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副総長×平凡7
しおりを挟む朝起きて、一人で登校する。どうやら秋夜さんは日差しに注意する必要があるらしく、あとで行くと言っていた。
ガラリと教室のドアを開けて、教室に入る。
「あ、藍さん、おはようございます。あのあと大丈夫でしたか?」
「ん、はよ。確か如月だっけ?べつに大丈夫だったぞ…いや、茜は風邪引いたけどな。今日も休んでる。アイツ身体弱ぇから」
「そうなんですね。申し訳ないです…あの、御見舞とか、行っても…?」
「俺に聞かれても知らねぇけど、俺は放課後一応行くつもり」
「一緒してもいいですかね?」
「ん、茜にも一応連絡入れとくわ。」
「はい!よろしくお願いします。」
「おう」
そのあと、教室に入ってきた友達の一人、というかたった一人の友達の鳴海が声をかけてきた。
「おはよー!かぐちゃん!今日ね今日ね、新しい情報が入ってきて!なんと、GRACEの副総長の佐久間さんにお気に入りが出来たらしいんだよ!」
「おはよ、鳴海。…GRACE…佐久間さん…?」
聞き覚えがある気がして、繰り返す。
……秋夜さんって佐久間だったような…。もしかして、鳴海が言ってるのって俺のこと…だよな…。隠しとこ。絶対うるさい。
「お!興味ある?珍しいね!」
「いや、ないない。ただ聞き覚えがあっただけ。」
「えぇ!せっかくたくさん聞かせた甲斐あって興味持ってくれたのかと思ったのに…。ざーんねん…」
「ずっと興味ないって言ってるんだけどな…。」
「あ、そうそう、さっきの続きなんだけど、どうやら溜まり場に佐久間さんが連れてきた子がいるんだって!初めてのことだったからお気に入りが出来たんだって言われてるの!誰なんだろ?気になるよね!」
まじか…こんなに広まるの早いものか?いや、鳴海の耳が早いだけ…だよな…?
その後はあまり覚えていないが、適当に聞き流して、時間になったので授業を受けた。
お昼になって、一緒に食べようと鳴海が、俺の方によってくる。その時、教室のドアが開いて、その人に気づいた不良たちが立ち上がって頭を下げる。教室のあちこちから、お疲れ様です。という声が響く。
そんな声を受けても平然とこちらに歩いてくる秋夜さん。目立ってますって!!
「香夜、行くぞ。」
「はい。あ、鳴海ごめん!一緒に食べれないや。」
「え…?ええっ!!ちょっとまって!あとでちゃんと聞くからね!」
秋夜さんに連れられて温室に向かう。初めて入ったけど、暖かくて心地いい場所だな。
「どうぞ!お弁当です。」
「ん、ありがと」
秋夜さんがお昼をまともに食べていないことを聞き出した俺は、服やホテルで奢ってもらったことのお礼として、お弁当を作ることしたのだ。その約束があったので、秋夜さんが教室まで迎えに来てくれたらしい。来ること知らなかったけど。
「香夜、今日帰りは?」
「えっと、今日は茜さんの御見舞に行こうかと思ってて」
「茜?なんで?」
「風邪ひいてるらしくて、絶対俺のせいだし…看病もかねて?」
「ふーん…行かなくていいよ。」
「…駄目です!行きます!」
「はぁ…わかったけど、ちゃんと終わったら俺の家な?」
「了解です。」
「一人で行くのか?」
「いえ、藍さんと」
「なら藍に言いつけとく。」
「ええ!そんなことしなくてもちゃんと行きますから!」
「駄目、危ないかもしれないしな。」
「危ない?何かあるんですか?」
「ちょっとGRACEが揉めてるからな。」
「それでなんで俺が危ないんですか?」
「俺のお気に入りだから。」
「お気に入り?秋夜さんの?」
「そー、相手に嗅ぎつけられてそうだし。一人になんなよ。」
「…はい…わかりました。」
詳しくは教えてくれなかったけど、秋夜さんが心配してくれてるのがわかったので気をつけることにする。
秋夜さんのお気に入りって言ってもらえるの嬉しけど、見た目だけ見るとホントに釣り合わないや。秋夜さんイケメンすぎるからな。それに比べて俺は普通だし。
俺の何を見て気に入ってくれたのかわからないけど、側に置いてくれるなら、側に居させてもらおう。
秋夜さんの側は、優しくされて甘やかされて心地いい。ここから離れたくないくらい。秋夜さんに好きな人とか彼女が出来たらもう、隣にはいられないよな。
少し沈んだ気持ちになる。けれど、だからこそ側にいられる今を大切にしないといけないと思う。
「香夜?どした?」
「え?あ、大丈夫です…。ただ秋夜さんって好きな人とかいないのかなって思って。」
「好きな人?今好きなのは香夜。」
端的に好きだと述べられたから、一瞬体が固まるが、呼ばれたのは俺の名前。秋夜さんに好かれていることに安堵する。
けれど胸が痛い。俺は秋夜さんが好きなんだと思う。たった3日側に居ただけ…そんな短い間に好きになってしまうほどの魅力を持っている人だ。俺みたいな平凡には釣り合わない。わかってても惹かれるのを止められない。
「香夜?なんで悲しそうな顔すんの?俺に好きって言われんの嫌だった?」
「嬉しいです…。めちゃくちゃ嬉しい筈なんです…けど…多分俺のほしい好きじゃないんです。」
「……その好き、あげたらさ
ずっと…ずっと側にいてくれんの?
ずっと側にいてくれるならあげるよ。香夜になら、あげる。」
腕を掴まれて逃げられないように押し倒されて、床に縫い止められる。そのまま、秋夜さんが上に覆い被さってきて、あまりにも近くなった距離に、胸が跳ねる。
「秋夜さんは…それって本当に好き…なんですか?」
「好き…だよ?ちゃんと、愛してあげる。」
「わかんないです…。でも秋夜さんが側に置いてくれるなら、側にいます。」
「……わかった…側にいて。香夜が側にいてくれるならそれでいいから。」
「はい…」
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴り響いて、逃げるように温室をあとにした。秋夜さんは何を考えて、あんなことを言ったんだろう。ぐるぐると思考が行ったり来たりするだけで、解決の目処の立たない問題が、頭の中を占拠する。
午後の授業は心ここにあらずのまま受け、事情を聞こうとする鳴海を適当にあしらって、藍さんのところに向かう。秋夜さんと帰り一緒じゃなくてよかった。少し考える時間と、心を整理する時間が欲しかった。
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