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第2部 6章
74 天使の誕生
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「第一王子ご誕生!王太子殿下に第一王子がご誕生ーーーっ!!!」
若手の侍医が、王子誕生を報せる声を上げながら王宮内を駆けまわる。
いつになく緊張した雰囲気に、「いよいよか!」と仕事を終えた後も残っていた貴族たちの間でその報は瞬く間に広がった。
そうなればこうしていられない。
貴族たちは用意していた祝いの品を届けさせる為に馬車へ飛び乗り急いで自邸へ走らせた。
その貴族たちの背を追うように祝砲が放たれる。
同時に王宮の奥に建つ教会から慶事を祝う鐘が鳴らされ、鐘の音が国中へ広がっていく。
アナトリアでは教会が鳴らす鐘の音が聞こえる距離に次の教会が建てられることになっていて、王家の慶事と弔事を国民へ報せる役目を果たしているのだ。
鐘の音を聞いた国民はどこでも大騒ぎである。
王子か王女かわからなくても、王太子夫妻に第一子が生まれたことはわかるのだ。
特に王都に住む町民たちは顔を輝かせて王宮前の広場へ詰めかけた。まだ営業しているはずの、自分の店を放り出して駆けつけた者もいる。
ここに駆けつけた者の特権は、生まれた子が王子か王女かすぐにわかることである。
情報が早いことを売りにしている新聞社が既に号外をばら撒いていた。
「第一王子ご誕生!生まれたのは、第一王子様だーーーっ!!」
「王子?!生まれたのは王子様なの?!」
「おいっ!こっちにも一枚くれ!!」
「王太子殿下、万歳!王太子妃殿下万歳!!」
皆好き好きに叫んで大騒ぎである。
夜が明ければ国王から祝いの酒や食事が振る舞われるだろう。
そんな広場と打って変わって産室は静寂に包まれていた。
産室へまず入室したのはレイヴン1人である。
親子3人だけで、という心遣いだ。
産室へ入ったレイヴンは息を飲んだ。
部屋の中に女神がいる。
女神はベッドの上で体を起こして小さな天使を抱いていた。
「レイヴン様……」
レイヴンを見て女神が顔を綻ばせる。
それだけで、もう駄目だった。
「アリシア、ありがとう……っ!ありがとう………っ!!」
ぼろぼろと涙が溢れて声が出ない。
まだ入口の近くで動きを止めてしまったレイヴンに、アリシアが呼びかける。
「近くへ来て、顔を見てあげて下さいませ」
「っ!!」
途端にレイヴンは駆け出した。
「アリシアっ!!」
「えっ?!きゃあっ!!」
駆け寄ったレイヴンが赤子ごとアリシアを抱き締める。
驚いたアリシアが声を上げ、その声に驚いた赤子が泣き出した。
「ああっ!せっかくご機嫌が良かったのに……」とは誰の言葉だったのか。
火がついたように泣き声を上げる赤子にぱちくりと目を瞬かせたレイヴンがアリシアへ視線を向けると、アリシアもちょうどこちらへ視線を向けていたようだ。
目があった瞬間、2人は同時に笑いだしていた。
レイヴンが泣いている息子へ手を伸ばす。
「元気だなぁ」
「お父様ですよ。ご機嫌を直してちょうだい」
笑いながら優しく息子へ呼びかけるアリシアは慈愛に満ちている。
母になったのだ。
若手の侍医が、王子誕生を報せる声を上げながら王宮内を駆けまわる。
いつになく緊張した雰囲気に、「いよいよか!」と仕事を終えた後も残っていた貴族たちの間でその報は瞬く間に広がった。
そうなればこうしていられない。
貴族たちは用意していた祝いの品を届けさせる為に馬車へ飛び乗り急いで自邸へ走らせた。
その貴族たちの背を追うように祝砲が放たれる。
同時に王宮の奥に建つ教会から慶事を祝う鐘が鳴らされ、鐘の音が国中へ広がっていく。
アナトリアでは教会が鳴らす鐘の音が聞こえる距離に次の教会が建てられることになっていて、王家の慶事と弔事を国民へ報せる役目を果たしているのだ。
鐘の音を聞いた国民はどこでも大騒ぎである。
王子か王女かわからなくても、王太子夫妻に第一子が生まれたことはわかるのだ。
特に王都に住む町民たちは顔を輝かせて王宮前の広場へ詰めかけた。まだ営業しているはずの、自分の店を放り出して駆けつけた者もいる。
ここに駆けつけた者の特権は、生まれた子が王子か王女かすぐにわかることである。
情報が早いことを売りにしている新聞社が既に号外をばら撒いていた。
「第一王子ご誕生!生まれたのは、第一王子様だーーーっ!!」
「王子?!生まれたのは王子様なの?!」
「おいっ!こっちにも一枚くれ!!」
「王太子殿下、万歳!王太子妃殿下万歳!!」
皆好き好きに叫んで大騒ぎである。
夜が明ければ国王から祝いの酒や食事が振る舞われるだろう。
そんな広場と打って変わって産室は静寂に包まれていた。
産室へまず入室したのはレイヴン1人である。
親子3人だけで、という心遣いだ。
産室へ入ったレイヴンは息を飲んだ。
部屋の中に女神がいる。
女神はベッドの上で体を起こして小さな天使を抱いていた。
「レイヴン様……」
レイヴンを見て女神が顔を綻ばせる。
それだけで、もう駄目だった。
「アリシア、ありがとう……っ!ありがとう………っ!!」
ぼろぼろと涙が溢れて声が出ない。
まだ入口の近くで動きを止めてしまったレイヴンに、アリシアが呼びかける。
「近くへ来て、顔を見てあげて下さいませ」
「っ!!」
途端にレイヴンは駆け出した。
「アリシアっ!!」
「えっ?!きゃあっ!!」
駆け寄ったレイヴンが赤子ごとアリシアを抱き締める。
驚いたアリシアが声を上げ、その声に驚いた赤子が泣き出した。
「ああっ!せっかくご機嫌が良かったのに……」とは誰の言葉だったのか。
火がついたように泣き声を上げる赤子にぱちくりと目を瞬かせたレイヴンがアリシアへ視線を向けると、アリシアもちょうどこちらへ視線を向けていたようだ。
目があった瞬間、2人は同時に笑いだしていた。
レイヴンが泣いている息子へ手を伸ばす。
「元気だなぁ」
「お父様ですよ。ご機嫌を直してちょうだい」
笑いながら優しく息子へ呼びかけるアリシアは慈愛に満ちている。
母になったのだ。
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