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第2部 5章
83 ナージャの大石①
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レイヴンとアリシアが大石のあるナージャの町へ向かったのは、ティナムのに来て4日目のことだった。
どんなに気が急いていても予定された公務がある。
晩餐会の翌日、レイヴンは前日と同じく庁舎へ向かった。アリシアは町や村の診療所巡りである。
ただ晩餐会で各地を担当している役人たちから医師の派遣が必要な場所を予め聞いていたので効率よくまわることができた。それに役人たちは新しい医師の派遣があるかもしれないことを領民に伝えずにいてくれたらしい。
それは医師の派遣が確約されていないからなのだろうが、おかげでアリシアはどこへ行っても領民たちから大歓迎を受けることができた。医師の派遣について予め知らされていたら、こうはいかなかっただろう。
ここの役人たちは確かに優秀なようだ。
彼らはアリシアが領民たちの支持を得られる土台を残していてくれた。
アリシアもこれだけ熱烈な歓迎と期待を受けた以上、来春すぐにすべての場所へ派遣することは難しくても可能な限り早く派遣できるよう努めようという気になる。
役人たちは実利を取ったのである。
その次の日はレイヴンと一緒にティナムの産業を見に行った。
数が少なくてもティナムにも農業や林業を営んでいる者たちはいる。農地や果樹園、牧場を見回った後、貿易港を訪れた。
貿易港にはたくさんの商船が並び、大勢の人が行き交っている。
レイヴンが商船の入国許可証や関税の確認をしている間にアリシアは港町を見て歩いた。
港で働いている者の中には地方貴族の子息として高度な教育を受けた者もいるが、下働きをしているのは領民である。船乗りを受け入れる港町で宿屋や土産屋、食事処を営んでいるのも領民だ。
彼らは貴族のような高レベルの教育を受けたわけではない。だけど必要に応じて覚えたのだろう。片言であっても何か国語も駆使して船乗りたちとやり取りをする姿にアリシアは感銘を受けた。最後には「何言ってんのかわかんないよー!あっはっは」と笑いながら屈強な船乗りをバシバシ叩く女将さんの姿に圧倒されたものである。
その後、合流したレイヴンと珊瑚や貝殻を使った装飾品の店へ行った。
晩餐会でアリシアのところへアピールに来た男性の店である。
ここでレイヴンは珊瑚でできた美しい首飾りを買ってくれた。アリシアもレイヴンへ貝殻を使った首飾りを贈る。
今度はこの店が流行るのかもしれない。
そして今日。レイヴンとアリシアはとうとうナージャへ向けて出発した。
ナージャは領都から馬車で数刻掛かる田舎町だ。それも大石がある場所はナージャが一番近いというだけで町から外れた海岸らしい。
「もうすぐ大石が見れるの楽しみだね」
「はい。楽しみですわ」
大石は誰が積んだのかわからないが、大小ふたつの石が積み重なっているだけで装飾があるわけでもなく、見て楽しいものではないそうだ。
それでもレイヴンが楽しみにしているのは、来世でもアリシアと出会えること、またアリシアが大石を早く見たいと焦る気持ちが、自分と同じ来世での再会を望むものだと信じているからである。
そんなレイヴンに後ろめたさを感じながらも、アリシアは早く子どもを得たいと望む気持ちを抑えることができなかった。
どんなに気が急いていても予定された公務がある。
晩餐会の翌日、レイヴンは前日と同じく庁舎へ向かった。アリシアは町や村の診療所巡りである。
ただ晩餐会で各地を担当している役人たちから医師の派遣が必要な場所を予め聞いていたので効率よくまわることができた。それに役人たちは新しい医師の派遣があるかもしれないことを領民に伝えずにいてくれたらしい。
それは医師の派遣が確約されていないからなのだろうが、おかげでアリシアはどこへ行っても領民たちから大歓迎を受けることができた。医師の派遣について予め知らされていたら、こうはいかなかっただろう。
ここの役人たちは確かに優秀なようだ。
彼らはアリシアが領民たちの支持を得られる土台を残していてくれた。
アリシアもこれだけ熱烈な歓迎と期待を受けた以上、来春すぐにすべての場所へ派遣することは難しくても可能な限り早く派遣できるよう努めようという気になる。
役人たちは実利を取ったのである。
その次の日はレイヴンと一緒にティナムの産業を見に行った。
数が少なくてもティナムにも農業や林業を営んでいる者たちはいる。農地や果樹園、牧場を見回った後、貿易港を訪れた。
貿易港にはたくさんの商船が並び、大勢の人が行き交っている。
レイヴンが商船の入国許可証や関税の確認をしている間にアリシアは港町を見て歩いた。
港で働いている者の中には地方貴族の子息として高度な教育を受けた者もいるが、下働きをしているのは領民である。船乗りを受け入れる港町で宿屋や土産屋、食事処を営んでいるのも領民だ。
彼らは貴族のような高レベルの教育を受けたわけではない。だけど必要に応じて覚えたのだろう。片言であっても何か国語も駆使して船乗りたちとやり取りをする姿にアリシアは感銘を受けた。最後には「何言ってんのかわかんないよー!あっはっは」と笑いながら屈強な船乗りをバシバシ叩く女将さんの姿に圧倒されたものである。
その後、合流したレイヴンと珊瑚や貝殻を使った装飾品の店へ行った。
晩餐会でアリシアのところへアピールに来た男性の店である。
ここでレイヴンは珊瑚でできた美しい首飾りを買ってくれた。アリシアもレイヴンへ貝殻を使った首飾りを贈る。
今度はこの店が流行るのかもしれない。
そして今日。レイヴンとアリシアはとうとうナージャへ向けて出発した。
ナージャは領都から馬車で数刻掛かる田舎町だ。それも大石がある場所はナージャが一番近いというだけで町から外れた海岸らしい。
「もうすぐ大石が見れるの楽しみだね」
「はい。楽しみですわ」
大石は誰が積んだのかわからないが、大小ふたつの石が積み重なっているだけで装飾があるわけでもなく、見て楽しいものではないそうだ。
それでもレイヴンが楽しみにしているのは、来世でもアリシアと出会えること、またアリシアが大石を早く見たいと焦る気持ちが、自分と同じ来世での再会を望むものだと信じているからである。
そんなレイヴンに後ろめたさを感じながらも、アリシアは早く子どもを得たいと望む気持ちを抑えることができなかった。
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