53 / 142
2章 ~過去 カールとエリザベート~
30
しおりを挟む
薔薇の宮でも変化があった。
ルイが生まれてからは乳母や侍女、侍従など、ルイの為の使用人が雇われている。
だけどルイがいなくなってしまった以上、彼らを雇い続けることはできない。
葬儀が終わった後、彼らの気持ちが落ち着くのを待って紹介状を書き、新しい雇用先を斡旋して徐々に人数を減らしていった。
薔薇の宮を去る時、彼らはカールに何度も頭を下げ、未だ寝付いているエリザベートを案じる言葉を口にしていた。そしてルイとの思い出を1つ2つ語っていく。
ルイは彼らに愛されていたのだと思うとカールの頬を涙が流れた。彼らはルイとルイを慈しむ両親の姿をいつも微笑ましく見守っていたのだ。
「本当に、申し訳ございませんでした……っ!私がもっと厚着をさせていれば、お風邪を召されることもなかったのに……っ」
中でも乳母の嘆きは激しかった。ぽろぽろと涙を流しながら頭を下げる。
彼女もまたルイを可愛がっていた1人だ。そしてルイの死を受け入れられず、「もっと気をつけていれば」と、自分を責めている。
「そなたのせいではない。そなたはよくルイの世話をしてくれたじゃないか。ルイもそなたが大好きだったよ」
それは事実だ。
ルイは優しい乳母が大好きだった。
乳母もルイを可愛がってくれていた。
本来子どもの世話を任されているのは乳母だ。
忙しくて子どものことにまで手がまわらない母親に変わって可愛がり、いけないことは叱って基本的な躾を施す。
だけど彼女はカールやエリザベートがあれこれ口を出しても嫌がらず、むしろ親子の絆を深めるべきだと積極的に受け入れてくれていた。
それが貴族社会においてどれだけ異質で有難いことか、カールは理解している。
「……図々しいお願いですが、なにか殿下の形見になるものをいただけませんか……?」
乳母の言葉にカールは少し考え、ベビー服をひとつ手渡した。
ルイのキャビネットには刺繍や裁縫の得意なダシェンボード公爵家の女性たちから贈られたたくさんの服が収められている。
だけどこれは乳母が縫った服で、最初に贈られたものだ。
「ありがとうございます。ありがとう、ございます……っ!」
手渡されたベビー服を捧げるように持ち、乳母はその場で泣き崩れた。
ルイが生まれてからは乳母や侍女、侍従など、ルイの為の使用人が雇われている。
だけどルイがいなくなってしまった以上、彼らを雇い続けることはできない。
葬儀が終わった後、彼らの気持ちが落ち着くのを待って紹介状を書き、新しい雇用先を斡旋して徐々に人数を減らしていった。
薔薇の宮を去る時、彼らはカールに何度も頭を下げ、未だ寝付いているエリザベートを案じる言葉を口にしていた。そしてルイとの思い出を1つ2つ語っていく。
ルイは彼らに愛されていたのだと思うとカールの頬を涙が流れた。彼らはルイとルイを慈しむ両親の姿をいつも微笑ましく見守っていたのだ。
「本当に、申し訳ございませんでした……っ!私がもっと厚着をさせていれば、お風邪を召されることもなかったのに……っ」
中でも乳母の嘆きは激しかった。ぽろぽろと涙を流しながら頭を下げる。
彼女もまたルイを可愛がっていた1人だ。そしてルイの死を受け入れられず、「もっと気をつけていれば」と、自分を責めている。
「そなたのせいではない。そなたはよくルイの世話をしてくれたじゃないか。ルイもそなたが大好きだったよ」
それは事実だ。
ルイは優しい乳母が大好きだった。
乳母もルイを可愛がってくれていた。
本来子どもの世話を任されているのは乳母だ。
忙しくて子どものことにまで手がまわらない母親に変わって可愛がり、いけないことは叱って基本的な躾を施す。
だけど彼女はカールやエリザベートがあれこれ口を出しても嫌がらず、むしろ親子の絆を深めるべきだと積極的に受け入れてくれていた。
それが貴族社会においてどれだけ異質で有難いことか、カールは理解している。
「……図々しいお願いですが、なにか殿下の形見になるものをいただけませんか……?」
乳母の言葉にカールは少し考え、ベビー服をひとつ手渡した。
ルイのキャビネットには刺繍や裁縫の得意なダシェンボード公爵家の女性たちから贈られたたくさんの服が収められている。
だけどこれは乳母が縫った服で、最初に贈られたものだ。
「ありがとうございます。ありがとう、ございます……っ!」
手渡されたベビー服を捧げるように持ち、乳母はその場で泣き崩れた。
5
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる