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第2部 5章
64 宰相の後継者②
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モルガン伯爵家の三兄弟は皆優秀で高い能力を持っている。
その中でも突出して優秀なのがロバートだ。ルーファスは他の者より優秀でありながら、常にロバートと比べられ辛い思いをしていた。
そんなルーファスが国王にその能力を認められ、側近にと望まれたのだ。これ以上の喜びはないだろう。
だけどルーファスは結局その誘いを断った。
知識も能力も他の誰かと比べるものではない。誰かと比べて習得が遅かったとしても、少しずつ努力を重ねていつか身につければ良いのだ。ルーファスは壮行会でスピーチをするジェーンを見て、そう思い至ることができた。
そうして考えると、ルーファスはやはり伯爵領が好きだった。
この領地を守り、発展させる為にこれまで取り組んできたのだ。
王宮で役職を得ると王都に駐在することになる。やっと仕事を任されるようになってきたのに、領地運営にまで手がまわらなくなるだろう。
ライアンが現役の間はまだ良い。だけどライアンが引退した後は代官を置くことになってしまう。それは嫌だった。
悩み抜いた末にルーファスはリカルドを推薦することにした。
リカルドもモルガン伯爵家の兄弟らしく高い能力を持っている。その能力をこれまでルーファスの補佐をする為に使ってもらっていた。だけどリカルドが日の目を見る時が来ても良いはずだ。
「リカルド兄上はルーファス兄上のスペアとして領主教育も受けている。これまではその才能を活かしてルーファス兄上の補佐をしていた。だけどルーファス兄上はリカルド兄上の手を放すことに決めた。自分の代わりにリカルド兄上を召し出すよう陛下へ進言したそうだよ」
「リカルド兄様を……。だけど、よろしいのでしょうか」
アリシアはレイヴンを窺った。
議会は王家がルトビア公爵家ばかりを重用していると問題にしていたはずだ。
それは側妃候補を押し付ける為の口実ではあったけれど、全くの嘘というわけでもない。面白く思っていない人間は必ずいるだろう。
リカルドはアダムの甥にあたる。
またルトビア公爵家の血縁を召し出すとなれば反発が大きくなるのではないだろうか。
「それは大丈夫だろう。そこが陛下の上手いやり方なんだ」
アリシアの不安を打ち消すようにロバートが笑った。
ロバートは何も心配していないようだ。むしろ国王の手腕に関心している。
「勿論アリシアも知っていると思うけど、父上はルトビア公爵家の出身だ。それは間違いない。だけど今の父上はモルガン伯爵なんだ。そして僕たちはモルガン伯爵家の兄弟だ」
何を当然のことを、と思うが、それは重要なことだった。
ルーファスもリカルドもルトビア公爵の血縁だけど、ルトビア公爵家の人間ではない。
「今は王太子殿下の側近としてレオが仕えているが、陛下の側近としてルーファス兄上を召し出す意図は何だと思う?ルーファス兄上は殿下ではなく、陛下の側近として望まれたんだ」
「父上の……、いや、宰相殿の跡を継ぐ後継者の育成かな」
「お兄様?!」
涼しい顔で答えたレオナルドに全員の視線が集まる。
ロバートは軽く頷いた。
その中でも突出して優秀なのがロバートだ。ルーファスは他の者より優秀でありながら、常にロバートと比べられ辛い思いをしていた。
そんなルーファスが国王にその能力を認められ、側近にと望まれたのだ。これ以上の喜びはないだろう。
だけどルーファスは結局その誘いを断った。
知識も能力も他の誰かと比べるものではない。誰かと比べて習得が遅かったとしても、少しずつ努力を重ねていつか身につければ良いのだ。ルーファスは壮行会でスピーチをするジェーンを見て、そう思い至ることができた。
そうして考えると、ルーファスはやはり伯爵領が好きだった。
この領地を守り、発展させる為にこれまで取り組んできたのだ。
王宮で役職を得ると王都に駐在することになる。やっと仕事を任されるようになってきたのに、領地運営にまで手がまわらなくなるだろう。
ライアンが現役の間はまだ良い。だけどライアンが引退した後は代官を置くことになってしまう。それは嫌だった。
悩み抜いた末にルーファスはリカルドを推薦することにした。
リカルドもモルガン伯爵家の兄弟らしく高い能力を持っている。その能力をこれまでルーファスの補佐をする為に使ってもらっていた。だけどリカルドが日の目を見る時が来ても良いはずだ。
「リカルド兄上はルーファス兄上のスペアとして領主教育も受けている。これまではその才能を活かしてルーファス兄上の補佐をしていた。だけどルーファス兄上はリカルド兄上の手を放すことに決めた。自分の代わりにリカルド兄上を召し出すよう陛下へ進言したそうだよ」
「リカルド兄様を……。だけど、よろしいのでしょうか」
アリシアはレイヴンを窺った。
議会は王家がルトビア公爵家ばかりを重用していると問題にしていたはずだ。
それは側妃候補を押し付ける為の口実ではあったけれど、全くの嘘というわけでもない。面白く思っていない人間は必ずいるだろう。
リカルドはアダムの甥にあたる。
またルトビア公爵家の血縁を召し出すとなれば反発が大きくなるのではないだろうか。
「それは大丈夫だろう。そこが陛下の上手いやり方なんだ」
アリシアの不安を打ち消すようにロバートが笑った。
ロバートは何も心配していないようだ。むしろ国王の手腕に関心している。
「勿論アリシアも知っていると思うけど、父上はルトビア公爵家の出身だ。それは間違いない。だけど今の父上はモルガン伯爵なんだ。そして僕たちはモルガン伯爵家の兄弟だ」
何を当然のことを、と思うが、それは重要なことだった。
ルーファスもリカルドもルトビア公爵の血縁だけど、ルトビア公爵家の人間ではない。
「今は王太子殿下の側近としてレオが仕えているが、陛下の側近としてルーファス兄上を召し出す意図は何だと思う?ルーファス兄上は殿下ではなく、陛下の側近として望まれたんだ」
「父上の……、いや、宰相殿の跡を継ぐ後継者の育成かな」
「お兄様?!」
涼しい顔で答えたレオナルドに全員の視線が集まる。
ロバートは軽く頷いた。
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