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第2部 6章
73 出産②
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「それじゃあ頑張ってね、アリシア。僕はずっとここにいるからね!!」
「ありがとうございます。とても心強いですわ」
「大変な思いをさせてごめんね……。僕が代われたら良いのに……」
「心配なさらないで下さい。必ず元気な子を生んでみせますわ」
「アリシア……」
レイヴンがアリシアを抱き締めると、アリシアがレイヴンの背中へ腕をまわす。
アリシアは小刻みに震える背中を宥めるように優しく撫でた。
産室の扉の前で、しばしの別れの儀式である。
だがこれを何度繰り返すのか。
同じことを繰り返してアリシアから離れようとしないレイヴンに、侍医たちは既にうんざりしている。
こうしている間に次の陣痛が来るのではないかと気が気でないエレノアは、「妃殿下の為にも早く専門の方に診ていただきましょう!」とレイヴンを強引に引き離した。
廊下に取り残されたレイヴンは、居ても立っても居られなかった。
時々アリシアの呻き声が聞こえてこれば尚更である。
アリシアは普段、辛いことがあってもそれを隠してしまう。
そのアリシアが堪えきれずに声を上げているのだから、相当辛いことなのだ。
「どうしよう……。僕はどうすれば良い?!」
レイヴンはアリシアに告げた通り、その場を離れず行ったり来たりを繰り返していた。産室前の廊下は広くソファが多く並んでいて、そこで出産を待てるようになっている。
だけどレイヴンに座っている余裕などなく、ひたすら行き来を繰り返しては時々扉にへばり付く。それはアリシアの悲鳴のような声が大きく聞こえた時だ。
「アリシアがあんなに苦しむなんて……」
跡継ぎを儲けるのが務めだと言われていても、王太子教育の中に出産に関する項目はなかった。
それにレイヴンには多くの弟妹がいるけれど、国王はレイヴンと違ってお産が始まった時から産室前で陣取るようなことはなく、執務室で仕事をしながら「いよいよです」との知らせが来るのを待って産室を訪れていた。当然子どもたちを連れてくることもなく、レイヴンが新しい弟妹と対面するのはいつもマルグリットが自室へ移ってからだった。
つまり出産がどんなものなのか、これまで知らなかったのだ。
「どうしよう……。やっぱりもう少し近くへ行ったほうが……」
「何の為に?殿下が傍へ行かれても、できることはありませんよ」
「?!」
独り言に応える声がして、レイヴンは驚いて振り向いた。
そこには呆れた顔のレオナルドが立っている。
「レオ?!どうしてここに?!」
「何故と言われましても……。知らせを頂いたので、駆けつけて参りました」
「!!」
嫌味を含んだ言葉にレイヴンはハッとした。
すっかり動転していたレイヴンは、アリシアが産気づいても公爵家に使いを出していなかった。
それなら手配したのはアリシアだ。アリシアは知らせの文をエレノアへ託したのだろう。そしてエレノアは暗い内に公爵邸へ使いを走らせるのを躊躇い、日が昇ってから使いを出した。
気がつけば廊下に設えられたソファにマルグリットが座っていた。
マルグリットと向かい合うようにしてアダムとオレリアも座っている。2人が挨拶もなく座るはずがないので、来訪の挨拶を済ませ、許可を得て座っているのだろう。レイヴンは全く気がついていなかった。
「中へ入るなんて、愚かなことをしては駄目よ。落ち着いて、少しここへ座りなさい」
こちらを見ていたマルグリットが、扇でピシリとソファを示す。
レイヴンは逆らうことができずにそわそわしたままソファへ座った。廊下には太陽の明るい光が入ってきていて、随分日が高くなっているようだ。
「初めての子ですもの。きっと時間が掛かるわね」
「さようでございますね。私もレオナルドの時は……」
そのまま母親2人は出産の思い出話に花を咲かせる。
名前を出されたレオナルドは居心地悪そうに肩を竦めていた。
こうして見ていると、やはりマルグリットとオレリアは自身が経験しているからか、どっしりと落ち着いているように見える。反対にアダムとレオナルドは、落ち着いているよう装っていてもそわそわした様子が隠しきれていない。
それにしても、マルグリットは今何と言っただろうか。
こんな時間がまだまだ続くというのか。
「耐えられない……」
頭を抱えたレイヴンをレオナルドは珍しく否定しなかった。
そうして日が陰り、また外が暗くなりだした頃ーー。
おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ……
産室の中で元気な産声が響いた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
(私が)難産でした……。
「ありがとうございます。とても心強いですわ」
「大変な思いをさせてごめんね……。僕が代われたら良いのに……」
「心配なさらないで下さい。必ず元気な子を生んでみせますわ」
「アリシア……」
レイヴンがアリシアを抱き締めると、アリシアがレイヴンの背中へ腕をまわす。
アリシアは小刻みに震える背中を宥めるように優しく撫でた。
産室の扉の前で、しばしの別れの儀式である。
だがこれを何度繰り返すのか。
同じことを繰り返してアリシアから離れようとしないレイヴンに、侍医たちは既にうんざりしている。
こうしている間に次の陣痛が来るのではないかと気が気でないエレノアは、「妃殿下の為にも早く専門の方に診ていただきましょう!」とレイヴンを強引に引き離した。
廊下に取り残されたレイヴンは、居ても立っても居られなかった。
時々アリシアの呻き声が聞こえてこれば尚更である。
アリシアは普段、辛いことがあってもそれを隠してしまう。
そのアリシアが堪えきれずに声を上げているのだから、相当辛いことなのだ。
「どうしよう……。僕はどうすれば良い?!」
レイヴンはアリシアに告げた通り、その場を離れず行ったり来たりを繰り返していた。産室前の廊下は広くソファが多く並んでいて、そこで出産を待てるようになっている。
だけどレイヴンに座っている余裕などなく、ひたすら行き来を繰り返しては時々扉にへばり付く。それはアリシアの悲鳴のような声が大きく聞こえた時だ。
「アリシアがあんなに苦しむなんて……」
跡継ぎを儲けるのが務めだと言われていても、王太子教育の中に出産に関する項目はなかった。
それにレイヴンには多くの弟妹がいるけれど、国王はレイヴンと違ってお産が始まった時から産室前で陣取るようなことはなく、執務室で仕事をしながら「いよいよです」との知らせが来るのを待って産室を訪れていた。当然子どもたちを連れてくることもなく、レイヴンが新しい弟妹と対面するのはいつもマルグリットが自室へ移ってからだった。
つまり出産がどんなものなのか、これまで知らなかったのだ。
「どうしよう……。やっぱりもう少し近くへ行ったほうが……」
「何の為に?殿下が傍へ行かれても、できることはありませんよ」
「?!」
独り言に応える声がして、レイヴンは驚いて振り向いた。
そこには呆れた顔のレオナルドが立っている。
「レオ?!どうしてここに?!」
「何故と言われましても……。知らせを頂いたので、駆けつけて参りました」
「!!」
嫌味を含んだ言葉にレイヴンはハッとした。
すっかり動転していたレイヴンは、アリシアが産気づいても公爵家に使いを出していなかった。
それなら手配したのはアリシアだ。アリシアは知らせの文をエレノアへ託したのだろう。そしてエレノアは暗い内に公爵邸へ使いを走らせるのを躊躇い、日が昇ってから使いを出した。
気がつけば廊下に設えられたソファにマルグリットが座っていた。
マルグリットと向かい合うようにしてアダムとオレリアも座っている。2人が挨拶もなく座るはずがないので、来訪の挨拶を済ませ、許可を得て座っているのだろう。レイヴンは全く気がついていなかった。
「中へ入るなんて、愚かなことをしては駄目よ。落ち着いて、少しここへ座りなさい」
こちらを見ていたマルグリットが、扇でピシリとソファを示す。
レイヴンは逆らうことができずにそわそわしたままソファへ座った。廊下には太陽の明るい光が入ってきていて、随分日が高くなっているようだ。
「初めての子ですもの。きっと時間が掛かるわね」
「さようでございますね。私もレオナルドの時は……」
そのまま母親2人は出産の思い出話に花を咲かせる。
名前を出されたレオナルドは居心地悪そうに肩を竦めていた。
こうして見ていると、やはりマルグリットとオレリアは自身が経験しているからか、どっしりと落ち着いているように見える。反対にアダムとレオナルドは、落ち着いているよう装っていてもそわそわした様子が隠しきれていない。
それにしても、マルグリットは今何と言っただろうか。
こんな時間がまだまだ続くというのか。
「耐えられない……」
頭を抱えたレイヴンをレオナルドは珍しく否定しなかった。
そうして日が陰り、また外が暗くなりだした頃ーー。
おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ……
産室の中で元気な産声が響いた。
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(私が)難産でした……。
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