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第2部 5章
66 ひと呼吸
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「……ごめんなさい。少し席を外しても良いかしら?」
「良いけど……。何かあった?」
アリシアの申し出に全員の視線が集まった。戸惑いながらもレイヴンが頷く。
レイヴンが戸惑うのも当然で、来客中にアリシアが席を外す理由はない。特にジェーンとロバートとは今後中々会えなくなる。アリシアにとっては1秒でも惜しいはずだ。
そんなレイヴンの疑問を感じながらもアリシアは席を立った。
「いえ、何でもありませんわ。すぐに戻りますので失礼致します」
そう言うと、心配そうな視線を向けるレオナルドたちに会釈をして部屋を出る。
エレノア、ジーナ、ドナの3人がアリシアに合わせて部屋を出た。
アリシアが向かったのは向かいにある自室である。部屋に入るとソファに深く腰掛ける。
「お茶を淹れてくれる?」
アリシアがそう言うと、エレノアが心得たように頷いてドナとジーナに指示を出す。
今日は向かい側の部屋でお茶の準備がされているので、こちらの部屋でも用意をするとなれば厨房まで取りに行かなくてはならない。少しの時間だが人払いになるのだ。
2人が出ていくのを見送ると、エレノアは一礼してドレッシングルームへ移る。これで1人きりだ。
ドレッシングルームの扉が閉まる音を聞いたアリシアは大きく息を吐いた。
誰が悪いわけでも、何が悪いわけでもない。だけど気持ちを落ち着かせなければ、これまで通り笑えそうになかった。
あの部屋にいるのは、アリシアがどれだけ表情を作っても本当の気持ちを見抜いてしまう人たちだ。あのままあそこに居続けることはできなかった。
国王がルーファスを側近に誘ったのは、勿論ルーファスの能力を認めたからだろう。
だけどそれだけではなく、側妃を娶ろうとしないレイヴンへ向けられる非難の目を逸らす目的もあるのだ。
以前の国王は、貴族たちの不満を解消する為にレイヴンが側妃を迎えるのも有効な手だと考えていた。だけど最近のはレイヴンが側妃を娶らずに済むよう周りの声を抑えてくれている節がある。婚姻から3年経っても子を生むことができずに側妃を受け入れるしかなかったマルグリットが、その時の気持ちを話してくれたのかもしれない。
レオナルドのライバルとなる存在は、ルトビア公爵家に敵意を持つ者たちの目を惹き付け、レイヴンを非難する者たちの目も惹き付ける。リカルドが優秀であればある程対立が煽られ、面白おかしく噂されるようになるだろう。
アリシアが子を1人生んでいれば避けられた事態にリカルドを引き込んでしまった。
もしレオナルドよりリカルドの方が宰相に相応しいと認められてしまったら?
もし対立に敗れたリカルドがレオナルドを恨むようになってしまったら?
そしてそこまでしたのに、アリシアが子を生むことができなかったら?
アリシアはそっと腹に触れた。
まだ子を宿した気配はない。
「良いけど……。何かあった?」
アリシアの申し出に全員の視線が集まった。戸惑いながらもレイヴンが頷く。
レイヴンが戸惑うのも当然で、来客中にアリシアが席を外す理由はない。特にジェーンとロバートとは今後中々会えなくなる。アリシアにとっては1秒でも惜しいはずだ。
そんなレイヴンの疑問を感じながらもアリシアは席を立った。
「いえ、何でもありませんわ。すぐに戻りますので失礼致します」
そう言うと、心配そうな視線を向けるレオナルドたちに会釈をして部屋を出る。
エレノア、ジーナ、ドナの3人がアリシアに合わせて部屋を出た。
アリシアが向かったのは向かいにある自室である。部屋に入るとソファに深く腰掛ける。
「お茶を淹れてくれる?」
アリシアがそう言うと、エレノアが心得たように頷いてドナとジーナに指示を出す。
今日は向かい側の部屋でお茶の準備がされているので、こちらの部屋でも用意をするとなれば厨房まで取りに行かなくてはならない。少しの時間だが人払いになるのだ。
2人が出ていくのを見送ると、エレノアは一礼してドレッシングルームへ移る。これで1人きりだ。
ドレッシングルームの扉が閉まる音を聞いたアリシアは大きく息を吐いた。
誰が悪いわけでも、何が悪いわけでもない。だけど気持ちを落ち着かせなければ、これまで通り笑えそうになかった。
あの部屋にいるのは、アリシアがどれだけ表情を作っても本当の気持ちを見抜いてしまう人たちだ。あのままあそこに居続けることはできなかった。
国王がルーファスを側近に誘ったのは、勿論ルーファスの能力を認めたからだろう。
だけどそれだけではなく、側妃を娶ろうとしないレイヴンへ向けられる非難の目を逸らす目的もあるのだ。
以前の国王は、貴族たちの不満を解消する為にレイヴンが側妃を迎えるのも有効な手だと考えていた。だけど最近のはレイヴンが側妃を娶らずに済むよう周りの声を抑えてくれている節がある。婚姻から3年経っても子を生むことができずに側妃を受け入れるしかなかったマルグリットが、その時の気持ちを話してくれたのかもしれない。
レオナルドのライバルとなる存在は、ルトビア公爵家に敵意を持つ者たちの目を惹き付け、レイヴンを非難する者たちの目も惹き付ける。リカルドが優秀であればある程対立が煽られ、面白おかしく噂されるようになるだろう。
アリシアが子を1人生んでいれば避けられた事態にリカルドを引き込んでしまった。
もしレオナルドよりリカルドの方が宰相に相応しいと認められてしまったら?
もし対立に敗れたリカルドがレオナルドを恨むようになってしまったら?
そしてそこまでしたのに、アリシアが子を生むことができなかったら?
アリシアはそっと腹に触れた。
まだ子を宿した気配はない。
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