影の王宮

朱里 麗華(reika2854)

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2章 ~過去 カールとエリザベート~

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 式の後はパレードだ。
 カールはエリザベートの手を取り、四頭立ての馬車に乗る。
 
 カールはこんなに美しいエリザベートの姿をこれ以上誰にも見せたくない気持ちと、幸せ溢れる姿をみんなに見せつけたい気持ちの間で揺れていた。

 このまま抱き上げて寝室へ連れ込み、腕の中に閉じ込めてしまいたい。
 だけど本当に夫婦になったのだとみんなに知ってもらいたい。

 それはエリザベートも同じだったようで、馬車に乗り込む前にカールの手をきゅっと握り、少し不満そうな、困ったような表情を見せる。

「こんなに素敵なカール様を見たら、みんな恋に落ちてしまわないかしら?」

 女性の目を惹きつける魅力的な夫を隠してしまいたい。
 だけど私の夫だとみんなに知ってもらいたい。
 
 そんな葛藤を見せるエリザベートがまた可愛くて、カールがエリザベートに口づけたのは言うまでもない。



 馬車が沿道に出ると、王太子夫妻の晴れ姿を一目見ようとたくさんの民衆が押しかけていた。
 カールとエリザベートはさっきまでの葛藤が嘘のように微笑んで手を振る。
 王太子の唇に王太子妃の口紅と同じ色の口紅がついていても距離があるので民たちにはわからない。
 ただ人々は幸せそうな2人の姿に熱狂的な声を上げていた。

 エリザベートは民衆から人気が高い。
 ダシェンボード公爵家の領地は豊かで暮らしやすいことで知られている。領地の政策や防衛を担う男性陣と福祉や教育を担う女性陣の連携が取れていて識字率も高く、特産品も制作にも力を入れている。公爵領でしか作られない工芸品も多くあった。
 その中でも有名なのが、公爵家の女性にだけ伝わるレース作りである。

 公爵領では慈善活動のひとつとして孤児院で行われるバザーに多くの品物を提供している。
 バザーに出品される品物を買うこともまた慈善活動であるので、近隣の領地から訪れる裕福層向けに着なくなったドレスや小物、装飾品を中心に提供しているが、その中に公爵家の女性たちが作るレースがあった。
 特にこのレース作品は標準的な生活を送る平民でも少し頑張れば買える価格設定にされているので、裕福層だけではなく一般的な平民たちの間でも少しだけ高級感が味わえるお洒落アイテムとして定番の品になっている。恋人との初デートや結婚記念日などの特別な日に、飾り襟やワンピースの裾飾りにして大切な日を彩るのだ。

 エリザベートは王太子の婚約者として王都の慈善バザーに関わるようになると、自作のレースを王都の孤児院に提供するようになった。レースは王都でも人気になり、いつもすぐに売り切れてしまう。
 カールと共にバザーを手伝いに来るエリザベートが簡素なワンピースに似たような手作りのレース飾りをつけているので、熱心に慈善活動に取り組む美しく心優しい王太子の婚約者とお揃いになるようにと、娘たちはエリザベートの真似をしてお洒落をするようになっていた。

 レースは王都に住む貴族の間でも人気になり、少し価格帯の高いレースのハンカチーフやリボンを持つようになった。そうなれば孤児院は一層潤う。
 これもエリザベートのおかげだと下層部から人気になった。

 今日も沿道にはエリザベートのレース飾りをつけた女性の姿が目立つ。
 エリザベートもベールに自作のレース飾りをつけているので、花嫁とお揃いの部分を見つけた娘たちが誇らしげに声を上げている。
 更にエリザベートの病は民衆にも知られているので、激的な恋物語が好きな民たちは病魔に打ち勝ち結ばれた2人を「運命の恋人たち」と呼んで恋の成就を喜んでいた。




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