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8.推しの手料理です。
しおりを挟む藍月くんは、自分の持ってきていた荷物から材料やエプロンを取り出す。
料理をする為につけたエプロンは黒で、イケメン度合いが増している…。推しのオフ感が堪らない。こんな風に近くで見られることが嬉しい。
雑誌の1ページを切り抜いてきたかのように、動いていてもどの瞬間を切り抜いてもずっと完璧でかっこいい…。流石に顔面が強くないか…尊い。
「藍月くん、とりあえず一通り揃えてみたんだけど、手伝う事とか必要なものとかあったら言ってね。」
「はい!そういえば敬語なしでいいですよ?」
「あ、えと…緊張しちゃって…」
「そういうものですか?でも、俺もちょっと緊張してます、リンさんのことずっと見てたから。」
「!?」
ずっと見ていた?
そういえば、前話したときにも、俺のSNSの名前も把握されていたし、初めて見たライブのときの話もしていた。
つまり、最初に見ていたときから今までずっと応援していたのを知られていて、それを俺、一個人としてちゃんと認識されている。こ、これは認知されている、と言うやつだな?
俺が応援してきたのがちゃんと伝わっているのがうれしい。
「最初から応援してくれてて、ずっと見てくれてるの知ってましたよ。ありがとうございます!」
「そっか、俺の方こそいつもありがとう。alfalfaの活動見てるといつも元気をもらえて…」
「えへへ、そう言ってもらえて嬉しいです!」
そんな話をしている間にも、テキパキと料理が作られていく。結局、俺が包丁を持つのを見て即座に、置くように言われたため、手伝う事はできなかった。そんなにヤバかったかな?
話しながらも、動く手が止まることはない。ハンバーグの具材を混ぜ終わって、形成をしていく。リズミカルにぽんぽんと手で纏められていく。
フライパンでハンバーグを焼く隣では、鍋でスープが作られる。どちらもいい匂いで食欲をそそられる。
「リンさん、お皿出してもらっていいですか?」
「あ、はい!」
「あ、そんなに慌てたら危ないですよ!」
注意されたにも関わらず、足がもつれ転びそうになる。ぎゅっと目をつぶって衝撃に備える。
あれ?痛くないや。
目を開ければ、目の前には藍月くんの顔。慌てて、離れようと動くとまた後ろに倒れ込みそうになり、藍月くんが腕を掴んで支えてくれる。
「…大丈夫ですか?怪我とか」
「へ、平気、ごめん。」
「謝ることないです。俺はありがとうがいいな、リンさん」
「うん、ありがとう藍月くん、藍月くんも怪我してない?」
「平気ですよ。リンさん軽いし!」
「そ、そっか良かったです。」
確かに俺は背が低いし、体型もひょろいので軽い。良かった…怪我させなくて…。焦らずゆっくり動こう。
すーはーすーはー…距離近くなりすぎて心臓バクバクしてる。至近距離の推しの破壊力えぐい。近くで見ても肌綺麗すぎだし、かっこいいし。
気を取り直して、皿を棚から取り出して藍月くんに渡す。盛り付けられた料理はとてもオシャレな感じで、美味しそう。
「さ!暖かいうちに食べましょ!」
「あ、あの写真撮ってもいいかな?記念に…あ、もちろん料理だけしか撮らないよ!」
「どうぞ!俺と撮ってもいいですよ?」
「だ、だめだよ!じゃあ撮らせてもらうね」
スマホを持ってきて、パシャパシャと料理を撮る。凄いおしゃれな写真!センスを感じられる盛り付けだもんな。
「ありがとう。じゃあいただきます!」
「はい、どうぞ!俺もいただきます!」
パクりと一口食べる。口の中に広がる肉汁と、和風の味付けが、普通にお店で食べるよりも美味しい。
がっつくように二口、三口と食べ進める。
視線を感じて、顔を上げると藍月くんがじっとこちらを見ていた。口の中のものをゴクリと飲み込む。
「美味しいよ。すっごい美味しい!」
「はぁ~、良かったー!ちょっと不安で」
「こんなに美味しいのに!お店より美味しいよ!」
「えへへ、頑張って練習してきたので」
「そうなの?」
「そうですよ!だってリンさんに美味しいって言ってもらいたかったですもん。」
普段はカッコイイとかキラキラしてるとか思うけど、今日はなんか可愛いな。藍月くんわざわざ俺のために練習してくれたんだな。
「ありがとう!嬉しいな。」
「俺も良かったです!また作らせてくださいね!」
「いいの?俺としては嬉しいけど」
「はい!もちろん!」
_______________
リンさんの胃袋、俺に掴ませて欲しい。俺が毎日でも作るから。もっと俺のこと好きになってくれたらいいな。
そんな俺の考えなんて知らないリンさんは、俺のご飯を食べてニコニコしてる。可愛いな。もっと料理頑張ろ。
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