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第2部 5章
81 ティナムの伝承③
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レイヴンとアリシアを中心とした質疑応答は概ね好意的に受け入れられたようだ。
勿論全員に受け入れられたわけではなく、レイヴンの気を惹きたい女性たちは忌々しそうな顔をしていたけれど、憧れの王子様と話してみたい女性たちは短い時間に二言三言だけ2人きりで話すよりも、大勢で囲みながら長い時間交流を持てる方が嬉しいらしい。
おかげで険悪な空気になることもなく、レイヴンの誰かへの答えに皆で笑っていた。
場が和んでくるとアリシアはレイヴンに許可を貰って席を立った。
ここはもうレイヴン1人でも大丈夫だ。この輪を打ち破ってレイヴンに纏わりつく女性もいないだろう。
この形式が他の領地にも伝わってくれたら良いのに。
アリシアは密かにそう思った。
レイヴンの元を離れてアリシアが向かったのは応接間の壁際に集った男性陣のところである。
晩餐会に出席しているのは女性だけではない。だけどレイヴンを囲む女性陣の熱量が激しく、すっかり腰が引けてしまった彼らは質疑応答の輪に加わることなく壁際で男同士の友情を確かめ合っていた。
だけど彼らも目的を持ってここへ来ている。
アリシアが1人になるのを見逃すことはなく、数人の男性が近づいて来た。
「妃殿下、少しお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
それからの時間はアリシアにとって有意義なものになった。
彼らが熱心に話すのは、彼らが取り組んでいる事業である。どうやらメトワでのことがここでも伝わっているらしい。
特にメトワで会った調香師の工房は王都で大変な評判になり、今でも注文が殺到している。他にも話を聞いて興味を持ち、後援するようになった事業もあった。
彼らも自身が手掛ける事業を売り込み、アリシアやレイヴンの後ろ盾を得たいのである。
他にも熱心に話をしにくる役人がいた。
そのほとんどが領都から離れた田舎の町や村に赴任している役人である。
彼らが話すのはアリシアが建てた医師の学校のことだ。学校は3年制と6年制になっていて、3年制を卒業すれば診療所を開くことができる。年が明ければその最初の生徒が卒業するのだ。
彼らの望みは1人でも多くの医師をティナムへ派遣してもらうことだった。
彼らと話しながら、アリシアは喜びを感じていた。
領地の発展に貢献し、無医村の問題を解消する手助けができる。
少しでも女主人として役立つことができたのだ。
役人たちはアリシアに家族を紹介してくれた。
妻や息子の挨拶を受け、にこやかに言葉を交わす。
娘はレイヴンを囲む輪に加わっているので紹介できないと言われてアリシアは笑ってしまった。
そうして和やかに話をしている内に、ある役人の息子がアリシアの求める情報を持っているという。
「学校で民話の研究をしているのですよ」
「えっ……?」
男爵家の四男として生まれた父親と子爵家の三女だった母親を両親に持つ彼は平民として育った。
王立学園の入学資格はなく、ティナムにある平民用の学校を卒業した後はその上の専科学校に進んでティナムにある民話の研究をしているという。
勿論全員に受け入れられたわけではなく、レイヴンの気を惹きたい女性たちは忌々しそうな顔をしていたけれど、憧れの王子様と話してみたい女性たちは短い時間に二言三言だけ2人きりで話すよりも、大勢で囲みながら長い時間交流を持てる方が嬉しいらしい。
おかげで険悪な空気になることもなく、レイヴンの誰かへの答えに皆で笑っていた。
場が和んでくるとアリシアはレイヴンに許可を貰って席を立った。
ここはもうレイヴン1人でも大丈夫だ。この輪を打ち破ってレイヴンに纏わりつく女性もいないだろう。
この形式が他の領地にも伝わってくれたら良いのに。
アリシアは密かにそう思った。
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晩餐会に出席しているのは女性だけではない。だけどレイヴンを囲む女性陣の熱量が激しく、すっかり腰が引けてしまった彼らは質疑応答の輪に加わることなく壁際で男同士の友情を確かめ合っていた。
だけど彼らも目的を持ってここへ来ている。
アリシアが1人になるのを見逃すことはなく、数人の男性が近づいて来た。
「妃殿下、少しお話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
それからの時間はアリシアにとって有意義なものになった。
彼らが熱心に話すのは、彼らが取り組んでいる事業である。どうやらメトワでのことがここでも伝わっているらしい。
特にメトワで会った調香師の工房は王都で大変な評判になり、今でも注文が殺到している。他にも話を聞いて興味を持ち、後援するようになった事業もあった。
彼らも自身が手掛ける事業を売り込み、アリシアやレイヴンの後ろ盾を得たいのである。
他にも熱心に話をしにくる役人がいた。
そのほとんどが領都から離れた田舎の町や村に赴任している役人である。
彼らが話すのはアリシアが建てた医師の学校のことだ。学校は3年制と6年制になっていて、3年制を卒業すれば診療所を開くことができる。年が明ければその最初の生徒が卒業するのだ。
彼らの望みは1人でも多くの医師をティナムへ派遣してもらうことだった。
彼らと話しながら、アリシアは喜びを感じていた。
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少しでも女主人として役立つことができたのだ。
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「えっ……?」
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