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4章 〜過去 崩れゆく世界〜
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カールはこの時から眠るのが怖くなった。
寝室があるのは三階だ。それなのにエリザベートが見つかったのは一階の回廊である。夢の中に意識を囚われたエリザベートはどこまで行ってしまうかわからない。
それからカールは深く眠らないようにした。
気を張り詰めているのでエリザベートが起きるとカールも目が覚める。
夜中に起きだした時は急いで抱き留め、部屋から出さないように気を配った。
だけどエリザベートも毎日夜中に抜け出そうとするわけではない。
ルイの夢を見て、夢だと理解して絶望に打ちひしがれる時もある。目を覚ました後に夢と現の区別がつかず、探しに行こうとすることもある。そして夢の中に意識を残したまま体を動かし、寝室を抜け出そうとする時もあるのだ。
常に気を張り、気をつけているカールだったが、エリザベートが抜け出すのを完全に防ぐことはできなかった。
カールも人間なので疲れていると深く眠り込んでしまうことがある。特に何も起こらない日が続いているとつい気が抜けてしまうらしい。
外から聞こえる騒がしい声に目を覚ますと隣にエリザベートがいないことがあった。
カールが目を覚ましてから夜番の使用人総出で探しまわることもあった。
そんなことが何度も起きると社交界にも異変が伝わっていくものだ。
「最近王妃殿下のお加減が悪いらしい」
「陛下が側妃を迎えられたから……。お労しいこと」
彼らはルイザが王子を産んだことを知らなくてもエリザベートが晩餐会の日に薬を飲んだことを知っている。
国王夫妻に憧れている若い世代は、世継のために仕方ないとわかっていても側妃を認めるしかなかったエリザベートに深い同情を寄せていた。彼らの子はエリザベートが小児医療に力を入れたことで開発された薬の恩恵を受けているのだ。
噂は当然ダシェンボード公爵家にも届いた。
前公爵夫人とアンヌ、ゾフィーは以前より精力的に薔薇の宮へ通ってくる。
彼女たちはエリザベートが薬を飲んだ後、意識のないエリザベートに付き添っていたのだ。あの時カールと共通した恐怖は忘れられない。
前公爵やリチャード、アルバートも仕事の合間を縫ってエリザベートの様子を見に来るようになっていた。
そうする内にカールは気がついた。
いつ夜中に起き出すのかわからないエリザベートだったが、カールが百合の宮へ行った時に症状が出やすい気がする。
精神的負担の原因を突きつけられた気がしてカールは胸が痛くなった。
いるはずのない赤子の泣き声を聞くのもルイを探して歩きまわるののも、子どもを求める本能なのだろうか。
百合の宮へ行くとエリザベートの症状が出やすくなると気づいたカールはまた百合の宮へ行かなくなった。
侍医やマクレガー伯爵夫人から話合いがしたいと手紙が来ても、手紙で指示を返すだけだ。
それでも絶対に行かなければならない時もある。
その日はギデオンの洗礼式が行われる日だった。
百合の宮へ行ったカールはそこでルイザたちと合流して王宮内にある教会へ向かう。馬車にはカールとルイザ、ギデオンを抱いたマクレガー伯爵夫人が同乗した。
百合の宮は奥地にあるので教会まで時間が掛かる。
洗礼式が終わった後も百合の宮まで一緒に戻って祝いの食事をした。
鳳凰の宮で湯浴みをしたカールが薔薇の宮へ帰り着いたのは夜遅くなってからだ。
エリザベートの隣で横になったカールはそれから記憶がない。祝い酒を飲んでいたのですっかり寝入ってしまったのだ。
寝室があるのは三階だ。それなのにエリザベートが見つかったのは一階の回廊である。夢の中に意識を囚われたエリザベートはどこまで行ってしまうかわからない。
それからカールは深く眠らないようにした。
気を張り詰めているのでエリザベートが起きるとカールも目が覚める。
夜中に起きだした時は急いで抱き留め、部屋から出さないように気を配った。
だけどエリザベートも毎日夜中に抜け出そうとするわけではない。
ルイの夢を見て、夢だと理解して絶望に打ちひしがれる時もある。目を覚ました後に夢と現の区別がつかず、探しに行こうとすることもある。そして夢の中に意識を残したまま体を動かし、寝室を抜け出そうとする時もあるのだ。
常に気を張り、気をつけているカールだったが、エリザベートが抜け出すのを完全に防ぐことはできなかった。
カールも人間なので疲れていると深く眠り込んでしまうことがある。特に何も起こらない日が続いているとつい気が抜けてしまうらしい。
外から聞こえる騒がしい声に目を覚ますと隣にエリザベートがいないことがあった。
カールが目を覚ましてから夜番の使用人総出で探しまわることもあった。
そんなことが何度も起きると社交界にも異変が伝わっていくものだ。
「最近王妃殿下のお加減が悪いらしい」
「陛下が側妃を迎えられたから……。お労しいこと」
彼らはルイザが王子を産んだことを知らなくてもエリザベートが晩餐会の日に薬を飲んだことを知っている。
国王夫妻に憧れている若い世代は、世継のために仕方ないとわかっていても側妃を認めるしかなかったエリザベートに深い同情を寄せていた。彼らの子はエリザベートが小児医療に力を入れたことで開発された薬の恩恵を受けているのだ。
噂は当然ダシェンボード公爵家にも届いた。
前公爵夫人とアンヌ、ゾフィーは以前より精力的に薔薇の宮へ通ってくる。
彼女たちはエリザベートが薬を飲んだ後、意識のないエリザベートに付き添っていたのだ。あの時カールと共通した恐怖は忘れられない。
前公爵やリチャード、アルバートも仕事の合間を縫ってエリザベートの様子を見に来るようになっていた。
そうする内にカールは気がついた。
いつ夜中に起き出すのかわからないエリザベートだったが、カールが百合の宮へ行った時に症状が出やすい気がする。
精神的負担の原因を突きつけられた気がしてカールは胸が痛くなった。
いるはずのない赤子の泣き声を聞くのもルイを探して歩きまわるののも、子どもを求める本能なのだろうか。
百合の宮へ行くとエリザベートの症状が出やすくなると気づいたカールはまた百合の宮へ行かなくなった。
侍医やマクレガー伯爵夫人から話合いがしたいと手紙が来ても、手紙で指示を返すだけだ。
それでも絶対に行かなければならない時もある。
その日はギデオンの洗礼式が行われる日だった。
百合の宮へ行ったカールはそこでルイザたちと合流して王宮内にある教会へ向かう。馬車にはカールとルイザ、ギデオンを抱いたマクレガー伯爵夫人が同乗した。
百合の宮は奥地にあるので教会まで時間が掛かる。
洗礼式が終わった後も百合の宮まで一緒に戻って祝いの食事をした。
鳳凰の宮で湯浴みをしたカールが薔薇の宮へ帰り着いたのは夜遅くなってからだ。
エリザベートの隣で横になったカールはそれから記憶がない。祝い酒を飲んでいたのですっかり寝入ってしまったのだ。
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