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14 僕と天道さんの戦い 3
しおりを挟む「にしても……すいません、お食事用意してもらって……」
「いいのいいの。それよりお口に合うかしら? 天道さんって舌肥えてそうだけど……」
「いえ、すっごく美味しいです。私の家ではいつもシェフが作ってて、それももちろん美味しいんですけどおばさまの作ったのはなんというか、優しい味で……」
たぶんお世辞じゃないんだろう。天道さんは皿に盛られた唐揚げを美味しそうに頬張っている。
「いろいろ良くしていただいて……このお礼は必ずしますから!」
「気にしないで。それより一真の学校での様子とか、二人の仲とか聞きたいなー?」
「あ、それあたしも聞きたい。お兄ちゃんと天道さんっていつもすぐに二人で部屋に行っちゃうけどどんなことしてるの?」
母さんと二葉が身を乗り出す勢いで聞いてくる。
……流石に『二人でエロゲーしてます』と言うわけにもいかなくて笑ってごまかすんだけど、それを何かいいように解釈しているようで二人ともめっちゃニヤニヤしている。
「と、ところで! 天道さん、着替えとかどうするの? 直接こっちに来たから持ってないよね?」
「ああそれなら、黒服の人が菓子折と一緒に持ってきたわよ? 『お嬢さまをお願いいたします』って」
流石は世界に名だたる大企業、その辺も抜け目ないと言うべきか。
「それじゃあなた達、ご飯食べたらお風呂すましちゃってね。天道さんはお客様だし一番風呂ね」
「お兄ちゃん、天道さんが入った後だからって残り湯とか飲んじゃ駄目だよ?」
「しないよ!?」
「それとも一緒に入りたい? お母さん達、あんた達がちょっとぐらいお風呂でやんちゃしてても気づかない振りしとくわよ?」
「だからないから! そういうのないから!」
そうやって母さんと二葉にいじくられつつ、僕らはお風呂をすませた。
……正直、天道さんが入った後のお湯ということでちょっとドキドキしてしまったけどそれくらいは許してください……。僕だって健全な男子高校生なんです……。
そうしてお風呂をすませた僕と天道さんはまた部屋で二人きりになったわけなんだけど……。
――ヤバい。パジャマ姿の天道さんかわいい……。
ベッドに隣り合って座っている天道さんの方からシャンプーのいい匂いがする。
ちらりと様子をうかがってみるとしっとりした髪が妙に色っぽくて、それにパジャマ姿ってのは制服や私服とかとは違う無防備感がたまらなくて……。
それに、たぶん、天道さん。ブラジャー、着けてないと思うんだけど、それを意識しちゃうと、なんかもういろいろヤバい。
「それじゃ、しましょうか?」
「し、しましょうかって何を!?」
「え? そりゃあ勉強ですけど……」
――一瞬変なことを想像してしまった自分をぶん殴ってやりたい。
大きく深呼吸してどうにか気持ちを落ち着ける。
「い、いや。今日はもうこの辺にして寝る支度をしようと思う」
「寝るって……まだ早くありません? もっと勉強した方が……」
「気持ちはわかるけど睡眠不足は勉強の大敵だよ。記憶っていうのは寝てるときに定着するんだから。それよりは早めに起きて、寝る前にやったことの復習をした方がずっと効率良く覚えられる」
「なるほど……わかりました。で、寝るときですけど……どうします?」
「どうするって……あ」
そうだ、すっかり忘れていた。この部屋にはベッドが一つしかないのだ。
「……一緒に寝ます?」
「何言ってんの天道さん!? お願いだからもっと警戒心を持って!? ぼ、僕だって男なんだし、そういうことする可能性だって……」
僕がそう言うと天道さんはキョトンとした後、クスクス笑った。
「下心ある人がそんなこと言わないと思いますよ」
「いや、けど……」
「大丈夫です。私、遠野くんのこと信じてますから。今さら警戒なんてしませんよ」
――そうやって信頼百パーセントの笑顔でそういうこと言うの、ある意味相手に対する最強の防御手段だと思う。
「と、とにかく天道さんはお客さんなんだしベッド使って! 僕は床で寝るから!」
「いえ、ただでさえご迷惑をかけてるんですから遠野くんがベッド使ってください。私が床で寝るので」
「いいから! 女の子を床に寝かせたなんて知られたら母さんになんて言われるか……」
「じゃあやっぱり一緒に……」
「ないから! それだけはないから!」
――天道さんはやっぱり距離感がちょっとおかしい。
電気を消し、床に敷いた布団の中で僕はそんなことを考えていた。
相当な箱入り娘だし、これまでまともに友達を作ったことないって言ってたけどあまりに無防備過ぎる。信頼してくれてるのは嬉しいけど見ていて心配になってくる。
――それとも、まさか……誘ってきてる……とか?
一瞬そんなことを考えてしまって僕は布団の中でぶんぶん頭を振った。
それこそエロゲーのやり過ぎだ。エロゲーではけっこうありがちな展開だけど現実でそんなことあるわけがない。
それでも……やっぱり少しはそういうことも考えてしまう。そう、例えば……この後天道さんが夜這いしに僕の布団にもぐり込んでくるとか……。
そんな時、ギシッとベッドが軋む音がした。
(?)
そちらを見ると、天道さんはどうやらベッドから降りようとしているようだった。
トイレだろうか? そんなことを考えていると、天道さんがこっちに近づいてきた。
(……え?)
そして布団をめくり、僕の布団にもぐり込んでくる。
「……っ!? ……っ!?」
「あ、すいません起こしちゃいましたか?」
「て、てててて天道さん待ってまだ心の準備が……」
「? その、ですね……やっぱり、一人だと寂しくて……」
そうにそう言いつつも、天道さんは僕の隣に収まった。
天道さんと同じ布団に入っているという現実に頭が沸騰しそうになる。今すぐ覆い被さりたい衝動を必死に抑える。
そして天道さんは恥ずかしそうに……。
「じ、実は私! いつも大きなクマのぬいぐるみを抱いて寝てるんです!」
「……はい?」
「それで、無いとどうも寝苦しくて! だから遠野くんを代わりにと思いまして……」
つまり、僕を抱き枕にしたい……と。
「シ、シロの抱き枕あるんだし、そっち使ったら?」
「あれじゃ駄目です! 逆に興奮して眠れなくなっちゃいますから。それに……」
天道さんがぎゅっと僕の身体に手を回してきたんで、思わず悲鳴を上げそうになった。
「お母様に逆らったこと、やっぱりまだ不安で……だけど遠野くんに抱きしめてもらった時、すごく安心したから……だから……ダメ、ですか?」
――そんな風に言われたら断れるわけがない。
「わ、わかった」
「ありがとうございます! それではさっそく……」
そう言うと天道さんは僕の身体に手を回し、ポフッと僕の胸に顔を埋めた。
「あ……これ、やっぱりすごくいいです……」
抱き枕役なんてことをさせられてるのに、天道さんが気持ちよさそうにそう言うとつい嬉しい気持ちになってしまう。
いやらしい気持ちも正直少しはあるけれど、それ以上に愛おしいという気持ちがどんどん湧いてくる。
「あの、遠野くんも私の身体、もっとぎゅーってしてくれませんか?」
「え……でも……」
「いいですから。遠慮せずやっちゃってください」
そう言われて、僕の方も天道さんを抱きしめたいという衝動もあって、細い身体に手を回してぎゅっと抱きしめる。
「ん……これ、いいです……あったかくて、包まれてる感じがして……最高です……」
天道さんは眠くなってきたのか、ぼんやりとした口調で言う。
お気に召してくれたのが嬉しくて、僕もちょっと調子に乗って天道さんの頭を撫でてみる。
すると天道さんはふにゃっと、気持ちよさそうに表情をとろけさせた。
「誰かに頭……撫でてもらうの……久しぶり……で……す……」
数分と経たず、天道さんは寝息を立てはじめた。
……ちょっとだけ身体を離し、天道さんの顔を見てみる。
なんの警戒心も感じさせない、僕のことを信頼しきったような寝顔。
それだけ信頼されているということに誇らしさを感じる。
天道さんを起こさないようにふわふわと頭を撫でながら、その可愛らしい寝顔を堪能する。
――ああ、やっぱり、僕は天道さんのことが好きだ。
その気持ちを再確認する。
ずっと一緒にいたい。また一緒にゲームしたり、遊びに行ったり、天道さんが書いた物語を読んでみたい。
天道さんのお母さん――ひとみさんに勝つことは天道さんのためっていうのももちろんあるけど、それ以上に僕自身のためだ。
離ればなれになるなんて嫌だ。他の誰にも天道さんを渡したくない。
(だからなんとしても、二人でひとみさんに勝つんだ!)
そう決意を新たにした。
(……で、とりあえずの問題は……)
思わず苦笑いした。
(僕……これ、眠れるかな……)
――結局、ドキドキし過ぎて朝まで一睡もできなかった。
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