【完結済】こんなに好きになるつもりなんて、なかったのに~彼とわたしの愛欲にまみれた日々~

水鏡こうしき

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22/それはまるで綱渡りのような(3)★

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 散らかったリビングを手早く片付け、交わった痕跡と衣類を片手に抱えたとおやが、わたしの手を握りリビングを出る。電気を消したことを確認すると、和室へとその手を引いて行く。

「とおや……」

 達したばかりの余韻の残った下半身が、心地の良い痺れを残している。もっと彼のもので気持ち良くないたいという、濃い期待を孕んだ身体がじんじんと熱い。

「まだ、するだろ?」
「……うん」

 我慢しないセックスがしたかった。落ち着いて床に背を着き、安心して身体を委ねたかった。ソファでするセックスが嫌だったわけではない。ひょっとしたらバレるかもしれない──というスリルはそれなりに楽しめたけれど、流石にあれは危険すぎた。

「あれ、暖かい……」
「かーさんが暖房つけてくれてたんだな」

 全裸状態でリビングから和室へと移動したわたしの身体は、流石に少し冷えてしまっていた。こんな真冬に何をやってるんだと自分でも呆れてしまう。

「とおや、部屋暖かいけどわたし……」
「寒い?」
「うん……温めて?」

 既に敷かれた布団の手前に立ったまま、とおやは黙って脱衣を始める。わたしは、とおやが服を脱ぐ仕草が大好きだった。トップスをすぽっと脱ぎ去った時に、乱れた髪を頭を振って整える身体全体の動きや、遠慮や恥ずかしげもなく下着を下ろした時に現れる、彼以外ではわたしだけが触れることを許された秘められた部分。少しずつ面積を広めてゆくごつごつした筋肉は、男らしくて、愛しくて。

 同じ格好になったとおやが、無言のままわたしを抱きすくめる。堅い胸に顔を埋め、肌の香りを嗅ぐだけで溶けて消えてしまいそうになるほどの幸福に包まれる。求め合うように互いの腕が背を這い、尻を撫で、やっとのことで唇が触れ合った。

「……大好き」
「うん……」
「ねえ、とおや」
「何?」
「もっと、とおやにも好きって言って欲しい。言ってくれなきゃ、わかんないよ」
「好きだよ?」
「……!」

 滅多にそういうことを口にしてくれないとおやが愛を囁くと、脳天を思い切り殴られたような衝撃でわたしは動けなくなってしまう。出来ればいつも言って欲しいと思う反面、この衝撃を何度も味わいたいとも思ってしまう。

「ほたる?」
「とおや……好き、大好き……大好き……」

 もっと、もっとわたしだけを見て欲しくて、彼の全てが欲しくて、深く唇を重ね強く身を寄せた。ああ、もっと──もっと愛して欲しい、もっと、わたしの身体で気持ち良くなって欲しい。

「ほたる、来て」

 敷かれた布団に座るよう、とおやの目線が動く。わたしの背後に回った彼は、後ろから包み込むようにわたしの背に覆い被さった。

「んッ……は、ぅッあぁ……!」

 両膝を立てたその間に、わたしの身体はがっちりと挟まれる。無防備な両胸を後ろからとおやが鷲づかみ好き放題に撫で回し、揉み解す。ピンと立ったその先端をくりくりと弄くられ、反応した下半身がじりじりと熱を帯び始める。

「あッ、やッああッあッあぁッ……ああッ……!」

 とおやを求めてだらしなく開いていた股の間に、彼の右手が伸びていた。一瞬だけ焦らすように触れた刹那、躊躇いなく中指と人差し指がとぷん、と膣に挿し込まれた。

「すっげー、くちゅくちゅいってる」
「はぁッ、はぁッ、あッ あぁッ あ、あッ……」
「聞こえるか?」

 とおやが指を抜き挿しする度に、愛液を纏った膣口が厭らしい音を立てる。もっと気持ち良くなりたくて、わたしは小声で「聞こえない」と呟いた。

「これなら?」
「あああッ!あんッあぁぁッ!」
「これでも聞こえねえ?」
「やああッ!あッ!あッ!ああんッ!」

 あまりの快感に腰が跳ねてしまう。とおやの長い指が、激しく──激しく──何度も何度も何度も、わたしのなかを掻き回し、乱してゆく。

「ほたる、前見て」
「はあッ……はあッ……まえ……?あっ……」

 客間だからなのか、和室に不似合いな全身鏡が壁に立て掛けてあった。おば様の気遣いなのだろう、カバーは外され横に置かれた状態である。その鏡が、股を全開にし、快感に喘ぎ悶えるわたしの正面に佇んでいるのだ。

「よく見てろ」

 手元のリモコンを操作し、とおやは室内灯を全て灯す。パッと明るくなった室内で裸で絡み合うわたしたちの姿が、縦長の鏡に浮かび上がった。

「エロい色してるだろ」
「あッ……あッ……やだ、とおや……」
「こうやって、開いて、指をベタベタなマンコに挿れると」
「ああッ!あッあぁッ……!」
「ほたるが、エッロい声出す」
「はあッ……はあッはあッ……!」
「ちゃんと見ろよ?」
「とおやのエッチ……」
「ほら、もっと」

 胸の先端を弄ばれながら高速でなかを犯され、あっという間に快感の頂が見えてきた。鏡の中を覗き込む余裕なんてないのに、後ろからは「見てみろよ」とか「お前、ほんっとエロいな」とか、わたしを苛めて嬉しそうなとおやの声が耳を撫でる。

「ああああッ!イク、イクッイクッ!!」

「ほらほら、もっとイけ」

「だめええぇ……とおやぁ、ああッあ……ああッイクぅ……イク、うぅッ!!」

「まだイけるだろ?もっと、もっとイけ。ほら、喘げよ」

「とおやッ……とおやぁ……!イッちゃうぅ、イッ……あああだめぇッイクイクッ、あああッ!!」

「ハハッ! ビクビクしやがって。エッロ!最ッ高だなお前っ!」

「ッあ……とおやぁ……とおやッ……あ、うぅッ……あ……」

「相変わらず、すっげぇ反応だなお前……エロすぎだろ」

 指を抜き取られた瞬間、一際量の多い愛液がとろりと溢れ出した。全身が痙攣し、全力疾走し終えた直後のように息が上がり、その場に倒れこんでしまう。

「あッ……とおや……とおやッ……」
「何?」
「早く、挿れて、じゃないと、わたし」
「どうなる?」
「ぐちゃぐちゃに、なっちゃう、から、早くッ……!」

 避妊具を装着し、布団の上に胡座をかいたとおやが挑発するように首を傾げる。その正面まで這い、彼の腰の上に跨がった。

「上に乗る?」
「乗るっ……」
「じゃあ鏡こっち向けてこい」

 顎でしゃくられた全身鏡を、交わる身体が収まる位置に動かす。枕の位置を変え仰向けになったとおやの上にわたしは跨がった。

「貰うよ?」
「どーぞ」

 腰を上げ、膣口にとおやの性器を押し当てる。息を吐きながらゆっくりと腰を沈めると、身体の中に──とおやが──入りきった。

「んッ……おっきい……おっきい、あッ……あ、うッ……はぅッ……」
「鏡、見ながら腰振ってみ」
「んッ……やだッ……」
「ほら、見ろって」
「ひぅッ」

 前のめりで腰を振るわたしの胸の先端を、下からとおやが摘み、弄くる。快感で動きが鈍くなってきたことに気が付いたのか、とおやは上半身を起こして優しくわたしの唇を吸った。

「……大好き」
「嬉しい……とおや、大好き……」

 ああ、また──この言葉を聞くだけで幸せで、他のことなどどうでもよくなってしまう。我慢しないセックスがしたくてわたしは、声を堪えることも抑えることもしていない。二階に届いてやしないかと考えることもなく、ただただ夢中で愛し合った。

「知ってるか?」
「なに?」
「新年、初めてするセックスのことを姫初めっていうんだと」
「そうなんだ……」
「新年、初めてが俺の実家」
「やだ、言わないで……」
「じゃあ、キスして、止めて」
「……うん」

 唇を重ねたまま、対面座位の体勢でとおやが腰を振る。しばらくするとゆるりと押し倒され、わたしの背はやっと布団に辿り着いた。

「激しくするぞ」

 その一言の後、わたしの言葉も待たずして、宣言通りとおやは激しく腰を打ち付け始める。肌と肌のぶつかる音が部屋に響き渡り、彼が絶頂に達するまでの間、わたしは何度も達してしまった。 

「ほんっと……お前……最高……」

 果てた後、抱き締めてくれた腕の中でとおやがぽつりと呟いた。最高とはいっても、とおやが知っている女はわたし一人。それで最高と言ってくれるなんてなんだか不思議だった。
 いつまでも、彼の最高であり続けたい。そう願って身を寄せたというのに、当の本人はうつらうつらと船を漕いでいた。

「とおや、服着て。部屋に戻んないと」
「わかってる、けど離れたくねえんだ。ずっとこうしてたい」
「うん……でも」
「わかってる」

 素肌同士のまま、思い切り抱きしめ合う。繋がっていた部分をようやく抜きとり、ごみはまとめてわたしの鞄に詰め込んだ。流石にこの家のごみ箱に捨てて帰るわけにもいかない。

「なあ、正月休み俺んちずっと居ろよ」
「マンション?」
「ああ……そうすれば、ずっと一緒に居られる」
「うん、そうする」

 それから何度か唇を重ね、着衣を済ませたとおやは忍び足で二階の自室へと向かった。わたしは裸のまま一人、彼の香りの残る布団に横たわり──。

「あ……」

 がばりと起き上がる。あれだけ身体を重ねたのだ、ひょっとしたら布団を汚しているかもしれない。そうなってくると非常に不味い、なんと言い訳をしたら良いのだろう……。


(……良かった。でも、よくない……)


 とろとろと溢れ出した愛液は記憶に新しい。恐る恐る布団に触れてゆくが、痕跡は残っていなかった。けれど乱雑に脱ぎ散らかしたままにしていたわたしのパジャマにベッタリとそれは付着しており、わたしは深夜一時に一人、それを拭き取る作業に徹することとなった。





 翌朝。特に変わった様子のないおじ様とおば様に囲まれ四人で朝食を頂き、お昼前にはおいとまをすることとなった。昨夜のことはバレていないだろうかと内心ヒヤヒヤであったが、二人のあの様子を見るに大丈夫だったと信じたい。

 帰り際、おば様に「また来年も来てね」と笑顔を向けられた。「是非」と返したが、わたしはあの時どんな顔をしていたのだろう。




 結局、そのままとおやの車で彼のマンションへ向かい、正月三賀日は家に籠ってセックス三昧だった。正確に言えば互いに正月休みが一月の五日まであったので、元旦から数えて五日間丸々だ。
 彼のマンションには時々泊まりに来ていたから着替えなどの心配もいらなかったし、誰にも邪魔されず、好きなだけ彼の腕の中を独占出来ることが、これ以上ないほどに幸福だった。

 重なって、愛し合って、眠って、また愛し合って──一緒にお風呂に入って、食事をして、深夜に映画を観ながらまた愛し合って、眠って。色欲と怠惰にまみれた日々に、人間として駄目になっていくのを感じていた。けれど、止められなかった。すぐ触れることの出来る距離に、一番愛しい人がいる。もっと、もっと触れたい──もっとわたしを見て欲しい。互いにその思いが同じなのであれば、するべきことは一つだけだった。


「来年も……同じ感じになるかな、正月」

 身を絡ませたまま、とおやがわたしに問う。大好きな胸に埋めていた顔を上げ、そっと唇を重ねた。

「どうかな、わかんない。でも」
「何?」
「同じように過ごしたいね」
「そうだな」


 この時のわたしに、来年のこの時期──とおやとどんな関係になっていたかなんて、知る由もない。きっと、今よりももっと彼のことを好きになっている。このときはそうなることを、信じて疑わなかった。



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