憧れのお嬢さまがうちにエロゲーしに来てますが、あくまで僕らは友達です

子狐モフる

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04 天道さんはエロゲーがしたい 1

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「え……えっとですね。あらためて言いますけど、勉強の秘訣を知りたくて遠野くんの後をつけてました。それに関してはごめんなさい」

 あの後、ひとまず近くの喫茶店に入った。
 喫茶店の一番奥にあるテーブル席に着くと、天道さんはあらためてそう切り出し頭を下げる。

「う、うん。それはこの際もういいんだけど……その、一目惚れっていうのは……」
「……あのお店で遠野くんが手に取った棚を見て、そこに描かれてた……あの、えっと、白くて狐みたいな耳が生えた女の子……」
「シロのことかな?」
「シロちゃんって言うんですか? と、とにかくその子を一目見て……心を奪われちゃったというか、なんというか……」

 天道さんは恥じ入ったようにうつむきながらそう話した。
 顔が真っ赤で見事なまでにおどおどしている。普段の凜とした雰囲気が欠片もない。

「天道さんってこういうの好きだったんだ……」
「ち、違うんです! 私の家ってしつけとかに厳しくて今までそういう……サブカルチャーっていうんです? とにかくそういうのに触れたことがなくて! でもさっき入ったお店はそういうのに溢れててカルチャーショックといいますか……、なんだか違う世界に来たみたいでドキドキして……」

 わたわたとそう説明する天道さんがなんだか可愛らしくて、思わず笑みがこぼれた。

「や、やっぱり変ですよね……女の子がこういうの好きなんて……」
「いやそんなことないよ。昔は確かに珍しかったらしいけど、最近は女子で萌えアニメとか好きって子も普通にいるし、実際クラスでそういう話してる子達もいるよ?」
「そうなんですか? すいません、私そういうのには疎くて……」

 天道さんはどこかホッとしたように言った。
 まあイメージに合わないというか……天道さんはそういうのはむしろ毛嫌いしそうなタイプだと思っていたんでそこは意外だったけど。

「そ、それでですね! 遠野くんの後をつけて入ったお店でいろいろな可愛い女の子を見たんですけど、その中でもシロちゃんは特別で! 一目見た瞬間からもう頭から離れなくて、胸がキュンキュンして……」
「……あらためて確認するけど、この子のことだよね……?」

 流石に喫茶店でエロゲーを出すのは恥ずかしいので、周りの視線を気にしつつ『ブレあふ』を買い物袋から覗かせる。
 すると天道さんはコクコク頷いた。目がうっとりしていてなんかもうメロメロって感じだ。

 ――最初はからかわれているとか、自分に近づいて勉強の秘訣を探ろうとしているだとか、そんな可能性も考えていたけどどうも違う気がする。

 一目見た瞬間に心を奪われる感覚……それは僕にも覚えがあるものだった。

 思えば自分もオタクに目覚めたのは麦わら帽子に白いワンピースのとある美少女に一目惚れしたのがきっかけで、ネットで調べている内に同人誌なるものの存在を知ってそこからどっぷりと……。


 閑話休題。


 あらためて周りを確認。意を決して『ブレあふ』を取り出し天道さんに手渡す。
 天道さんは子供のような表情でそれを受け取り、うっとりした表情でパッケージに描かれたシロに見惚れていた。

「あの! このゲーム私もやってみたいです!」
「えーっと。一応言っとくけど……それ、エロゲーだよ?」
「……えろげー?」

 もしかしてその辺ちゃんとわかってなかったのだろうか? ものすごく気恥ずかしいが説明しないわけにもいかない。

「裏面……見てみて」
「裏面? ……ひゅい!?」

 天道さんは変な声を上げた。顔を真っ赤にしながらあわててゲームを隠してきょろきょろする。

 裏面に載っているのは……ある意味エロゲーの目玉とも言うべき、十八禁なシーンだ。パッケージに可愛らしく描かれていたシロが裏面ではあんなことやこんなことになっている。

「そ、そうでした……。これ、エッチなやつが売ってるところにあったやつだから、当然……」
「うん。その……見ての通り、このゲームはいやらしいやつだよ。そういうのに抵抗があるなら……」
「……それってつまり……こんなかわいいシロちゃんが、えっちなこと……しちゃうんですよね……? こんなかわいい子が……シロちゃんが……」

 ――ん?

 天道さんはあらためて、裏面に描かれたエッチなシーンを見る。
 やっぱり恥ずかしいのか頬が赤いけど、忌避しているようには見えない。むしろ、なんか、目がとろんとして息が荒くなってるような気がするのは気のせいだろうか?

「あの! あの! これってどうすればできるんですか!?」
「どうすればって……そりゃあ買ってソフトをパソコンに入れればできるけど……」
「あ……私のパソコン、いろいろ制限がかかってる上に監視されてて、家でやるのはちょっと……無理です」

 制限に監視。やっぱり天道さんほどのお嬢さまとなるとそういうのも厳しいのだろう。

「そっか……。あともう一個、今回僕が買ったのは後日談とかがメインのファンディスクってやつで、本編やらないと内容ちゃんとわからないよ?」
「その本編っていうのはどこで買えます?」
「少し前のやつだし人気作だからお店だと見つけるの大変かも……。ダウンロード販売してるのを買うのが一番確実だけど、ネット制限されてるとなるとちょっと……」
「そうですか……」

 天道さんはしょんぼりと肩を落とした。目にうっすら涙さえ浮かべている。

(そんなにやりたかったのか……)

 ――少し同情した。
 一目で心を奪われるようなキャラクターと出会えたのに、それを目の前にしてお預けを食らう苦しさはよくわかる。

 しかし家のパソコンが監視されていてネットも制限されているとなるとほとんど無理ゲーだ。

「僕の家のパソコンなら、ブレファンのデータとかおまけデータとかもいろいろ入ってるんだけどなぁ」

 ――まるで下心なんてなかった。ただついうっかり、そんな言葉を漏らしてしまった。
 だけどその言葉を聞いた瞬間『その手があったか』とでも言うように天道さんの表情が輝いた。

「そうです! それです! 遠野くん遠野くん、今からおうちにお邪魔してもいいですか!?  遠野くんの家でやらせてください!」
「え!? ちょっ!?」

 その展開は予想していなかった。
 クラスのアイドルである天道さんが家に来る。それはなんて夢のような……。

 ――いやいや落ち着け冷静になれ。

 女子が家にエロゲーしにくるとか明らかにおかしい異常事態だ。それに家には母さんと妹がいる。天道さんを連れて帰ったらいったいどんなことを言われるか。

「お、落ち着いて天道さん! その……わかってる? これってエッチなやつだよ? それを男子の家にしにくるって……」
「エッチでもいいからやらせてください!」
「ちょ、声大きい!?」

 思わず周囲を確認。……何人かの視線がこっちに向いていて、僕と目が合うと慌ててそらせた。

「お願いです遠野くん1 エッチなのでもいいですから、遠野くんの家でさせてほしいんです! これ以上お預けされたら……私もう、おかしくなっちゃいそうで……」
「わ、わかったからもっと声抑えて!」

 ――その後、周りがひそひそ何かを話し始めたので逃げるように喫茶店を後にした。

「えへへ~♪ 楽しみです~♪」

 天道さんに至ってはそんな空気に気づきもしなかったようで、ふにゃふにゃした笑顔を浮かべながら僕の隣を歩いている。

 ――普段の天道さんとは別人みたいな無防備な表情。
 この後どうなるかという不安はあったけど、そういう一面をみれたのは嬉しかった。


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