【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 6章

15 ひと時の安らぎを

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「アリシアの様子はいかがですか?」

「……相変わらずだよ」

「……そうですか」

 アリシアとの閨を休むようになって半月程が過ぎた。
 その間一度も閨がなかったわけではなく、約束通り休日には体を重ねている。
 アリシアもその時だけは安心したような表情を見せていた。

 ただアリシアが心穏やかでいられるのは、恐らくその時だけだ。「相変わらず」というのは良い意味ではない。
 閨をなくせばその分ゆっくり眠れると思っていた。だけど追い詰められたアリシアは上手く眠れていないようだ。
 あの日のように一晩中泣いているようなことはないが、目が覚めると胸元が濡れていることがある。そんな時は寝息を立てるアリシアの目元が腫れていて、泣き疲れて寝てしまったのだと察することができた。

 あまり眠れていないのだから体力が回復するはずがなく、無駄なことをしているのではないかと焦燥が募る。
 もしそうであれば……、意味のないことでアリシアを悲しませただけだ。

「……僕は無駄なことをしているのかな?」

「そんなことはありません。アリシアに休息が必要なのは確かなことです」

 ただその休息を取らせようとして上手くいっていない。そのことはレオナルドもよくわかっていた。
 それでもレイヴンに様子を訊いたのは、何か変化があったのではないかと期待したからだ。

 上手く寝付けないというアリシアの為にルトビア公爵家も手を尽くしている。
 オレリアやレオナルドは精神を落ち着かせるお茶を差し入れたり、眠りを誘うという香を取り寄せたりしている。レイヴンもそれらの品を試したり眠る前のミルクにブランデーを垂らしたりしていた。
 だけど今のところ効果がない。

 それにレイヴンはアリシアが最近、何かを言おうとして躊躇うのに気がついていた。
 何かを言おうとしてレイヴンを見つめては、言葉に出せずに飲み込んでいる。
 そしてレイヴンは……、アリシアが何を言おうとしているのか薄々気がついていた。だからそんな時は、アリシアを抱き締めて「愛してる」「大好きだよ」と愛の言葉を尽くす。

「……アリシアの為にもできるだけ顔を出してやって欲しい」
 
 レイヴンがそう告げるとレオナルドは頭を下げた。
 やはりレオナルドが傍にいると安心できるようで、短い時間でも眠ることができるようなのだ。
 アリシアを案じているエレノアたちは、アリシアがレオナルドとお茶を飲みながらうつらうつらし出しても何も言わない。レオナルドが隣に座って肩を寄せると凭れて眠ってしまうという。
 レイヴンはその役目を自分が担いたかったと思うが、妬いているような余裕はない。

「そういえばディアナ嬢はどうしている?」

 ふと思い出して訊いてみれば、レオナルドが少し笑った。
 
「忙しくしていますよ。学園の勉強と公爵夫人としての勉強と……。そんな中でもわたしのことは気遣ってくれています」

 ディアナは希望通りAクラスになった。だけどAクラスに入るだけが目標ではないので、上位の成績を維持する為には猛勉強をしなくてはならない。
 最近のレオナルドは王都を不在にしていたり、王都にいる時でも溜まった仕事に忙殺されてディアナとゆっくり会うことができなかった。ディアナが公爵夫人としての教育を受けに公爵邸を訪れていても、ディアナがいる時間に帰ることもできない。

 だけどディアナはそんなレオナルドに理解を示してくれていた。
 アリシアの名誉に関わるので直接的なことは言わないが、「大切な方の力になって差し上げてください」と言われている。公爵家に嫁ぐディアナにとって跡継ぎ問題は他人事ではないのだ。

「そうか……
。良い婚約者を選んだな」

 レイヴンがそういうと、レオナルドは柔らかい表情で頷いた。



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