憧れのお嬢さまがうちにエロゲーしに来てますが、あくまで僕らは友達です

子狐モフる

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05 天道さんはエロゲーがしたい 2

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「ここが遠野くんのおうちですか?」

 僕の住んでいる家は郊外に建つ小さな一軒家だ。ここで僕は母さんと妹の二葉の三人で暮らしている。

 二人とも家にいるようだ、中から談笑する声が聞こえてくる。
 さて、問題はだ。……天道さんのことなんて説明しよう?

 これまで僕が女子を家に連れてきたことなんてない。間違いなくあれこれつっこまれるだろう。流石にエロゲーしにきたなんて言えないし。

 ……いや、こういうのは堂々としていた方がいいだろう。仮にも僕は成績が学年トップの優等生。友達が勉強しにきたって言えばきっと大丈夫。

 軽く深呼吸、意を決して扉を開いた。

「た、ただいまー」
「あ、おかえりーお兄ちゃ……ん!?」
「おじゃまします。遠野くん……じゃなくて、一真くんの妹さんです?」

 天道さんを見た瞬間、僕を出迎えた妹の二葉は目をまん丸にして固まった。

「お母さんお母さん! 大変! お兄ちゃんが彼女連れて帰ってきたー!」
「ちょっ!? 待て二葉! 天道さんさんはそんなんじゃ……」

 そうしている間にも家の奥から母さんが駆けてくる。

「きゃーっ!? すごいすごいかわいいー!? やるじゃないあなたこんなかわいい女の子連れて帰ってくるなんて! ねえねえねえねえあなた! お名前は!?」
「て、天道ことみです……」
「え!? それってたしかあの超お金持ちの……すっごいお兄ちゃん逆玉じゃん!」
「それで!? それで!? 二人はいつから付き合ってるの!?」
「へっ!? あ、いや、私たちそういうのじゃなくて……」

 これまでゲームをやることしか頭になくて、異性の家まで行くことがどういうことかまったく意識していなかったのだろう。天道さんもワタワタ慌てはじめる。

「そう違うから! 天道さんは……えーと、そう勉強! 勉強しに来ただけだから!」
「はいはいべんきょーべんきょー」
「うふふ♪ いったい二人で何の勉強をしちゃうつもりかしら? きゃー♪」
「これっぽっちも信じてないね二人とも!?」
「あの、あの、遠野くん早くお部屋行きましょ?」

 空気に耐えられなくなったのだろう。天道さんがクイクイと袖を引っ張ってくる。

「そ、そうだね。それじゃ僕たち勉強してるから!」 
「うんうん、お勉強頑張ってね♪ 勝手に部屋に入ったりしないように気をつけるから~♪」
「お兄ちゃんお兄ちゃん、後で話聞かせてね?」
「だからそういうのじゃないから!」

 二人で逃げるように二階にある僕の部屋に行った。

「ごめん、うちの家族が騒がしくて」
「いえ、びっくりはしましたけど新鮮で楽しかったです」

 そう言って天道さんはくすくす笑い、少し遠い目をした。

「ほんと、うちとは大違いで……」
「天道さん?」
「あ、いえ何でもないで……す……?」
「どうしたの天道さ……げ」

 ――しまった。あわてて入ったものだから部屋を片付けている暇がなかった。

 天道さんの視線が注がれていたのはベッドの上に置かれたシロの等身大抱き枕。甘えるような表情で服を脱ぎかけのシロが描かれている。せっかく『ブレあふ』をやるんだしと今朝の内に準備していたものだ。

 ……正直女子に見られるのは相当きつい。

「て、天道さんこれは……って天道さん!?」

 天道さんはノータイムでベッドにダイブしていた。

「はうぅ……シロちゃんってこれくらいの身長なんですね……ちっちゃいよぅ……かわいいよぅ……」

 天道さんはぎゅーっと抱き枕を抱きしめてベッドの上をコロコロしている。
 ――ヤバい。かわいい。

 僕ははっきり言ってギャップ萌えに弱い。僕が天道さんを好きになったのも猫をかわいがる天道さんの普段とのギャップにやられたからだ。
 そして天道さん、さっきから普段とのギャップがすごい。ヤバい。超かわいい。

 僕がいつも寝ているベッドに天道さんがいることにドキドキしてしまう。それにコロコロしているとスカートがはだけて見えそうで……。

「て、天道さんゲームしようゲーム! 元々そのために来たんだし!」
 これ以上はこっちの理性が保たなくなりそうなんでそう言って意識を切り替えた。


 何はともあれ、椅子を二つパソコンの前に置いて並んで座る。
 パソコンを起動し『ブレイブファンタジア』を開始。登場キャラクターの声でタイトルが読み上げられる。

 ――なんでか知らないけどこれ、猛烈に恥ずかしい。

 あれだ。家族団らんしてたらテレビで美少女キャラのキャッキャうふふな感じのCMが流れた時のあの気分だ。

 タイトル画面で主人公とヒロイン達が並んでいるのを見て天道さんは「はふう……」と息を吐く。

「私的にはやっぱりシロちゃんが一番ですけど、みんなかわいいですねぇ。……ちなみに遠野くんはどの子が一番好きなんです?」
「ん? そうだなあ……シロもいいけど、僕はやっぱり主人公の勇かな? 普段はかわいいんだけどシリアスなシーンではめちゃくちゃかっこよくて、そのギャップがいいというか」
「なるほど。シロちゃんはもちろん、勇ちゃんもどんな女の子か楽しみにしてますね」
「え? 勇は男だよ?」

 僕がそう言うと天道さんは目をぱちくりさせた。

「へ? あれ? この主人公の子……どう見ても女の子にしか見えませんけど、男の子なんですか?」
「ちょっとマニアックかもしれないけど僕、男の娘が好きでさ」
「え……。あの、遠野くん、男の子が好きなんですか?」
「うん」
「へ、へー。そうなんですか、男の子が……」

 ――どうしたんだろう? 天道さんの様子が変だ。僕、そんなに変なことを言っただろうか?

 …………。

 ――や ら か し た。

 見た目が美少女にしか見えない男性キャラ――いわゆる男の娘。オタク同士なら普通に通じるけど今日初めてこういうのに興味を持った天道さんに通じるはずがなかった。

 女子が自分の部屋に来てくれたという前代未聞の事態に心のどこかで舞い上がっていたのかもしれない。盛大にやらかした。これ絶対勘違いされてる。

 それに男の娘というのは一般的に見るとかなり倒錯的な属性だろう。天道さんにどんな風に思われるか……。

「ち、違うんだ! 勇のことは好きだけどそういうのじゃなくて……!」
「大丈夫です」

 天道さんは慈愛に満ちた目で僕を見る。

「遠野くんっていわゆる同性愛の方だったんですね」
「だから違うから! 確かに勇は男だけどこれは男の娘というもので……」
「? ええ、だからこの子は男の子で、遠野くんは男の子が好きなんですよね?」
「だ、だから違って……いい天道さん!? この世界には外見が女の子にしか見えない男の娘とか、男から女の子になっちゃったTS娘とか、女の子の格好をするのが好きな女装っ子とかがいるけどそれが好きだからと言って決して同性愛とかそういうあれではなくて見た目や中身とのギャップこそが魅力であって……」
「? それ、全部男性ですよね? やはり同性愛では?」
「だから違うんだああああ!」

 僕が頭を抱えていると天道さんはクスクス笑った。

「大丈夫ですよ。私、同性愛とかには理解ある方ですから。それに遠野くんが同性愛なら私も安心ですし」
「え?」
「いや、実はちょっと冷静になってみるとそこまで親しくなかった男性の家で二人きりってちょっとまずいかなーって思ってたんですよね」
「………………」

 ……色々と誤解を解きたいけど、ここで「自分は普通に女の子が好きです」と言ったら天道さんが帰ってしまうかもと思ってしまってあまり強く出れなかった。


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