンベル侯爵家に婿入りすることを望んでいた。だけどノティスが子爵令嬢を本気で望むのなら、公爵位を捨て、伯爵位を賜るという選択肢もあるのだ。
それを国王が認めるかどうかわからないけれど、本気ならば認められるよう説得すれば良い。
それにもしキャンベル侯爵家に婿入りすれば、侯爵位はジェーンが継いだのでノティスは爵位を得られなくなる。
それならば伯爵位でも爵位を与えた方が……、と国王が考えるかもしれなかった。
「どちらにせよ殿下が学園を卒業されるまでまだ2年と少しありますわ。どうか広い心で見守って差し上げて下さいませ。……私は、殿下が想い合う方と一緒になられるのが一番だと思います」
想い合う方と一緒になられるのが一番。
その言葉には重みがあった。
ジョッシュはジェーンと婚約していながらずっとエミリーを想っていたのだ。
ノティスが子爵令嬢へ気持ちを移したのなら、ジェーンはまた別の相手を想う男性と婚約することになる。
ジェーンは貴族としてそんな結婚は当然のことだと言うだろうが、王家としてはこれ以上ジェーンに重荷を背負わせたくない。
「……ジェーン嬢の言う通り、もう少し様子を見ることにするよ。だけどそれではジェーン嬢の婚約者が決められないことになってしまう」
「それに関しては問題ありません、殿下。私はこれから領地の復興に全力を注ぎたいと思っております。当分の間婚約や結婚を考える余裕はありませんわ」
そう言ってジェーンはふふっと笑った。
アリシアはハッとした。
ジェーンはこれまでと変わらず笑顔で話をしている。
だけどその笑顔は、言葉以上のことを告げているように見えた。
ジェーンは舞踏会でノティスの姿を見ている。
それならばノティスが子爵令嬢と親し気に接していたことにも気がついていたはずだ。
「……あれは学園のクラスメイトだよ。来年クラスを上げる為に、一緒に勉強したり討論会を開いたりしているらしい。確かに子爵令嬢の距離感はおかしかったけれど、学生時代の僕とジェーン嬢のようなものだと思う」
ノティスと子爵令嬢の様子はレイヴンも気がついていたようだ。
アリシアとの間でその話をすることはなかったけれど、思うところはあったらしい。
ただレイヴンはノティスよりも子爵令嬢の振る舞いを問題視しているようだ。
確かにアリシアの目にも子爵令嬢の方が周りから親し気に見えるよう振舞っているように見えた。ノティスはそんな思惑に気がつかず、令嬢が傍にいることを許しているだけだろう。
だけどジェーンは穏やかな表情のまま首を振った。
「どうかノティス殿下には何も仰らないで下さい。学園で新しい出会いがあり、外の世界へ目を向けるようになられたのです。その中で年の頃も釣り合う素敵な令嬢と出会われたのなら素晴らしいことではありませんか。令嬢に惹かれる気持ちがあるのなら、見守って差し上げて下さいませ」
「それは……っ!」
ジェーンとノティスは正式に婚約しているわけではない。
国王夫妻やレイヴンは2人の結婚を望んでいるけれど、それを知っているのも限られた人数だけだ。
つまりもしノティスが子爵令嬢を望むのなら、誰の瑕疵にもならず婚約することができる。
「確かに子爵令嬢では殿下のお相手として身分が足りないように思いますが、お2人が本気なのであれば、殿下が伯爵になられてもよろしいのではないでしょうか」
ノティスは学園を卒業したあと臣籍に下ることが決まっている。
順当にいけば公爵位を与えられるが、国王たちはキャンベル侯爵家に婿入りすることを望んでいた。だけどノティスが子爵令嬢を本気で望むのなら、公爵位を捨て、伯爵位を賜るという選択肢もあるのだ。
それを国王が認めるかどうかわからないけれど、本気ならば認められるよう説得すれば良い。
それにもしキャンベル侯爵家に婿入りすれば、侯爵位はジェーンが継いだのでノティスは爵位を得られなくなる。
それならば伯爵位でも爵位を与えた方が……、と国王が考えるかもしれなかった。
「どちらにせよ殿下が学園を卒業されるまでまだ2年と少しありますわ。どうか広い心で見守って差し上げて下さいませ。……私は、殿下が想い合う方と一緒になられるのが一番だと思います」
想い合う方と一緒になられるのが一番。
その言葉には重みがあった。
ジョッシュはジェーンと婚約していながらずっとエミリーを想っていたのだ。
ノティスが子爵令嬢へ気持ちを移したのなら、ジェーンはまた別の相手を想う男性と婚約することになる。
ジェーンは貴族としてそんな結婚は当然のことだと言うだろうが、王家としてはこれ以上ジェーンに重荷を背負わせたくない。
「……ジェーン嬢の言う通り、もう少し様子を見ることにするよ。だけどそれではジェーン嬢の婚約者が決められないことになってしまう」
「それに関しては問題ありません、殿下。私はこれから領地の復興に全力を注ぎたいと思っております。当分の間婚約や結婚を考える余裕はありませんわ」
そう言ってジェーンはふふっと笑った。
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