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1章 ~現在 王宮にて~
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しばらく真剣な目でギデオンを見ていたシェリルだったが、ふっと哀し気に微笑んだ。
シェリルの気持ちが少しもギデオンに伝わっていないのはわかっていたことだ。
「殿下が私の気持ちをお疑いになるのもわかります。私には殿下が望むような愛情表現ができませんでしたから」
シェリルは「ギデオンが望む愛情表現」と言ったが、正しくは「理解できる愛情表現」だろうか。
ギデオンは近くで極端な愛を示す2人を見てきた。王妃の傍に常に寄り添い、片時も傍を離れない国王と、得られない愛を求めて嘆き悲しむ母の姿だ。
国王には病気の王妃の元を離れられない事情があったし、ルイザには嫁いでから蔑ろにされ続けた女の恨みもあるだろう。だけどギデオンにとって愛は「常に寄り添い傍にいるもの」で、「気持ちが得られなければ嘆き悲しむもの」となった。
だけどシェリルにそんなことはできない。
子どもの頃は迷わず傍にいることができたけれど、成長するにつれて学んでいく。
淑女が駆けたりしてはいけない。
感情を表に出してはいけない。歯を見せて笑うなんて、はしたないことだ。
教育係の目がないからといって勉強をさぼって抜け出したりしてはいけない。
特にギデオンを支えられる優秀な妃になる為には、他人からの評判も重要になる。シェリルがおかしなことをしてそれが噂になれば、婚約者のギデオンまで嗤われることになるのだ。
それを理解してからは、殊更淑女教育に力を入れるようになった。
だけど淑女としての振る舞いを身につけていくシェリルは、ギデオンにとって遠い存在になっていく。
学園に入学する頃には以前の親しさは消え、ギデオンは義務的な態度を取るようになっていた。
そこへ現れたのがミーシャだ。
ミーシャは本当に淑女教育を受けたのか疑いたくなるほど振る舞いを身につけていなかった。
笑ったり怒ったりとクルクル表情を変えていく。そしてギデオンが望んだら望んだだけ傍にいるようになった。
ギデオンを篭絡したいミーシャにとって、ギデオンの誘いに乗るのは当然のことだっただろう。
だけどギデオンの目には、ミーシャが傍にいるのはそれだけ自分を愛してくれているからだと映った。そしてギデオンが他の女性に気を移しても哀しむ素振りも見せないシェリルは、やはり自分を愛していないのだと納得する。
シェリルにはその過程が手に取るようにわかっていた。
「殿下がどのようにお感じになるのかわかっていながら言葉にして伝えなかった私の落ち度です。申し訳ございません。ですが、殿下の正妃として相応しくありたいと望む私には、殿下の希望に沿うことができませんでした」
他人の目や評価を気にするようになると、素直に感情を表して笑ったり怒ったりすることができなくなった。
だけどシェリルもできるだけ希望に応えようと努力はしたのだ。勉強を抜け出すことはできなくても自由時間に訪ねて行ったし、できるだけ傍にいて話を聞くようにしていた。
だけどそれだけではギデオンは不満だったのだ。
ギデオンの心が離れていくのを感じながら、シェリルにはどうすることもできなかった。
「ミーシャ様のことは、何も感じなかったわけではないのですよ。だけど言葉にしたら感情的になってしまいそうで……。感情のまま殿下を詰ってしまいそうで怖かったのです」
シェリルの気持ちが少しもギデオンに伝わっていないのはわかっていたことだ。
「殿下が私の気持ちをお疑いになるのもわかります。私には殿下が望むような愛情表現ができませんでしたから」
シェリルは「ギデオンが望む愛情表現」と言ったが、正しくは「理解できる愛情表現」だろうか。
ギデオンは近くで極端な愛を示す2人を見てきた。王妃の傍に常に寄り添い、片時も傍を離れない国王と、得られない愛を求めて嘆き悲しむ母の姿だ。
国王には病気の王妃の元を離れられない事情があったし、ルイザには嫁いでから蔑ろにされ続けた女の恨みもあるだろう。だけどギデオンにとって愛は「常に寄り添い傍にいるもの」で、「気持ちが得られなければ嘆き悲しむもの」となった。
だけどシェリルにそんなことはできない。
子どもの頃は迷わず傍にいることができたけれど、成長するにつれて学んでいく。
淑女が駆けたりしてはいけない。
感情を表に出してはいけない。歯を見せて笑うなんて、はしたないことだ。
教育係の目がないからといって勉強をさぼって抜け出したりしてはいけない。
特にギデオンを支えられる優秀な妃になる為には、他人からの評判も重要になる。シェリルがおかしなことをしてそれが噂になれば、婚約者のギデオンまで嗤われることになるのだ。
それを理解してからは、殊更淑女教育に力を入れるようになった。
だけど淑女としての振る舞いを身につけていくシェリルは、ギデオンにとって遠い存在になっていく。
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そこへ現れたのがミーシャだ。
ミーシャは本当に淑女教育を受けたのか疑いたくなるほど振る舞いを身につけていなかった。
笑ったり怒ったりとクルクル表情を変えていく。そしてギデオンが望んだら望んだだけ傍にいるようになった。
ギデオンを篭絡したいミーシャにとって、ギデオンの誘いに乗るのは当然のことだっただろう。
だけどギデオンの目には、ミーシャが傍にいるのはそれだけ自分を愛してくれているからだと映った。そしてギデオンが他の女性に気を移しても哀しむ素振りも見せないシェリルは、やはり自分を愛していないのだと納得する。
シェリルにはその過程が手に取るようにわかっていた。
「殿下がどのようにお感じになるのかわかっていながら言葉にして伝えなかった私の落ち度です。申し訳ございません。ですが、殿下の正妃として相応しくありたいと望む私には、殿下の希望に沿うことができませんでした」
他人の目や評価を気にするようになると、素直に感情を表して笑ったり怒ったりすることができなくなった。
だけどシェリルもできるだけ希望に応えようと努力はしたのだ。勉強を抜け出すことはできなくても自由時間に訪ねて行ったし、できるだけ傍にいて話を聞くようにしていた。
だけどそれだけではギデオンは不満だったのだ。
ギデオンの心が離れていくのを感じながら、シェリルにはどうすることもできなかった。
「ミーシャ様のことは、何も感じなかったわけではないのですよ。だけど言葉にしたら感情的になってしまいそうで……。感情のまま殿下を詰ってしまいそうで怖かったのです」
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