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第2部 6章
4 葛藤①
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国王の執務室から退室した後アリシアのところへ戻ったレイヴンは、国王との話し合いの内、令嬢たちへの表立った非難を止めるように言われたことだけを伝えた。
話を聞いたアリシアは、最もなことだとすぐに頷く。
国王や王妃に余計な心配を掛けてしまったと気にしているようだった。
それからレイヴンが何も言わなくなったからだろう。レイヴンを取り巻く令嬢たちの態度が、大胆に、悪辣になってきている。
但し、度が過ぎれば国王から家へ抗議文が出されることも伝わってきているらしく、黙認されるぎりぎりの線を狙っている。ずる賢いとしか言いようがない。
どれだけ甘い声で擦り寄って来ていても、この令嬢たちには嫌悪感しか感じることがなく、側妃を考えるように言われていても、こんな令嬢たちから選ぶことは決して無いと断言できた。
だがレイヴンが表立ってアリシアを庇わなくなったことから、社交界では「寵愛が薄れた」だの「レイヴンが側妃を受け入れるつもりになったのでは」などと言われているようだ。
それが令嬢たちが図に乗る要因にもなっていた。
レイヴンが先にアリシアへ話をしたのは、そう言われるのを恐れていたからで、アリシアはそれが間違いだと知ってくれている。それでもアリシアに掛かるストレスが日に日に大きくなっているのは間違いなく、どんどんと痩せ細ってしまった。
こうして抱き寄せていても、以前のような柔らかさはなくなってしまった。
それでもレイヴンは毎夜アリシアを抱き続けている。
体重と共に体力も失ってしまったらしく、1度か2度で意識を飛ばしてしまうようになった。朝もまた昼前まで起きられなくなったようだ。
それでも抱き続けているのは、そうしなければ子ができないからだ。そしてアリシアが不安がるからでもあった。
アリシアの疲労を気にした侍医長から閨を控えるように言われたこともあったが、アリシアの置かれた状況を知っているので最近は何も言われなくなっている。
「何を読んでいたの?」
レイヴンは腕の中に囲ったアリシアへ問い掛けた。
急ぎの仕事はあるだろうが、レイヴンといる時に書類へ目を通すというのは珍しい。
訊かれたアリシアは暫く逡巡した後、口を開いた。
「エミリーが子を生んだそうですわ」
「……そうなんだ」
エミリーはジョッシュと結婚して侯爵家から離れた。
今は王都の外れにある家で暮らしている。
エミリーが侯爵家を離れた後も、アリシアやレオナルドはエミリーの動向を監視させていた。恐らくはジェーンもそうだろう。監視させているのはエミリーが何か問題を起こさないよう見張る為だが、定期的に生活の様子が知らされる。
レイヴンはエミリーに子が生まれたことをレオナルドから聞いて知っていた。
アリシアには伝えていない。ジェーンからも知らされることはないだろう。だけどアリシアが雇っている者からの報告を止めることはできなかった。彼らはただ自分の仕事をしているだけなのだ。それを止めてしまえば信頼が損なわれることになる。
「エミリーが嫁いでからもう2年近く経ちますものね。上手くいっているようで何よりですわ」
アリシアがふふっと笑う。従妹の吉事を喜んでいるようだ。
だけど瞳が潤むのを隠すようにレイヴンを見ようとはしない。
アリシアはレイヴンが驚いていないことに気がついているのだ。
そしてなぜ自分に知らされなかったのかも理解しているのだろう。
話を聞いたアリシアは、最もなことだとすぐに頷く。
国王や王妃に余計な心配を掛けてしまったと気にしているようだった。
それからレイヴンが何も言わなくなったからだろう。レイヴンを取り巻く令嬢たちの態度が、大胆に、悪辣になってきている。
但し、度が過ぎれば国王から家へ抗議文が出されることも伝わってきているらしく、黙認されるぎりぎりの線を狙っている。ずる賢いとしか言いようがない。
どれだけ甘い声で擦り寄って来ていても、この令嬢たちには嫌悪感しか感じることがなく、側妃を考えるように言われていても、こんな令嬢たちから選ぶことは決して無いと断言できた。
だがレイヴンが表立ってアリシアを庇わなくなったことから、社交界では「寵愛が薄れた」だの「レイヴンが側妃を受け入れるつもりになったのでは」などと言われているようだ。
それが令嬢たちが図に乗る要因にもなっていた。
レイヴンが先にアリシアへ話をしたのは、そう言われるのを恐れていたからで、アリシアはそれが間違いだと知ってくれている。それでもアリシアに掛かるストレスが日に日に大きくなっているのは間違いなく、どんどんと痩せ細ってしまった。
こうして抱き寄せていても、以前のような柔らかさはなくなってしまった。
それでもレイヴンは毎夜アリシアを抱き続けている。
体重と共に体力も失ってしまったらしく、1度か2度で意識を飛ばしてしまうようになった。朝もまた昼前まで起きられなくなったようだ。
それでも抱き続けているのは、そうしなければ子ができないからだ。そしてアリシアが不安がるからでもあった。
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「何を読んでいたの?」
レイヴンは腕の中に囲ったアリシアへ問い掛けた。
急ぎの仕事はあるだろうが、レイヴンといる時に書類へ目を通すというのは珍しい。
訊かれたアリシアは暫く逡巡した後、口を開いた。
「エミリーが子を生んだそうですわ」
「……そうなんだ」
エミリーはジョッシュと結婚して侯爵家から離れた。
今は王都の外れにある家で暮らしている。
エミリーが侯爵家を離れた後も、アリシアやレオナルドはエミリーの動向を監視させていた。恐らくはジェーンもそうだろう。監視させているのはエミリーが何か問題を起こさないよう見張る為だが、定期的に生活の様子が知らされる。
レイヴンはエミリーに子が生まれたことをレオナルドから聞いて知っていた。
アリシアには伝えていない。ジェーンからも知らされることはないだろう。だけどアリシアが雇っている者からの報告を止めることはできなかった。彼らはただ自分の仕事をしているだけなのだ。それを止めてしまえば信頼が損なわれることになる。
「エミリーが嫁いでからもう2年近く経ちますものね。上手くいっているようで何よりですわ」
アリシアがふふっと笑う。従妹の吉事を喜んでいるようだ。
だけど瞳が潤むのを隠すようにレイヴンを見ようとはしない。
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そしてなぜ自分に知らされなかったのかも理解しているのだろう。
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