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1章 ~現在 王宮にて~
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「前言撤回……?婚約破棄を受け入れぬ、とは……」
「いや、そんなことは……」
シェリルの言葉に国王とマクロイド公爵が顔を見合わせる。
それもそうだろう。今回のことはギデオンに問題があった為申し出という形になっているが、本来王家からの通告を断ることはできない。
だから国王たちは、婚約破棄が成されるものとして話し合いを進めていた。
カシアンを養子にして王位を継がせると合意したのに、シェリルとの婚約が継続されるのならギデオンが継承権を失う理由もなくなるのだ。
正直なところ、継承権はどちらでも良いとシェリルは思う。
幼い頃から妃教育を受けているけれど、王太子妃や王妃という地位に未練はなかった。
それにギデオンは大勢の前で不貞を認めている。不祥事を起こした罰として臣籍に落されるというのも悪くはない。期待した目を向けるルイザには申し訳ないが、この王宮から抜け出せるのならむしろその方が良いのではないかと思うほどだ。
「お言葉に従えず、申し訳ございません。罰を受けろと仰るなら、どのような罰でも受け入れるつもりでございます。ですが私は、こんな女性にギデオン様を譲るつもりはありません」
シェリルは国王を見据え、きっぱりと言い切った。
国王たちもミーシャの本音を聞いているので複雑な顔をしている。
国王が婚約破棄とミーシャとの結婚を認めたのは、ギデオンに負い目があるからだ。
王妃だけを愛している国王は、側妃とギデオンに少しの愛情も関心も向けなかった。
国王が興味があるのはギデオンの成績と評判だけ。
その評判が悪化していても、シェリルが上手く取り繕っていたから直接注意することもなかった。
だけど国王にも罪悪感はある。
だからこれまで顧みなかった息子が、本当に愛する相手を見つけたと言うなら叶えてやるべきだと思ったのだ。
それが父としてしてやれる唯一のことだと思っていた。
だけどギデオンが継承権を失ったことでミーシャの本性が現れた。
本性を知った以上、ミーシャと結ばれてもギデオンが幸せになることはないだろう。
もしこのまま2人の婚姻を推し進めてしまえば、今度こそギデオンを見捨てたことに――。
頭を抱える国王をしばらく見ていたシェリルだったが、やがてギデオンを振り返り哀し気な笑みを見せた。
「殿下が私を愛していないことはわかっています。2人の間にあるのは、私の一方的な想いだけ。ですが、そちらの方と一緒になられるより、私と一緒になった方が幸せになれますわ。ですからどうか、私をお選び下さい」
それはどう聞いても求婚の言葉だった。
政略結婚で相手を決められる貴族の間では、当人同士の間で求婚されることはほとんどない。そんなことをしなくても結ばれるのは当然のことだからだ。
それでも本当に想い合っている同士であれば、家の決まり事ではなく結ばれるのだと示すために男性が求婚することもある。
その例とは違っているが、女性の方から求婚しても良いだろう。元々ギデオンの不貞に婚約破棄と、この縁組は既にめちゃくちゃなのだ。
「いや、そんなことは……」
シェリルの言葉に国王とマクロイド公爵が顔を見合わせる。
それもそうだろう。今回のことはギデオンに問題があった為申し出という形になっているが、本来王家からの通告を断ることはできない。
だから国王たちは、婚約破棄が成されるものとして話し合いを進めていた。
カシアンを養子にして王位を継がせると合意したのに、シェリルとの婚約が継続されるのならギデオンが継承権を失う理由もなくなるのだ。
正直なところ、継承権はどちらでも良いとシェリルは思う。
幼い頃から妃教育を受けているけれど、王太子妃や王妃という地位に未練はなかった。
それにギデオンは大勢の前で不貞を認めている。不祥事を起こした罰として臣籍に落されるというのも悪くはない。期待した目を向けるルイザには申し訳ないが、この王宮から抜け出せるのならむしろその方が良いのではないかと思うほどだ。
「お言葉に従えず、申し訳ございません。罰を受けろと仰るなら、どのような罰でも受け入れるつもりでございます。ですが私は、こんな女性にギデオン様を譲るつもりはありません」
シェリルは国王を見据え、きっぱりと言い切った。
国王たちもミーシャの本音を聞いているので複雑な顔をしている。
国王が婚約破棄とミーシャとの結婚を認めたのは、ギデオンに負い目があるからだ。
王妃だけを愛している国王は、側妃とギデオンに少しの愛情も関心も向けなかった。
国王が興味があるのはギデオンの成績と評判だけ。
その評判が悪化していても、シェリルが上手く取り繕っていたから直接注意することもなかった。
だけど国王にも罪悪感はある。
だからこれまで顧みなかった息子が、本当に愛する相手を見つけたと言うなら叶えてやるべきだと思ったのだ。
それが父としてしてやれる唯一のことだと思っていた。
だけどギデオンが継承権を失ったことでミーシャの本性が現れた。
本性を知った以上、ミーシャと結ばれてもギデオンが幸せになることはないだろう。
もしこのまま2人の婚姻を推し進めてしまえば、今度こそギデオンを見捨てたことに――。
頭を抱える国王をしばらく見ていたシェリルだったが、やがてギデオンを振り返り哀し気な笑みを見せた。
「殿下が私を愛していないことはわかっています。2人の間にあるのは、私の一方的な想いだけ。ですが、そちらの方と一緒になられるより、私と一緒になった方が幸せになれますわ。ですからどうか、私をお選び下さい」
それはどう聞いても求婚の言葉だった。
政略結婚で相手を決められる貴族の間では、当人同士の間で求婚されることはほとんどない。そんなことをしなくても結ばれるのは当然のことだからだ。
それでも本当に想い合っている同士であれば、家の決まり事ではなく結ばれるのだと示すために男性が求婚することもある。
その例とは違っているが、女性の方から求婚しても良いだろう。元々ギデオンの不貞に婚約破棄と、この縁組は既にめちゃくちゃなのだ。
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