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4章 〜過去 崩れゆく世界〜
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カールを見送ったエリザベートはすぐに寝る準備を始めた。
時間としては夕食を終えたばかりでまだ早いが、どうせ一人なのだ。
カールは早く戻ると言っていたけれど、エリザベートは信じていなかった。生まれたばかりの息子がいて親子水入らずの時間を過ごすのだから早く戻れるわけがない。
出産したばかりなのに一人きりにされたルイザも不満が溜まっているだろう。ルイザを宥めるのに「正妃の機嫌を取らないといけないから仕方ないんだ」なんて言っているかもしれない。
湯浴みをして侍女たちに綺麗に洗ってもらう。
侍女たちもエリザベートが寝る準備を始めたことでホッとしているようだ。もしエリザベートが起きてカールの帰りを待っていたら、遅くなるにつれてどうやって慰めれば良いのかヤキモキしただろう。
エリザベート侍女たちはそんな場面に慣れていない。
時間を掛けて髪を洗い、トリートメントをして全身のマッサージをしてもらう。
「妃殿下はどこもすべすべでお美しいですわ」とは、落ち込んでいるエリザベートの気を引き立たせようとしてくれているのだろう。
絹の夜着を着て誰もいない寝室に入ると、何故かひんやりしているような気がしてベッドの中に潜り込んだ。
あーーーん あーーーん あーーーん
「………ここは?」
赤ん坊の泣き声が聞こえてエリザベートは辺りを見渡した。
すぐに視界が開けて、よく知っている場所だと気づく。
何故分からなかったのか、ここは私室を出たばかりの場所だ。廊下を奥に進めば子ども部屋がある。
あーーーん あーーーん あーーーん
「………ルイちゃん?」
エリザベートは泣き声に導かれるように歩いた。
子ども部屋の扉を開けると、柔らかい色味の部屋の中にベビーベッドが見える。
そこに生まれたばかりの小さな赤ん坊が寝かされていた。
あーーーん あーーーん あーーーん
「あらあら。ルイちゃん、どうしたの?」
ルイは自分の居場所を主張するように大きな泣き声を上げている。
まるで「ぼくはここにいるよ!」「おかしゃま、ぼくをみつけて!」と言っているようだ。
エリザベートがベビーベッドに近づき、ルイを抱き上げると今まで泣いていたのが嘘のようにピタッと泣き止んだ。
「あっ!あーー、あっ!」
小さな手を伸ばし、一生懸命エリザベートの服を掴もうとする。
見つけてもらえて喜んでいるのだろう。
「ごめんね。一人で淋しかったのね。お母様がここにいるわ。もう大丈夫よ」
エリザベートが優しく笑いかける。
ルイも嬉しそうに笑っていた。
時間としては夕食を終えたばかりでまだ早いが、どうせ一人なのだ。
カールは早く戻ると言っていたけれど、エリザベートは信じていなかった。生まれたばかりの息子がいて親子水入らずの時間を過ごすのだから早く戻れるわけがない。
出産したばかりなのに一人きりにされたルイザも不満が溜まっているだろう。ルイザを宥めるのに「正妃の機嫌を取らないといけないから仕方ないんだ」なんて言っているかもしれない。
湯浴みをして侍女たちに綺麗に洗ってもらう。
侍女たちもエリザベートが寝る準備を始めたことでホッとしているようだ。もしエリザベートが起きてカールの帰りを待っていたら、遅くなるにつれてどうやって慰めれば良いのかヤキモキしただろう。
エリザベート侍女たちはそんな場面に慣れていない。
時間を掛けて髪を洗い、トリートメントをして全身のマッサージをしてもらう。
「妃殿下はどこもすべすべでお美しいですわ」とは、落ち込んでいるエリザベートの気を引き立たせようとしてくれているのだろう。
絹の夜着を着て誰もいない寝室に入ると、何故かひんやりしているような気がしてベッドの中に潜り込んだ。
あーーーん あーーーん あーーーん
「………ここは?」
赤ん坊の泣き声が聞こえてエリザベートは辺りを見渡した。
すぐに視界が開けて、よく知っている場所だと気づく。
何故分からなかったのか、ここは私室を出たばかりの場所だ。廊下を奥に進めば子ども部屋がある。
あーーーん あーーーん あーーーん
「………ルイちゃん?」
エリザベートは泣き声に導かれるように歩いた。
子ども部屋の扉を開けると、柔らかい色味の部屋の中にベビーベッドが見える。
そこに生まれたばかりの小さな赤ん坊が寝かされていた。
あーーーん あーーーん あーーーん
「あらあら。ルイちゃん、どうしたの?」
ルイは自分の居場所を主張するように大きな泣き声を上げている。
まるで「ぼくはここにいるよ!」「おかしゃま、ぼくをみつけて!」と言っているようだ。
エリザベートがベビーベッドに近づき、ルイを抱き上げると今まで泣いていたのが嘘のようにピタッと泣き止んだ。
「あっ!あーー、あっ!」
小さな手を伸ばし、一生懸命エリザベートの服を掴もうとする。
見つけてもらえて喜んでいるのだろう。
「ごめんね。一人で淋しかったのね。お母様がここにいるわ。もう大丈夫よ」
エリザベートが優しく笑いかける。
ルイも嬉しそうに笑っていた。
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