【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 6章

2 国王からの話①

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 レイヴンはアリシアに月のモノがきた日、密かに医務室へ押しかけていた。
 
 アリシアの体調を人一倍気にしているレイヴンが、具合の悪いアリシアを騒ぎ立てずに見守っていたのは懐妊していると思っていたからだ。
 だけど月のモノがきたことでその可能性はなくなった。
 それならばアリシアのあの体調不良は何なのか。
 重大な病気なのではないのか。
 そう言って詰め寄るレイヴンに、侍医長は言い辛そうに眉を下げた。
 
「……恐らくストレスでしょう。ストレスで胃の痛みを感じたり、食事を摂れなくなる方がいます。妃殿下は……、多大なストレスを抱えておられるのだと思います」

「っ!!」

 ストレスと言われたら、心当たりがあり過ぎる。
 子どものことやアリシアを非難する貴族たちなど色々あるが、その中でもレイヴンに纏わりついている令嬢たちは質が悪い。
 馴れ馴れしくレイヴンに触れようとするばかりか、アリシアに暴言を吐く。その場その場できつく咎めているけれど、議会が付いているからか態度を改めようとしない。きっとレイヴンの見えないところでもアリシアに何か言っているだろう。

 あの女たちを王都から追い払ってやる。
 
 意気込んで医務室を出たレイヴンだったが、扉の近くで待っていた国王の従者に阻まれた。





 国王の執務室へ入ると、国王がしかつめらしい顔でレイヴンを待っていた。
 執務机の手前に置かれたソファにはマルグリットが悲痛な顔で座っている。
 酷く嫌な予感がした。


 国王も王妃もアリシアのことを知っていた。
 それも当然のことで、王太子宮を含む内宮を統括管理しているのはマルグリットだ。内宮で体調を崩す者がいればマルグリットへ報告が行く。併せてレイヴンとアリシアの閨の様子もアリシアの月のモノについても報告されている。
 2人とも何も言っていなかったが、レイヴンやアリシアと同じ様に初めての孫を期待して、そして落胆していたのだ。
 
 その後国王は何かを言おうとして言い辛そうに視線を伏せる。
 これからが本題だった。

「そなたたちを取り巻く環境は理解している。その上で……、そなたを囲む令嬢たちを表立って非難するのは止めるんだ」

「陛下?!」

「そなたに子が生まれるまで議会は側妃候補を立て続ける。令嬢たちは側妃に選ばれようと競い続ける。それを1人1人罰していればとんでもない数になる。それはわかっているだろう」

「……それは、」

「側妃になりたいと望むすべての令嬢を処分するのか?忘れるな、そなたがどう言おうとこれまで3年で子ができなければ側妃を迎えてきたんだ。これまで続いていた慣習を変えるというのはそんなに簡単なことではない」

「…………」

「これまで認められていたことが認められなくなった。それだけでも貴族たちは不満を募らせている。そこへ側妃になりたいと望んだからと立て続けに令嬢を処分すればどうなるか。処分を受け没落する家が1つや2つの内はまだ良い。10も20も出てこれば、中央の勢力バランスはめちゃくちゃになる。国政にも影響が出るだろう。そしてそうして没落した家の者たちは、そなたやアリシアへの恨みを募らせる。その者たちが手を組めば内乱が起こるかもしれない」

「……はい」

 それはレイヴンもレオナルドも理解していた。
 去年の段階でレイヴンに纏わりつく令嬢をすべて排除しなかったのはきりがないからだ。だから特別酷い態度のガーモット伯爵令嬢を見せしめにして自ら身を引かせるように仕向けた。
 だけどその反動も大きく、貴族たちの批判はレイヴンに側妃を薦めようとしないアリシアへ向かっている。同じことをしてもアリシアへの非難が強まるだけだろう。

「目に余る態度の令嬢には、本人ではなくその家にこちらから抗議文を送る。そなたからは何もするな」

 アリシアが王太子妃である以上、アリシアへの無礼は王家への無礼である。
 王家への無礼を見逃せば王権に傷がつく。
 だから国王から正式に抗議する。それで弁えなければ不敬罪だ。
 国王と王妃が王家として対処するというなら任せるしかない。
 
「……かしこまりました」

 レイヴンは胸に手を当て一礼をした。



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