【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 6章

3 国王からの話②

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「ところで……、そろそろそなたの側妃についても考えねばなるまい」

「陛下?!」

 レイヴンは国王の言葉に驚いて顔を上げた。

 側妃はいらない。
 アリシアだけでいい。
 その意志はずっと伝えてきている。

 だけど国王は真剣な顔で首を振った。
 マルグリットは哀しそうな顔で目を伏せている。

「ぎりぎりまで貴族たちの声は抑えてやる。だがいつまでもというわけにはいかない。限界がある。それを感じているのはそなたよりアリシアだろう。このままではいずれアリシアが側妃を薦めることになる。そんな思いをさせたいのか?」

「……っ!!」

 王太子妃としての一番の務めは世継ぎを生むことだ。
 だけどそれが叶わない時は、側妃を迎え入れて世継ぎを作らせる。
 正妃はそれを妬いても妬んでもいけない。

 王太子が側妃を拒む時は、好みに合う令嬢を探し出し薦めること。
 王太子が心置きなく子作りに励めるよう快く側妃の元へ送り出すこと。
 もし王太子の気分が乗らない時は、その気になるよう心を尽くすこと。
 
 アリシアは妃教育でそう教えられているはずだ。
 アリシアに非難が集まっているのは、子を孕まず側妃を薦めることもせず、正妃としての務めを果たしていないからである。

 だけど王太子妃としての役割を誰より意識しているのはアリシアだ。
 いつまで今のまま、自身の役割から目を逸らしていられるだろうか。
 その罪悪感もストレスの1つになっているのは間違いない。

「……あなたたちが想い合っているのは良くわかっているわ。このまま2人で幸せになってくれればと願っているけれど、今のままでは難しいの」

「……わかっています」

 議会は、そして貴族たちは、いつまでも待ってくれない。このままアリシアが懐妊しなければ、いずれ側妃を迎えなければならない時が来る。
 それは貴族たちの不満を抑えきれなくなった時か。それともアリシアが罪悪感に耐えられなくなった時なのか。

 アリシアはレイヴンを愛してくれている。
 そのアリシアが、自ら側妃を選んで推挙しなければならないようなことにはしたくない。
 だけど。

「それでも側妃を娶りたくありません。例えば誰か養子を迎えることはできませんか」
 
 そう言いながらも、レイヴンはそれが難しいとわかっていた。
 ジェイはレイヴンに何かあった時の為のスペアだが、養子にするには年が近すぎる。それならば養子にするよりレイヴンが王太子の地位を降りてジェイに譲った方が良いだろう。ジェイより下にはアイビスがいるけれど、今はまだ王女の王位継承権は認めらえていない。
 側妃のところにはアイビスより年下の異母弟もいる。だけどマルグリットの血を引かない異母弟を、次の王太子にするのはレイヴンにも抵抗があった。
 マルグリットが耐えてきた月日が無駄になる。
 そう思えるからだ。

「その様子では余から何かを言う必要はなさそうだな。だが1つ付け加えれば、今の段階で養子を迎えるのは議会が承知しないだろう。それは側妃を迎えた後の話だ」

「……っ!」

 国王の言葉にレイヴンは俯いて唇を噛んだ。

 過去にも兄妹から養子を迎えた国王はいた。だけどそれは側妃を5人娶った後だ。
 それだけ女を変えて試してみても子ができなければ、国王に問題があると見做される。陰で嗤われ、屈辱に震えながら、かつての王は養子を迎えた。

 だけどレイヴンが試したのはまだアリシア1人だけ。
 相手を変えれば子ができるかもしれない。
 それなのに養子を認められるとは思えなかった。

 それにきっとアリシアも受け入れないだろう。
 レイヴンには我が子を得られる可能性がある。レイヴンの子が王位を継ぐべきだと思っているはずだ。
 その道を自身が閉ざしたとなればきっと自分を責めるようになる。
 アリシアがそれに耐えられるだろうか。

「……どうしてもアリシア以外と子を作りたくないというのなら、避妊薬を使う手もある。そうして時間を稼いでいる内にアリシアが身籠れば一番良いのではないか」

「陛下っ!!」

 マルグリットが声を上げる。
 避妊薬を使いながら、正妃に子ができるまで時間を稼いだのはユリアだ。
 そのせいでユリアは家族に責められ、社交界でも肩身の狭い思いをしている。

 ただそれは、ユリアの自主的な措置だった。
 レイヴンの側妃には何かに混ぜて密かに飲ませるしかない。

「……ですがそれは房事を行うということです」

 アリシアが身籠るまでか、側妃を5人娶ってそれぞれ3年経つまでか。
 それまでは時々でも側妃を抱かなければならない。

 嫌だ!!

 その言葉は声にならなかった。

「とにかく、そなたたちにとってどうするのが一番良いのかよく考えてみよ」

 そう言われてレイヴンはもう一度頭を下げた。
 部屋を辞した後も国王から言われたことが頭から離れなかった。




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