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3巻
3-1
しおりを挟むプロローグ 灰色の世界
――私は天才だった。
あれは確か八年前のこと。私が魔術学院に通っていた頃の話だ。
「本当にソティア様は素晴らしいわね」
「えぇ、いつか私もあぁなりたいわ」
自分で言うのもなんだが、容姿端麗、成績優秀、交友関係だって広い。
魔術学院で私の名前を知らない人間はいないだろう。
けれど私の世界は灰色だった。
容姿はそれに見合った所作をすれば、より可愛く見せることが出来る。
テストで学年一位なんて努力すれば誰でも取れる。
交友関係だって自分から話しかけて、相手が欲している言葉をかければ誰とでも仲良くなれる。
全てが単純で簡単だった。だけど面白くない。生きている心地がしない。
そんな時だった、彼が現れたのは。
「何あの子。本当にこの学院の生徒?」
「態度悪いわよね。スラム出身なんて汚らわしい」
「本当にこの高貴な魔術学院にふさわしくないわよね。ソティア様を見習ってほしいわ」
ロイド。魔術学院で唯一のスラム出身の生徒だ。
言葉遣いは雑で、愛嬌もない。およそ魔術学院の生徒らしからぬ振る舞い。
正直に言うと、学院の和を乱していた。
そんな彼が退学にならないでいられるのは、ロサリアという教師が後ろ盾になっているためだ。
ロサリア先生は教師の中でもずば抜けて実力が高く、指導力もある。学院の中ではかなりの権力者であった。そんな彼女が庇っているので、誰もロイドを退学にすることは出来ない。
「前に殴られた生徒もいるらしいわよ」
「野蛮ねぇ。本当に両親はどのような育て方をしているのやら」
「早くこの学院から去ってほしいわ」
私のいつもの取り巻き三人が、変にこちらを見ながら言ってくる。
大体こういう時は、面倒事を押し付けられるのだ。
「「「ソティア様。どうにかなりませんかね?」」」
ほら、こうなる。
私を何だと思っているのだろうか。
「まぁ少しだけ話でもしてこようかな~」
けれど完璧な私は、こう答えるしかない。
こうして私は、ロイドという少年のもとへ向かうことになった。
ロイドは明らかに孤立していた。
教室に入ると、彼が周囲の生徒から避けられているのが一目で分かった。まるでそこだけ別の世界のようだった。
ここで過ごすのはさぞ辛かろう。そう思って彼を見たのだが、
「え?」
その表情には苦痛など一切滲んでおらず、それどころか自信に満ち溢れていた。
どうしてそうしていられるのか、私には理解出来ない。
それでもここまで来た以上、声をかけないわけにはいかない。
「君がロイド君? 初めまして。私のことは知っているよね?」
とりあえず私は私がやるべきことをやるまでだ。
こういうタイプの生徒は、私のような完璧な女性に話しかけられると態度が和らぐ。結局、孤高を気取ったところで、権威ある人物に認められることに人は弱いのだ。
あとは適当に、和を乱さないように言い含めればいいだけだ。
「誰だお前?」
「そう、私があのソティアで……って、え?」
ん? 聞き間違いだろうか。うん、きっと聞き間違いだろう。
この学院で私のことを知らない人がいるわけがないのだから――
「そっちから話しかけておきながら、自分のことを知っている前提で話すとか何様なんだ?」
「…………」
この男は何を言っているのだろうか。
それは生まれてから一度も味わったことのない衝撃だった。
「勉強の邪魔だから用事がないなら消えてくれ」
それが、彼との出会いだった。
そして私の完璧な人生はその日を境に徐々に壊れていく。
「ええぇ! ソティア様が学力テストで一位じゃない!?」
「しかも一位の人ってあの不良じゃ……」
私は初めてテストで一位を逃した。
逃したのは学力のテストだけ。剣術も体術も魔術も、他の科目は全て一位だ。けれど私にとって、一つでも一位を逃すというのは異常事態だった。
それも教養などないと言われているスラム出身の生徒に奪われたのだ。
「どうしてロイド君が一位なの?」
気づけばロイド本人にそう聞いていた。
「私はどうしたら君に勝てるの?」
私は誰にも負けたことがなかった。敗北を経験したことがなかった。
そのため、いざ負けた時どうすればいいか分からなかったのだ。
正直、答えてくれるなんて期待はしていなかったけれど、彼は私に質問を返した。
「ソティアさんだっけ? 君はなんで俺に一位を取られたと思う?」
「努力の差とかかな?」
咄嗟にそんな言葉が口からこぼれた。
私は天才だ。そんな自分が負けたのなら、それは彼が私との才能の差をはるかに超える努力をしているからだとしか考えられなかった。
しかし彼はそんな答えを一蹴した。
「いいや、単純に才能」
「へ?」
「君には才能がなくて、俺には才能があっただけ。これで満足した?」
「…………」
私はロイドと会話をするたびに呆然としている気がする。
二度目の会話にして、生まれて二度目の絶句。
そんな私を見かねてか彼はゆっくりと口を開いた。
「……スライムが人になる話って知ってる?」
「え? 何の話?」
急に変わった話題に私はついていけなかった。
「スラムでよく聞いたお伽噺だよ。ずっと人に憧れていたスライムは神様に願ったんだ。『自分を人間にしてください』って。すると神様は試練を与えた。最初スライムは全く試練を乗り越えられなかったんだ」
「最初ってことは、最終的には試練を乗り越えられたの?」
「あぁ、全く別の方向の努力をした結果、試練を乗り越えられたんだ。要するに、自分の本当の才能は、未知の分野にあったりするってことだ」
話を聞き終えた私は、自分の中で情報をまとめる。
人間になりたいスライムがいました。
神様の試練は難しく乗り越えられません。
でも別の分野で頑張ったら乗り越えられました。
自分の才能は自分が思っているものとは違っていたりしますよ。
「……つまりどういう意味?」
情報をまとめても、ロイドが私にこの話をした意味が分からなかった。
するとロイドは上から目線で堂々と告げた。
「だから勉強では絶対に俺に勝てないから、別のジャンルで努力したらどうだ?」
「はああああぁぁぁ!?」
思わず、才色兼備たる私らしくない叫び声を上げてしまった。
心の底から怒るとこんな声が出るらしい。
唯一の救いは周りに人がいなかったことだろう。
おそらくこの日から私の人生は狂い始めたのだ。
そして私の世界に色がつき始めた。
一章 最恐の魔女
僕――ロイドは助言士であり、冒険者ギルド『雲隠の極月』のギルドマスターだ。
助言士とは文字通り助言する人間のこと。他にはいない、僕が創り出した職業だ。自分の持つスキル【鑑定】と、その上位スキルである【心眼】を使って、他人の数値化されたステータスを見抜き、育成するのが仕事である。
元々『太陽の化身』というトップギルドで助言士をしていたのだが、ギルドマスターであるカイロスの不興を買って追放された。そして一人の魔術師――エリスに誘われ、二人で立ち上げたのが『雲隠の極月』だ。
『雲隠の極月』の方針は次の通り。
才能を見出してもらえず、不遇な扱いを受けている人を助け、育てること。
人は自分の本当の才能に気づけないことがある。そんな人にこそ助言は必要だし、不遇な者たちの大逆転ほど心燃えることはないだろう?
僕とエリスは打倒『太陽の化身』を目標に仲間を集め、今や、二十六ある冒険者ギルドの全てが僕らに注目していると言っていいところまで漕ぎつけた。
そのうちの二つが今、「対抗戦」と呼ばれる一大行事を開こうとしている。
一つは、『緑山の頂』。天才魔術師ミントを頭目とする一団で、冒険者ギルドの序列第七位。ミントはエリスの才能にいちはやく気づき、最速で僕らと同盟関係を結んだ。
もう一つが、序列第三位の『碧海の白波』。彼らは水属性に強い冒険者で構成された強豪ギルドである。
この二大ギルドの争いの中心には、やはり僕らがいた。
対抗戦で勝利したギルドは、負けた側に何でも一つ要求出来る。『碧海の白波』は勝利の報酬として、『緑山の頂』に『雲隠の極月』との同盟を破棄させ、自分たちがその後釜に座ろうとしているらしい。
しかし、僕は『緑山の頂』が敗北するのを黙って見ていたりはしない。対抗戦に出るメンバーに助言し、驚愕のレベルアップを実現させた。
それが吉と出るか凶と出るか、いよいよ明らかになろうとしている。
†
冒険者協会の不正騒動から一夜明け、対抗戦の日がやってきた。
不正騒動というのは、古巣の『太陽の化身』が行っていた職員買収や資金横領の摘発である。
二十六ある冒険者ギルドは、冒険者協会という団体の管理下に置かれている。ギルド順位一位の『太陽の化身』は横暴だが、彼らもまた、協会の会長であるオーガスの意向には従わなくてはならない。
カイロスはそれが不満で、自分の息のかかった職員を操り、記録の改竄や横領などをさせていたのだ。器が小さいと言えばそれまでなのだけれど、そうまでして『太陽の化身』をトップに立たせようとする執念は凄まじい。
昔から彼をよく知る僕としては複雑な思いだった……それはともかく、不正の証拠を押さえることは出来た。いずれ告発するタイミングが訪れるだろう。
対抗戦当日を迎える前に、悩みの種が一つ消えたのはありがたい。
今回の対抗戦は、我が国――フェーリア王国の国立競技場で行われる。
なぜか今回は王族が国立競技場の使用を許可したのだ。
今まで国立競技場は国の行事でしか使用されず、対抗戦に使うなど前代未聞である。
念のため、実は王族であるエリスに理由を調べてもらったところ、予想通り国王の私情によるものだった。
『我も戦闘を目の前で見たいもん』
ということだそうだ。エリス曰く、国王は弟の冒険譚に憧れを抱いていたらしい。この弟というのがエリスの父であり、国王と彼女は伯父と姪の関係にあたる。
血が繋がっていれば考えも似るのだろう。
国王はダンジョンに潜ることが出来ないため、こうして冒険者同士の戦いを見るのを趣味としているわけだ。今までは放映魔術による中継で観戦していたようだが、それにも飽きたらしい。なんというか、豪快な王様である。
そんな国立競技場の控室で、僕は『緑山の頂』のメンバーを激励していたのだが……
「国立競技場でやるなんて聞いてない。お腹痛くなってきた」
「そやなぁ。僕もまともに戦えるか分からへん」
出場する幹部の二人、マルクスとオルタナは緊張しているようで、いつもより表情が固かった。
対抗戦は全国に映像が流れるのが普通で、それ自体はいつも通りである。
彼らの一番の緊張の理由は、来賓に国王がいることだろう。
国王などめったにお目にかかれない存在だ。そんな人に自分の戦いを見られていると聞いたら、緊張しない方がおかしいというものだ。
「やっと戦えるのね! ローレンにぎゃふんと言わせてやるんだから!」
そう。誰もが緊張するであろうこの状況で、ミントだけは呑気に戦いを待っていた。
彼女は僕たちに心配をかけまいとしているのだろうか。それとも心の底から新しい魔術を放てることを楽しみにしているのだろうか。
どちらにせよ、緊張していないに越したことはない。彼女ならあの『碧海の白波』のギルドマスター、ローレンに勝てると僕は信じている。
対抗戦は、一対一の三本勝負。お互いに三人の代表を選出して戦わせるのだ。三本目の勝負がミントとローレンの対決になるのは目に見えている。二人とも、そういったセオリーは守るタイプだ。
となるとあと二人の順番だが――
「一番目はオルタナに行ってもらう」
「了解です。魔式拳銃は使っていいんですか?」
「うん、最初に武器の点検をされるだろうから、不意打ちは出来ないけどね」
対抗戦を行うにあたって、先に武器の点検が行われる。
武器に何か小細工をしていないか、危険な武器ではないかなどを調べるのだ。殺傷能力も普段より下げて戦うことになる。
この対抗戦に合わせて開発した魔式拳銃は既に国王の許可が下り、特許も取得している。まだこの情報は公開されていないので、『雲隠の極月』の頼れる鍛冶師――ニックの作品はこの戦いで全国にお披露目されるのだ。
ニックの最初の作品としては完璧な出だしだろう。
「じゃあ行ってきますわ」
「うん。頑張って。君なら絶対に勝てる」
僕は彼を安心させるように鼓舞する。
オルタナは頷き、マルクスと共に真剣な面持ちで控室を出た。
控室は僕とミントの二人きりだ。
「ミントさん。一つ相談したいことがあります」
「ん? どうしたの急に改まって」
「おそらくオルタナとマルクスは対戦相手を圧倒するでしょう」
「え?」
「となると三戦のうち二勝で『緑山の頂』の勝利。ミントさんの出番がなくなります。しかしせっかくミントさんも頑張って融合魔術を会得したので、ローレンに試合を提案してもらいたいんですよね」
「ちょ、ちょっと待って! 相手はB級最上位とA級冒険者よ? 確かにうちの幹部二人もロイドの特訓を頑張ってたけど、圧勝まではいかないんじゃない?」
ミントは僕の言葉が眉唾ものだと考えているらしい。
事前に提出された選手名簿で、ローレン以外の二人が何者かは分かっている。オルタナとマルクスは優秀なB級冒険者だが、スペックだけ比べると勝てる見込みは薄い。
しかしそれは少し前までの話。僕の特訓を乗り越えた二人には、B級冒険者という現在の肩書は似合わない。
「まぁもし、そんな状況になったら考えるよー」
ただ、鍛錬の詳細を知らないミントは苦笑交じりに話を終えたのだった。
そして十分後。
「なっ――!?」
「ね、言った通りになったでしょう?」
試合を終えた無傷のオルタナとマルクスが僕たちの前に立っていた。
ミントは口を大きく開けて固まってしまう。
「二人ともどうだった? 満足出来る試合だったかい?」
僕は誇らしげな二人を見ながら答えた。
「満足? 出来るも何も、魔式拳銃の一発で敵が吹っ飛んでしもたんで何も分かりませんよ」
「俺もそうですね。A級冒険者って聞いて心構えしてたのに、まさか数発殴っただけでノックダウンなんて」
オルタナとマルクスは、あまりの呆気ない終幕に手応えを感じられなかったようだった。
まずはオルタナ。彼の対戦相手は、『碧海の白波』の第三部隊を率いる女性最強守護者レオーナ。彼女の大盾はどんな攻撃でも防ぎ、隊員たちに傷一つつけさせないと聞く。
そんな彼女の大盾を、オルタナは開始一秒で魔式拳銃で貫いた。そして二発目を撃つことなく気絶させた。
次にマルクス。彼は魔導拳闘士である。簡単に言えば、魔力の宿る拳で敵を殴るスタイルだ。マルクスの対戦相手はA級冒険者のルース。彼は魔術を剣に纏わせて戦う魔剣士である。
本来なら苦戦するはずなのだが、マルクスは開始数秒でルースの剣を叩き折って破壊。そのままサンドバッグのようにルースを殴り続けて気絶させた。
観客たちはただ呆然とするのみ。こうして二戦とも開始早々に決着がつくという異例の速さで対抗戦は終わった。
「二人ともこの後から大変だろうね」
突如現れた魔弾使いと魔導拳闘士。これまでの魔術の常識を根底からひっくり返すような存在だ。もちろん魔式拳銃を作り上げたニックもだが、当分は注目の的になるだろう。
「なんで他人事なんですか。僕たちをこんな風に育ててくれたのはロイドさんですやん。ロイドさんも一緒に目立ってくれませんと」
「そうですよ。そして俺たちをこれからも責任をもって育ててくださいよ」
二人は面倒くさそうにしつつも、どこか嬉しそうに答えるのだった。最初はあれほど僕のことを嫌悪していた二人が、ここまで心を開いてくれるとは思わなかった。
やはりこうして感謝される瞬間が、助言士としてやりがいを一番感じる時だろう。
だが、そんな感慨に耽るのはまだ早い。
「さて、ミントさん。僕が先ほど話したことは覚えてますか?」
「え、えぇ。私の出番がないからローレンを説得して戦わせるとか何とか?」
「はい、僕たちは既に勝利が確定しています。しかし相手も観客も、この呆気ない戦いに満足していないでしょう。そこでミントさんが三試合目を提案するんです」
「それでさらに報酬を要求するってことね?」
「えぇ、その通りです。要求する内容は……」
それから僕はミントに、これからの展開について詳しく助言した。
†
少し時間が経ち、ミントとローレン、二人のギルドマスターがステージの上に立っていた。そこにロイドの姿はない。彼は控室でこの戦いを見守っている。
「ねぇローレン。私から提案があるのだけれど」
「ほ、ほう! ミントが交渉とは珍しい!」
二人はステージの中央に立ち、視線を交差させた。
既に『緑山の頂』の勝利は確定している。だが、ミントはローレンをステージに呼び出した。
ローレンはいつものように明るく振る舞っているが、拳はぴくぴくと震え、目頭は赤くなっている。彼は納得出来ないのだろう。自分が出る前に決着がついてしまったのだ。それも常識ではあり得ないようなやり方で。
ミントはそんな彼の想いを汲み取り、提案する。
「私たちも戦わない? もし私が負けたら『碧海の白波』の勝ちでいいよ」
「っ!? ミントが勝てばどうなる!」
想像もしていなかった言葉にローレンは眉をピクリと動かした。
このまま終われば、ノーリスクでギルド順位三位の地位を獲得出来る。しかし、彼女はそれを惜しげもなく打ち捨てようとしているのだ。ローレンが驚くのも道理である。
「私たちが勝ったら『碧海の白波』には……『太陽の化身』と縁を切ってもらおうかしら」
「なんだ、そんなことでいいのか?」
「そんなことって、碧海は『太陽の化身』とかなり親密な関係じゃなかった?」
『碧海の白波』と『太陽の化身』が密接な関係であることは周知の事実だ。
序列第二位のギルド『妖精の花園』の陥落。その目的のもと深まった関係である。同盟とまでは言えないが、それこそ合同攻略を行うほど親密な関係なのだ。
「まぁな。その条件は俺たちにとってはかなり痛手だ。だが、俺もそろそろ最近の流行りに乗らないとと思っててな」
「流行り?」
いつもと違って冷静な彼を見て、ミントは首を傾げる。
彼は声を抑えて言った。
「ロイドという男が巻き起こす流行りだ。俺の予想では『太陽の化身』は二年以内に地に落ちる」
「へぇ。ローレン。あんた賢いキャラだったんだ。ギャップ萌え狙い?」
ミントはロイドの実力が認められ、まるで自分のことのように嬉しかった。
そんな彼女を見て確信を得たローレンは、彼女の手を強く握った。
「まぁそんなところだ! よし、その提案乗ったぞ!」
「ということで審判さん。三試合目もお願いね」
こうして急遽、三回戦目が行われることになった。
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