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22話 冒険
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「では、これでクエストの受諾は完了です。三人とも頑張ってきてください!」
私とサーシャ、テスラを見てエルナは微笑みながら頭を下げた。
ダンジョン攻略は明確なクエスト条件がない。そのため、他のクエストと比べ細かく受付嬢と連絡を取り合わないといけないのだ。
そもそも、そこらの魔物を狩る程度なら心配する必要もない。
しかし、ダンジョンは未知である。かの英雄でさえ幾度も命を危機にさらしてきた場所だと書いてあった。
ここから北西に二キロほど離れたダンジョンを目指して私たちは歩き続ける。
草原を歩みながらテスラは思い出したように言う。
「ちなみにダンジョンでは全て俺の命令は聞け。どんなに納得がいかなかったって俺の命令は絶対だ」
「分かりました」
「わ、分かったわ」
サーシャは即答して首を縦に振ったため、私も遅れて了承した。
やはり命のやり取りをする場所なのだろう。今朝のようなふざけた態度は微塵もテスラになかった。
そして、付け加えるようにもう一度テスラは口を開く。
「最初は俺が一人で魔物を倒す。慣れてきたら嬢ちゃんも前衛に来い。一番安定する方法が前衛がエリス。後衛がサーシャ。そして真ん中に俺だ。まぁ最初は怖いし難しいだろうが」
「何言ってるのよ?」
「…………ん?」
しっかり説明したテスラは思ってもいない返答に目を丸くした。
一昨日までのテスラは何処に行ったのだろうか。
私はもう誰にも甘えたくない。甘えて強くなれるような世界ではないと理解している。
私は微笑を浮かべながらテスラに告げた。
「ふふふっ。私を気絶させるまで殴った人が優しくしないでよ。私は強くなりたいの。そのためならどんな苦痛でも耐えれる覚悟をしてきたわ」
「……やっぱり俺の見込みどうりだ」
するとテスラは何か小声で私たちには聞こえないほどの声量呟いた。
聞こえなかった私はもう一度聞きなおす。
「ん? 何?」
「いいや、なんでもねぇ。嬢ちゃんがそこまで言うなら俺が搾りカスになるまで鍛えてやるよ」
テスラは首を横に振ってにんまりと笑みを浮かべる。
その笑みに少し寒気がしたのは言うまでもない。
テスラのことだ。回復魔法が使えるからと言って死ぬような思いをさせてくることもあるだろう。
だが、それを乗り越えた先に力があるのだ。
「お、入り口が見えてきたぞ」
「あれがダンジョン?」
ダンジョンの入り口。私はもっと巨大な建築物かと思っていた。
しかし、まるで家の地下室のような小さな階段が入り口である。
特に警備兵もいる様子はない。誰かが興味本位で間違えて入ってしまいそうなほどである。
そんな私の気持ちを読み取るように二人は口々にする。
「まぁ辺境のダンジョンだからな。誰も来ることがないからこんな感じになってるんだろ」
「エルメス国の付近にあるダンジョンは警備兵が何十人もいますからね」
「まぁこんな辺境だ。強力な魔物もいないだろ」
「ですね。その分誰もいないので遺物は残っている可能性が高いです」
二人とも冒険業も仕事だと考えているのだろう。
今朝のような馴れ馴れしさは一切なくなり、真剣な眼差しでダンジョンを見据えていた。
そんな二人を見て私も気合を入れなおす。
「じゃあこの陣形でダンジョンに入る。何か違和感があればさっさと教えろ」
先ほども言った通り、前衛がテスラ。中衛が私。後衛がサーシャというフォーメーションだ。
覚悟はできていると言ったものの、今私が前衛を担えばパーティーは秒で壊滅するだろう。
それほど前衛は経験がいる大切な位置なのである。
「了解です」
「了解」
私たちが頷いたのを確認するとテスラはゆっくりとダンジョンの階段を下りて行ったのだった。
私とサーシャ、テスラを見てエルナは微笑みながら頭を下げた。
ダンジョン攻略は明確なクエスト条件がない。そのため、他のクエストと比べ細かく受付嬢と連絡を取り合わないといけないのだ。
そもそも、そこらの魔物を狩る程度なら心配する必要もない。
しかし、ダンジョンは未知である。かの英雄でさえ幾度も命を危機にさらしてきた場所だと書いてあった。
ここから北西に二キロほど離れたダンジョンを目指して私たちは歩き続ける。
草原を歩みながらテスラは思い出したように言う。
「ちなみにダンジョンでは全て俺の命令は聞け。どんなに納得がいかなかったって俺の命令は絶対だ」
「分かりました」
「わ、分かったわ」
サーシャは即答して首を縦に振ったため、私も遅れて了承した。
やはり命のやり取りをする場所なのだろう。今朝のようなふざけた態度は微塵もテスラになかった。
そして、付け加えるようにもう一度テスラは口を開く。
「最初は俺が一人で魔物を倒す。慣れてきたら嬢ちゃんも前衛に来い。一番安定する方法が前衛がエリス。後衛がサーシャ。そして真ん中に俺だ。まぁ最初は怖いし難しいだろうが」
「何言ってるのよ?」
「…………ん?」
しっかり説明したテスラは思ってもいない返答に目を丸くした。
一昨日までのテスラは何処に行ったのだろうか。
私はもう誰にも甘えたくない。甘えて強くなれるような世界ではないと理解している。
私は微笑を浮かべながらテスラに告げた。
「ふふふっ。私を気絶させるまで殴った人が優しくしないでよ。私は強くなりたいの。そのためならどんな苦痛でも耐えれる覚悟をしてきたわ」
「……やっぱり俺の見込みどうりだ」
するとテスラは何か小声で私たちには聞こえないほどの声量呟いた。
聞こえなかった私はもう一度聞きなおす。
「ん? 何?」
「いいや、なんでもねぇ。嬢ちゃんがそこまで言うなら俺が搾りカスになるまで鍛えてやるよ」
テスラは首を横に振ってにんまりと笑みを浮かべる。
その笑みに少し寒気がしたのは言うまでもない。
テスラのことだ。回復魔法が使えるからと言って死ぬような思いをさせてくることもあるだろう。
だが、それを乗り越えた先に力があるのだ。
「お、入り口が見えてきたぞ」
「あれがダンジョン?」
ダンジョンの入り口。私はもっと巨大な建築物かと思っていた。
しかし、まるで家の地下室のような小さな階段が入り口である。
特に警備兵もいる様子はない。誰かが興味本位で間違えて入ってしまいそうなほどである。
そんな私の気持ちを読み取るように二人は口々にする。
「まぁ辺境のダンジョンだからな。誰も来ることがないからこんな感じになってるんだろ」
「エルメス国の付近にあるダンジョンは警備兵が何十人もいますからね」
「まぁこんな辺境だ。強力な魔物もいないだろ」
「ですね。その分誰もいないので遺物は残っている可能性が高いです」
二人とも冒険業も仕事だと考えているのだろう。
今朝のような馴れ馴れしさは一切なくなり、真剣な眼差しでダンジョンを見据えていた。
そんな二人を見て私も気合を入れなおす。
「じゃあこの陣形でダンジョンに入る。何か違和感があればさっさと教えろ」
先ほども言った通り、前衛がテスラ。中衛が私。後衛がサーシャというフォーメーションだ。
覚悟はできていると言ったものの、今私が前衛を担えばパーティーは秒で壊滅するだろう。
それほど前衛は経験がいる大切な位置なのである。
「了解です」
「了解」
私たちが頷いたのを確認するとテスラはゆっくりとダンジョンの階段を下りて行ったのだった。
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