【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 6章

5 葛藤②

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 レイヴンの腕に抱かれてその胸に凭れながら、アリシアはレイヴンの顔を見ることができなかった。

 レイヴンはエミリーが子を生んだと聞いても驚いていない。
 知っていたのだ。
 それなのにアリシアには教えてくれなかった。

 それがレイヴンの気遣いなのだとわかっていても嫌な気持ちになってしまう。
 だけど、それでは知りたかったのかと言われてしまえば、知りたくなかった。
 隠されたくないけれど知りたくもないのだからどうしようもない。
 
 ただレイヴンが知っているということはレオナルドも知っているのだろう。
 レオナルドも何も教えてくれなかった。そういう腫れ物のような扱いが一番嫌だ。

 最近ではこんなことが続いていた。

 暖かくなってきた頃、カロリーナは出産をした。生まれたのは可愛い男の子である。
 アリシアも勿論すぐに祝いの品を届けさせた。この時ばかりは友人として素直に喜びを感じられた、と思う。 
 だけど今はもうお茶会を開いていない。


 出産からしばらくして体調が落ち着いた頃、カロリーナが夫と共に王太子宮を訪れた。
 出産祝いへの礼を言う為である。通常ならば同じ頃に開かれる子の誕生を祝うパーティーで礼を伝えるものだが、アリシアは臣下の開くパーティーに出られない。
 カロリーナたちはそれを知っているから、前もって挨拶に来てくれたのだ。
 
 王太子宮を訪れたカロリーナの顔は幸せで輝いていた。
 まだひと月ほどしか経っていないが、日々子の成長を感じると言う。
 体調が万全でないことやパーティーの手配で忙しいことなどから直接顔を合わせられたのは短い時間だったけれど、子を持つ母の喜びを十分感じ取ることができた。

 それからしばらく経った後の王宮で開かれた舞踏会でもカロリーナは幸せそうな顔を見せていた。やはりどこへ行っても話の中心は子のことになるようで、嬉しそうに笑っている。
 その時はアリシアにも笑顔で子の可愛さや執務との両立の難しさなどを話していた。

 だけどその後、アリシアが開いたお茶会でカロリーナは子の話をしなかった。 
 アリシアが何か嫌な態度を取ってしまったわけではないと思う。
 だけど社交界で言われていることや会う度に痩せていくアリシアを見て状況を悟ったようだ。それはイリーナやジョアニーも同じらしく、当たり障りない話題に終始したお茶会になった。
 それが4人で開いた最後のお茶会である。

 カロリーナは子が生まれたばかりで、いくら子の話をしてもし足りない時期だろう。
 それに生まれた子は嫡男である。
 貴族の慣例に従い、子の養育は乳母が中心になって行うとしても跡取りの育て方について先に子を生んでいる2人に相談したいこともあるはずだ。だけどアリシアがいてはそれもできない。

 アリシアはそうして3人から距離を置いた。
 だけど親しいといっても元から頻繁に顔を合わせていたわけでもない。
 だから3人ともお互いに忙しく時間が合わないだけだと思っているかもしれない。
 
 だから最近のアリシアはそれまでより忙しく過ごしている。
 カロリーナから距離を置いていると、避けていると気づかれない為に……。



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