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しおりを挟む訓練場についた。そして周りには人がパラパラといる。まだ体格の出来上がっていない男の子たちだ。その中にはメルティー公爵子息の姿も見えて、さり気無く距離を取った。メルティー公爵子息は、高位貴族令息たちといるみたいだ。
「あら、私以外に女の子が居るのね。初めまして、かしら?」
壁際に居た私に声をかけてくれたのは、剣術の授業を取っている辺境伯令嬢様だ。美しい金糸が腰になびいている。この美しさに加えて、強さも兼ね備えた王太子妃候補ともされる令嬢だ。
「はい、お初にお目にかかります、ポーティス伯爵家が次女、ウェンディと申します。」
「私はシェミー・ハリーツよ。ハリーツ辺境伯家の長女よ。丁寧な挨拶ありがとう。ウェンディと呼んでもいいかしら?」
「はい、ハリーツ辺境伯令嬢様」
「あら、シェミーでいいわよ。ウェンディ」
「シェミー様、よろしくお願いします。」
「ええ、よろしく。それにしても私以外の令嬢がこの授業を受けているとは思わなかったわ。なぜこの授業を?令嬢にとっては傷を受ける可能性のある授業なんて、受けたくないものではなくて?」
「私、身体を動かすのが好きなんです。」
「そうなのね、仲間がいて嬉しいわ。」
「でも私剣術の経験は無いんです…だから正直ついていけるか…。」
「ふふっそうなのね。私で力になれることがあれば、力になるから気軽に声をかけて頂戴ね。」
「ありがとうございます!」
美しく儚げな印象を与える容姿だが、剣術に関しては男子に引けを取らないそうだから、人は見た目によらないわよね。それでいて、私のことを気遣って下さるこの優しさ…。女神みたいな人だわ。惹かれる人が多いのも納得ね。
それからも授業を受けている最中、アドバイスをくれたり、ペアを組んでくれたり、本当に良くしてもらった。この方がいて下さるなら、剣術の授業は安心ね。とはいえ、頼りきりも良くないから頑張らなくちゃ。
「ウェンディは筋がいいと思うわ!身体を動かすのが好きというのは本当なのね。」
「はい、田舎暮らしでしたから。やんちゃをしてよく怒られたんです。」
「ふふっ実を言うと私もよ。けどナイショにしておいてね?お母様に怒られてしまうから。」
「ふふっはい、誰にも言いません。」
「ありがとう。ウェンディ、それじゃあまた次の剣術の時にでも話しましょうね。」
「はい、また。」
シェミー様はAクラスらしいので、必修科目では同じ授業は無いから剣術の時くらいしか会わないかもしれないわ。普通は関わることの出来ない立場の方に目を掛けてもらえたのは嬉しいことね。
図書室にいたレイラと合流して、次の授業へ向かう。
「ウェンディ様、お疲れ様です。どうでしたか?剣術は」
「楽しかったわ。新しいお友達…と言うにはおこがましいかもしれないけれど…とにかく良くしてくださる方がいてね!」
「良かったですね。それにしても流石ウェンディ様ですね。誰とでも仲良くなれそうです。」
「ふふっそれは言いすぎよ。でもレイラと仲良くなれたのは本当に良かったわ。私、人には恵まれてるのよ!」
「それはウェンディ様のお人柄が良いからですよ。」
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