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1章 ~現在 王宮にて~
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「シェリルが俺を、愛している……?」
シェリルからの求婚を聞いてもギデオンは呆然としたままだった。
その顔には「信じられない」という気持ちがありありと表れている。
確かに2人が親しくしていたこともあった。
だけどそれは学園に入学するまでのことだ。
学園に入学する前のギデオンは王宮で孤独だった。
父親である国王は滅多に百合の宮を訪れず、母親のルイザはそれをギデオンのせいにしてギデオンを責めている。直接それを口にすることはないけれど、「あなたは優秀なのだから、次も絶対に首席を取るのよ」「今度こそあの方もこちらを見てくれるはず……」という言葉は何度も聞いていた。
それがどれほどギデオンにとって重石になるのか……、そしてどれだけ優秀な成績を残しても父に振り向かれないギデオンの気持ちを傷つけるのか、ルイザは考えたことがないだろう。
そんなギデオンにとって、シェリルは一時的に淋しさを紛らわすことのできる相手だった。
今では考えられないことだが、幼い頃のギデオンは寂しくなるとシェリルがいる部屋の傍へ来てちょこんと座っているような男の子だったのだ。そんなギデオンをシェリルは無視することができず、妃教育の途中でも抜け出して秘密基地にしていた樹洞で遊んだりしていた。
勿論王宮へ戻った後は待ち構えていた教育係の夫人に揃って叱られたものだが、そんな時でも2人で手を繋いでいれば辛いと感じることはなかった。
だけど2人は成長していく。
身長が伸びて庭を駆けまわることもなくなり、あの樹洞にも入れなくなった頃から、2人の関係は少しずつ変わってしまったのだ。
「俺を愛しているなんて、嘘だろう……?そんな素振りは、少しも……」
幼い頃のことはギデオンも覚えていた。
誰も信じられない王宮の中で、シェリルだけは嘘偽りのない笑顔を向けてくれていたと思う。
その笑顔が眩しくて嬉しくて、シェリルといる時だけは淋しさを忘れることができた。
だけどシェリルも時と共に変わっていく。
いつの頃からか声を立てて笑うことがなくなり、手を繋いで庭園を駆けることもなくなった。勉強を抜け出して遊びに行こうと誘っても、困ったように微笑むだけになった。
その時ギデオンは気づいたのだ。
シェリルがこれまで優しくしてくれたのは、婚約者だからに過ぎない。
ギデオンのことを想ってのことではなく、婚約者としての役割を果たしていただけなのだ。
そう気づいた時、心に冷たい風が吹いた。
父はギデオンを王位を継がせる為の駒だと思っている。母は父の気を引く道具にしている。
優しく親切に振る舞う使用人たちも、ギデオンのいないところでは「エドワード様が王妃様のお子様であれば……」と囁いているのを知っている。
唯一ギデオンのために心を砕いてくれると思っていた乳母も、役目を終えると早々に王宮を辞し、それ以来一度も姿を見せていない。
ああ、乳母が優しくしてくれたのは、それが彼女の仕事だったからだ。
そう気づいた時の虚しさに似ていた。
シェリルからの求婚を聞いてもギデオンは呆然としたままだった。
その顔には「信じられない」という気持ちがありありと表れている。
確かに2人が親しくしていたこともあった。
だけどそれは学園に入学するまでのことだ。
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父親である国王は滅多に百合の宮を訪れず、母親のルイザはそれをギデオンのせいにしてギデオンを責めている。直接それを口にすることはないけれど、「あなたは優秀なのだから、次も絶対に首席を取るのよ」「今度こそあの方もこちらを見てくれるはず……」という言葉は何度も聞いていた。
それがどれほどギデオンにとって重石になるのか……、そしてどれだけ優秀な成績を残しても父に振り向かれないギデオンの気持ちを傷つけるのか、ルイザは考えたことがないだろう。
そんなギデオンにとって、シェリルは一時的に淋しさを紛らわすことのできる相手だった。
今では考えられないことだが、幼い頃のギデオンは寂しくなるとシェリルがいる部屋の傍へ来てちょこんと座っているような男の子だったのだ。そんなギデオンをシェリルは無視することができず、妃教育の途中でも抜け出して秘密基地にしていた樹洞で遊んだりしていた。
勿論王宮へ戻った後は待ち構えていた教育係の夫人に揃って叱られたものだが、そんな時でも2人で手を繋いでいれば辛いと感じることはなかった。
だけど2人は成長していく。
身長が伸びて庭を駆けまわることもなくなり、あの樹洞にも入れなくなった頃から、2人の関係は少しずつ変わってしまったのだ。
「俺を愛しているなんて、嘘だろう……?そんな素振りは、少しも……」
幼い頃のことはギデオンも覚えていた。
誰も信じられない王宮の中で、シェリルだけは嘘偽りのない笑顔を向けてくれていたと思う。
その笑顔が眩しくて嬉しくて、シェリルといる時だけは淋しさを忘れることができた。
だけどシェリルも時と共に変わっていく。
いつの頃からか声を立てて笑うことがなくなり、手を繋いで庭園を駆けることもなくなった。勉強を抜け出して遊びに行こうと誘っても、困ったように微笑むだけになった。
その時ギデオンは気づいたのだ。
シェリルがこれまで優しくしてくれたのは、婚約者だからに過ぎない。
ギデオンのことを想ってのことではなく、婚約者としての役割を果たしていただけなのだ。
そう気づいた時、心に冷たい風が吹いた。
父はギデオンを王位を継がせる為の駒だと思っている。母は父の気を引く道具にしている。
優しく親切に振る舞う使用人たちも、ギデオンのいないところでは「エドワード様が王妃様のお子様であれば……」と囁いているのを知っている。
唯一ギデオンのために心を砕いてくれると思っていた乳母も、役目を終えると早々に王宮を辞し、それ以来一度も姿を見せていない。
ああ、乳母が優しくしてくれたのは、それが彼女の仕事だったからだ。
そう気づいた時の虚しさに似ていた。
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