孤独な悪妻の自殺未遂から、すべてが始まった~その責任は私にではなく「君を愛するつもりはない」と宣言したあなたにあるのでは?~

ぽんた

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「きみにはほんとうに失望した」

 彼は、わたしを見おろしわざとらしく溜息をついた。

「おれたちの間に愛など存在しないことは、最初からわかっているはずだ。はじめに契約を交わしただろう? おれは、きみを愛するつもりはない。だから、きみもおれを愛さなくていい。これはあくまでも期間限定で夫婦のふりをするのであって、ほんとうの夫婦や家族ではない、と。おたがい好き勝手をしよう?だれと付き合い、なにをしようと干渉せず、暗黙の了解的に興味や関心を持たないでおこう、と。きみも了承しただろう? それなのに、きみはおれが帰ってくるたびに無言の圧をかけ、責めた。それだけではない。おれの気を惹こうとした。それらが、どれだけ精神的に負担をかけたことか」

 彼は、またおおきな溜息をついた。

 彼は、どこからどう見ても美貌である。美貌すぎるから見惚れてしまい、彼の長い台詞のほとんどが耳に入ってこない?

「しまいにはこれだ。バルコニーから飛び降り自殺? おれの気を惹くためにしても、体をはりすぎだろう? しかも、知らせを受けて戻ってみれば、たいしたことはなかった。嘘バレバレの自殺未遂ときたものだ。いくら契約を交わした期間限定の妻であろうと、このような不祥事はわが家の恥でしかない。とにかく、あらためて宣言する。おれはきみを愛するつもりはない。きみがどんな手段を用い、無茶苦茶なことや驚愕に値することをしでかそうともだ。これからさき、愛するつもりもなければ興味を抱くつもりもない。だから、きみも割り切って契約期間終了までワガママ放題、好き勝手な毎日をすごすのだ」

 宣言し終えた彼は、肩で息をしている。

 よほど頭に来ているのだ。

 よほど熱くなっているのだ。

 そんな一生懸命な彼を見ながら、どうにも我慢がならない。

 彼にどうしても尋ねたいことがある。

 だから尋ねることにした。

「あの、そういうあなたはだれでしょうか?」

 そのように。

 彼がだれなのか、さっぱりわからないのである。

 というか、頭がボーッとしていてこのシチュエーションじたいよくわかっていない。

 さらには、わたし自身のことももよくわからない。

 彼をこれほど怒らせているわたしって、彼にとってなんなのかしら?

 というか、わたしっていったいだれ?
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