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番外編
アリシアの誕生日 7
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今年の誕生日は2人きりで特別な食事をすることにした。
アリシアの希望を聞いて部屋を飾りつける準備を指示しながらレイヴンは思案に暮れる。
この国には誕生日を家族で祝うという習慣がない。
祝うとしても小さな子どもの内だけで、ある程度の歳になれば自宅に客を招いてパーティーを開くからだ。
デビュタント前の子どもたちを招いた昼間のティーパーティーから豪華に飾り立てた舞踏会まで主役の年齢に合わせて幅はあるが、誕生日を迎える者は主役と同時に主催者ともなる。己の誕生日ですら社交の名目なのだ。
その中で王族は少し事情が違っていた。
国王と王太子の誕生日には国を挙げての舞踏会が開かれる。この舞踏会には国中のすべての貴族が招かれて、近隣諸国の要人も出席をする。所謂国家行事なのだ。
ただそうした国家主導の舞踏会が開かれるのは国王と王太子だけで、王妃や王太子妃の誕生日には行われない。他の王子・王女たちも同様である。
だから妃たちは他の貴族と同様に友人を招いてパーティーを開く。
どの妃のパーティーに招かれて、どの妃のパーティーに出席するのか、貴族たちはお互いに目を光らせて他家の動向を探り合うのだ。
もしアリシアが舞踏会を開くと言えば、レイヴンは喜んで出席したし、開催の手伝いもしただろう。
だけどアリシアはパーティーを望まなかった。友人を招くこともなく、いつもと変わらない1日を過ごしていた。
そう思えば婚約していた時も、公爵家でアリシアの誕生日を祝うパーティーが開かれたことはなかった。
レイヴンが贈り物を直接贈れなかったのも、公爵邸でアリシアと過ごしたことがなかったのも、それが理由の1つである。
もし舞踏会に招かれていれば、たとえお菓子や花束だったとしてもレイヴンが直接渡すことができたのだ。
「公爵はなぜ舞踏会を開かなかったのかな…?」
レイヴンが呟くと、アリシアが困ったような顔を見せた。
その顔を見ただけで答えがわっかった気がする。
アリシアは公爵家の一人娘である。しかも王太子の婚約者だ。
普通であれば盛大な舞踏会を開き、大勢の客を招く。
そこにアリシアのパートナーとしてレイヴンが出席すれば、公爵家はその威光を示し、名誉と称賛を得ることができただろう。
だけどレイヴンが出席しなければどうだろうか。
公爵家は威光を示すどころか王太子にそっぽを向かれたと嘲笑を受けることになる。
アリシアも愛されない婚約者として晒し物になっただろう。
それを避ける為に、元から舞踏会を開かなかったのだ。
「……僕の態度が酷かったのは自覚している。公爵は僕を信用していなかったんだね」
婚約者として表面的なことはきちんとしていたつもりだったけれど、誕生日の舞踏会すら出席しないだろうと思われていたのだ。
「そんなことありませんわ。私が王家に嫁げば、それまでのように一緒に過ごすことができなくなります。ですから父も母も、私が嫁ぐまでは一緒に静かな時間を過ごしたいと望んで下さったのです」
それは表向きの理由だろう。同じようにレオナルドの誕生日も舞踏会は行われていない。
兄の舞踏会だけ開いて妹の舞踏会を開かなければ、公爵が兄だけを優遇しているように見えてしまう。
それにレオナルドの誕生日であってもアリシアのパートナーになるのはレイヴンなのだ。そこにレイヴンがいなければ、同じように嘲笑を受けただろう。
だから公爵家は、「子どもたちの誕生日は家族だけで祝う」という習慣を作って周りを黙らせたのだ。
アリシアの希望を聞いて部屋を飾りつける準備を指示しながらレイヴンは思案に暮れる。
この国には誕生日を家族で祝うという習慣がない。
祝うとしても小さな子どもの内だけで、ある程度の歳になれば自宅に客を招いてパーティーを開くからだ。
デビュタント前の子どもたちを招いた昼間のティーパーティーから豪華に飾り立てた舞踏会まで主役の年齢に合わせて幅はあるが、誕生日を迎える者は主役と同時に主催者ともなる。己の誕生日ですら社交の名目なのだ。
その中で王族は少し事情が違っていた。
国王と王太子の誕生日には国を挙げての舞踏会が開かれる。この舞踏会には国中のすべての貴族が招かれて、近隣諸国の要人も出席をする。所謂国家行事なのだ。
ただそうした国家主導の舞踏会が開かれるのは国王と王太子だけで、王妃や王太子妃の誕生日には行われない。他の王子・王女たちも同様である。
だから妃たちは他の貴族と同様に友人を招いてパーティーを開く。
どの妃のパーティーに招かれて、どの妃のパーティーに出席するのか、貴族たちはお互いに目を光らせて他家の動向を探り合うのだ。
もしアリシアが舞踏会を開くと言えば、レイヴンは喜んで出席したし、開催の手伝いもしただろう。
だけどアリシアはパーティーを望まなかった。友人を招くこともなく、いつもと変わらない1日を過ごしていた。
そう思えば婚約していた時も、公爵家でアリシアの誕生日を祝うパーティーが開かれたことはなかった。
レイヴンが贈り物を直接贈れなかったのも、公爵邸でアリシアと過ごしたことがなかったのも、それが理由の1つである。
もし舞踏会に招かれていれば、たとえお菓子や花束だったとしてもレイヴンが直接渡すことができたのだ。
「公爵はなぜ舞踏会を開かなかったのかな…?」
レイヴンが呟くと、アリシアが困ったような顔を見せた。
その顔を見ただけで答えがわっかった気がする。
アリシアは公爵家の一人娘である。しかも王太子の婚約者だ。
普通であれば盛大な舞踏会を開き、大勢の客を招く。
そこにアリシアのパートナーとしてレイヴンが出席すれば、公爵家はその威光を示し、名誉と称賛を得ることができただろう。
だけどレイヴンが出席しなければどうだろうか。
公爵家は威光を示すどころか王太子にそっぽを向かれたと嘲笑を受けることになる。
アリシアも愛されない婚約者として晒し物になっただろう。
それを避ける為に、元から舞踏会を開かなかったのだ。
「……僕の態度が酷かったのは自覚している。公爵は僕を信用していなかったんだね」
婚約者として表面的なことはきちんとしていたつもりだったけれど、誕生日の舞踏会すら出席しないだろうと思われていたのだ。
「そんなことありませんわ。私が王家に嫁げば、それまでのように一緒に過ごすことができなくなります。ですから父も母も、私が嫁ぐまでは一緒に静かな時間を過ごしたいと望んで下さったのです」
それは表向きの理由だろう。同じようにレオナルドの誕生日も舞踏会は行われていない。
兄の舞踏会だけ開いて妹の舞踏会を開かなければ、公爵が兄だけを優遇しているように見えてしまう。
それにレオナルドの誕生日であってもアリシアのパートナーになるのはレイヴンなのだ。そこにレイヴンがいなければ、同じように嘲笑を受けただろう。
だから公爵家は、「子どもたちの誕生日は家族だけで祝う」という習慣を作って周りを黙らせたのだ。
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