推しアイドルに認知されてました!

おーか

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5.推しに認知されてました。

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俺は今普通ではありえない状況に置かれていると思う。推しの握手会に来たら、何故か話したいと言われ、楽屋に連れてこられた。これって現実…?

初めのうちは、俺も推しに会えた嬉しさで気が動転していたのもあり、逆に落ち着いていたが、状況を理解すればするほど、そわそわしてきた。だからといって出来る事もないので、ただ只管誰か来るのを待っていた。

楽屋ってテレビとかで見たりするけどこんな感じなんだなー…とか、本当にお菓子とかお弁当置いてあるんだなぁとか、そんな事しか考えられない。今の状況ちゃんと考え始めたら、駄目になりそうだし。

少し心の中で何かの間違いかなー、とも思っていたりする。

楽屋の外が少し騒がしくなった。握手会が終わったのだろうか?藍月くんが戻ってくるのか?ドキドキと脈打つ心臓を落ち着けるため、深呼吸を数回繰り返す。

そしてついにガチャリと、楽屋のドアが開かれる。現れたのは予想通りというか、なんというか、藍月くんだった。ただ意外なことに走ってきたかのように息を切らしていた。

「はっ…はぁ…お待たせしました!もしかして帰っちゃってたらどうしようってなんだか焦っちゃいました。居てくれて良かったー!」

「あ、えと…握手会お疲れ様です。…それで、そのーお話というのは…」

「あ!そう!ずっと応援してくれてるシバさんですよね!」

シバというのは名字から取っただけの、俺のSNSアカウントの名前だった。それが推しの口から出てくるとは思いもよらず、思わずポカンとして暫し固まる。思考停止状態だった。

「………え?」

「あれ?違いましたか?絶対そうだと思ったんですが…」

「あ、いえ違わないです、けどまさか覚えて頂いてるとは…」

「それは覚えてますよ!だって初ライブのときからずっと来てくださって!その次のライブにも、その次にも!もうすっごい嬉しかったんです!」

興奮したように話し始める藍月くん。その勢いに押されるままに、話を聞く。俺がバイトで凹んでいた時に見たアレがまさか記念すべき初ライブだったとは。

「あ、最初に見たとき、あれ初ライブ…」

「はい!そうなんです!見てくれたの嬉しくてつい声をかけてしまって…もう来てくれないかなーと思ってたら来てくれて!」

このまま、話させたら止まらなくなりそうだったので、取り敢えず、俺への要件を聞いてみる。

「そうですね、ファンになったので…それで、要件はなんでしょう?」

内心の動揺は意外と表に出ないタイプだったらしい。この状況で知らなかった自分の一面を知ることになるとは…。なかなか勢いが凄いんだけど、俺からしたら推しが語りかけてくる、という夢のような…状況…ではある。けれどそれ以上に心臓がヤバイので勘弁してほしい。

まさか有名人に呼び出されて、本当に話したいだけなんてことはないだろう。待って待って…そうだよね!?普通呼ばれたりしないよね?ってことはもしかして俺のしている推し活が、何か迷惑になってしまったのだろうか?その厳重注意とか、出禁とかなのだろうか?

「要件、要件は本当にお話ししたくて…それだけじゃ駄目でしたか…?」

安定のしょぼん顔だ。その顔に俺が弱いとわかっててやっているのだろうか…。尊い…。俺の推しが今日も天使。幸せだな。もしかして、俺今日で運を使い果たしたのかな?

あまりの顔面偏差値の高さに俺が押し黙っていると、何を勘違いしたのか、藍月くんの顔が更に歪んでいく。泣く一歩手前でギリギリ耐えているといった表情だ。

「すみません、俺はいちファンなので、こういったことは良くないのかな、と。」

「そうですよね、迷惑でしたよね…。」

泣きそうなのを耐えたまま、無理矢理に笑う。違う!そんな顔をさせたい訳ではない。

「いえ!迷惑なわけ無いです。ただ俺だけ特別扱いされるのは、他のファンの方々に申し訳ないので」

「…それでも、俺の中でシバさんは特別です。ずっと俺の支えでした。だからその感謝を伝えたくて。あと、良ければ俺と友達になってくれたりしないかなって…。駄目ですか?」

「わかりました…。」

推しにそう言われて断るという選択肢は俺の中にはなかった。というか、推しの言うこと成すこと全肯定したくなる、それがオタクというものだろう。逆らえるわけない。あーこれ、駄目なオタクだ。

「ほんとですか!!やっったーーー!!!じゃあ連絡先!交換しましょ!」

「有名人なんですから、そんなに不用意に…」

そう注意する頃には、登録が完了していた。なんという早業…驚愕のスピードで、推しの連絡先が登録されてしまった。メッセージアプリのフレンドにもなっていて、その手早さに驚嘆する。

「えへへ、嬉しいな。また直ぐ連絡しますね!ご飯行きましょ!美味しいところ調べるので、好きな食べ物教えてください!」

にっこにこの藍月くん、可愛い…。いや、今はそうじゃなくて…いやでも可愛過ぎないか?やっぱり天使…

はっ!ところで、俺自分のこと何も話してないな。流石に失礼すぎたな。取り敢えず、自己紹介か。

「わかりました…ところで今更ですが、司馬咲 臨弥(しばさき りんや)です。」

「しばさきりんやさん!うーん…リンさんって呼んでもいいですか?」

「うぐっ…どうぞ。」

失礼だろうと、名乗ったものの、推しに名前を呼ばれる破壊力たるや…恐ろしいものがあるな…。
斯くして推しとの間に、アイドルとファン以上の繋がりが形成されていた…。こんな筈では…






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