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3章 〜過去 正妃と側妃〜
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ルイザの部屋を飛び出したカールはエリザベートの元へ向かっていた。
これまでエリザベートと会う時はいつでも心が弾んでいた。だけど今日は不安と罪悪感でぐちゃぐちゃだ。
それでもエリザベートに側妃の懐妊を伝えなければならない。
この国では妃が子を産んでも、子が3歳になるまで存在を隠される。
それは3歳までに亡くなる子が多いからで、事故や病気よりも王位を狙う妃やその派閥が関与していることが多かった。
それを思えば側妃の懐妊を王妃に伝えるなんて大間違いだが、エリザベートが子を害するはずがなく、何より他の人の口から伝わるのは避けたかった。
だけどエリザベートの反応が怖い。
エリザベートは喜んでくれるだろう。いや、エリザベートの立場では喜ぶしかないのだ。
哀しみを押し殺し、無理に笑う顔を見たくなかった。
そしてカールの恐れている通りになった。
話を聞いたエリザベートは一瞬泣きそうな顔をして、その後「おめでとうございます」と嬉しそうに微笑んだ。
「おめでとうございます」
自分の声が遠く聞こえた。
カールに打ち明けられてから、エリザベートの世界から音が消えた。
自分は上手く笑えているだろうか?
わからないが、自分の役割だけば忘れずにいられたことを褒めて欲しい。
カールが慌てた様子で何か言っている。
強く引き寄せられて抱き締められた。
気がついたらソファに座ってお茶を飲んでいた。
部屋を出ていたはずの侍女や補佐官たちが戻っていて、いつも通り書類の処理をしていた。
誰とどんな話しをしたのか覚えていない。
だけど誰もおかしな顔をしていないから、普段通りに振る舞えたのだろう。
執務を終える時間になり、カールが迎えに来た。
国王夫妻が相思相愛なのは皆知っているけれど、迎えにまでくるのはあまりないので皆が驚いた顔をする。
補佐官たちに笑顔で挨拶をして、カールのエスコートで薔薇の宮へ戻る。
夕食の間も、食後のお茶を飲んでいる時も、抱き締められて眠りにつくまで、カールが何を言っているのか聞こえなかった。
「おかしゃま、あたまいたい?」
「え?」
「かなしそうなおかおしてる」
ルイの言葉にエリザベートは顔を上げた。
何だかとても辛いことがあった気がするのに思い出せない。
心配そうな顔でエリザベートを覗き込むルイの顔を見ていたらとても幸せな気持ちになって、ほのかに残っていた気がする悲しい気持ちもすっかり消えてしまった。
「大丈夫よ。ルイは優しい子ね」
そう言って小さな体を抱き寄せる。
「えへへ」と笑いながら体を預けてくる重みを感じながらエリザベートは幸福感に満たされていた。
これまでエリザベートと会う時はいつでも心が弾んでいた。だけど今日は不安と罪悪感でぐちゃぐちゃだ。
それでもエリザベートに側妃の懐妊を伝えなければならない。
この国では妃が子を産んでも、子が3歳になるまで存在を隠される。
それは3歳までに亡くなる子が多いからで、事故や病気よりも王位を狙う妃やその派閥が関与していることが多かった。
それを思えば側妃の懐妊を王妃に伝えるなんて大間違いだが、エリザベートが子を害するはずがなく、何より他の人の口から伝わるのは避けたかった。
だけどエリザベートの反応が怖い。
エリザベートは喜んでくれるだろう。いや、エリザベートの立場では喜ぶしかないのだ。
哀しみを押し殺し、無理に笑う顔を見たくなかった。
そしてカールの恐れている通りになった。
話を聞いたエリザベートは一瞬泣きそうな顔をして、その後「おめでとうございます」と嬉しそうに微笑んだ。
「おめでとうございます」
自分の声が遠く聞こえた。
カールに打ち明けられてから、エリザベートの世界から音が消えた。
自分は上手く笑えているだろうか?
わからないが、自分の役割だけば忘れずにいられたことを褒めて欲しい。
カールが慌てた様子で何か言っている。
強く引き寄せられて抱き締められた。
気がついたらソファに座ってお茶を飲んでいた。
部屋を出ていたはずの侍女や補佐官たちが戻っていて、いつも通り書類の処理をしていた。
誰とどんな話しをしたのか覚えていない。
だけど誰もおかしな顔をしていないから、普段通りに振る舞えたのだろう。
執務を終える時間になり、カールが迎えに来た。
国王夫妻が相思相愛なのは皆知っているけれど、迎えにまでくるのはあまりないので皆が驚いた顔をする。
補佐官たちに笑顔で挨拶をして、カールのエスコートで薔薇の宮へ戻る。
夕食の間も、食後のお茶を飲んでいる時も、抱き締められて眠りにつくまで、カールが何を言っているのか聞こえなかった。
「おかしゃま、あたまいたい?」
「え?」
「かなしそうなおかおしてる」
ルイの言葉にエリザベートは顔を上げた。
何だかとても辛いことがあった気がするのに思い出せない。
心配そうな顔でエリザベートを覗き込むルイの顔を見ていたらとても幸せな気持ちになって、ほのかに残っていた気がする悲しい気持ちもすっかり消えてしまった。
「大丈夫よ。ルイは優しい子ね」
そう言って小さな体を抱き寄せる。
「えへへ」と笑いながら体を預けてくる重みを感じながらエリザベートは幸福感に満たされていた。
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