愛する妻が置き手紙一つ置いて家出をしました。～旦那様は幼な妻を溺愛したい～

第一章

結婚記念日前日 ③

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　滑らかな肌だった。
　指先で触れると柔らかく、滑り落ちるようなきめ細かい肌で、吸い込まれる感覚に陥った。抱き締めると柔らかい躰は自分の腕からスルリと滑り落ちてしまいそうで、必死に抱き寄せた。
（このまま、溶けあって一つになれたら良いのに）
　という考えが脳裏に浮かぶ。そうすれば、一生離れないで済むのではないか──が、その考えは閨で気分が高揚し過ぎていただけで、時間が経って冷静になった今では「馬鹿な事を」である。
（一つになったら、オリヴィアの顔を見る事が叶わなくなるからな）
　触れる事も見る事も出来ないのだ。ならば、一つになんぞならなくて良い──事実イアンとオリヴィアは一つになった。『ひとつになる』という言葉は即ち『性交する』という意味で用いられる事が多いのだが、昨夜まで童貞だったイアンが知る由もない言葉である。イアンは単純にオリヴィアを取り込んで四六時中一緒に居たい、という意味合いで思ったりしただけである。しかし、その思考が「危険だな」とすぐさま悟って、脳内から弾き飛ばした。
（引き寄せた躰は柔らかかったな……胸はあんなに柔らかいものなのか……）
　胸の大きさに反して腰は細すぎる気がしたから、これから太らせることにして……胸は柔らかかった……柔らかかった。俺の手には余る大きさで、モチモチしていて掴むと指の隙間から肉がはみ出る感じ。だからと言ってハリがない訳ではないが、女性らしい柔らかさや肌感は全てあの場所に集められている、と思う。
（マシュマロのようだった）
　ふわふわな手触りだった──そこで、イアンはハッとして青褪めた。
（口にしていない──！！　食感を確かめていない──！！）
　生まれて初めて……いや赤子の時は触っているだろうが記憶にない為それは割愛するとして……揉む事に夢中過ぎて、口で愛撫し損ねた。柔らかい乳房と乳首に触りはしたが。
（その前に、あれ乳首は大人の俺が口にしていものなのか？）
　赤子だけに許された特権ではないのか──？
　イアンは五歳の頃からだが王族として育てられている。第二継承者ではあるが、跡継ぎを産む為の教育を施されていた。家庭教師から初歩の中の初歩本『女性の扱い方』を用いて、閨の授業を受けていたものの、当時のイアンは肉体を鍛える事にしか興味がなかった為、真面目に取り組んではいなかった。ただ女性と己の身体の作りが違う事や子を産む為に男が種を入れねばならぬ、といった基本的な事だけは理解した。女性のどこに触れれば感じるか、といった内容はなんとなーく聞いている、という程度だった。昨晩、オリヴィアの蜜口を舐めたのも「そうした方が膣が柔らかくなって受け入れやすくなる」「その後、清潔に保った指でこの場所を突くと濡れる」というあやふやな記憶があったから、オリヴィアとの好意中にそうした。胸の事は授業中、あったかどうかイアンは覚えていなかった。覚えているのは、「赤子はここから乳を吸います」というフレーズだけである。
（『女性の扱い方』という本は一応本棚にあるのはある）
　オリヴィアと結婚する際、「もしかしたらもしかするかも」という淡い期待があって、読もうと思って手に入れたのだが「これを読むとオリヴィアに至らぬ感情を抱いてしまう」という考え辿り着き、読むのをやめた。一ページも開いていない為、新品ではあるものの、埃を被っているはずだ。
（こっそり読むか……）
　男も吸って良い、と書いてあったら今晩すれば良い。
（手触りはマシュマロだったなら食感はどうなんだろうな）
　マシュマロを口にした時のように、もちゃもちゃ、なのか、それとも、とろける、食感なのか……。
（全部、全部、これから試せば良いんだな）
　オリヴィアと「明日も」と約束をしたのだ。これからオリヴィアと昨晩のような事が沢山できる。
　そして、記念日の朝にオリヴィアから『愛の告白』を受けるのだ。
（黒い仔犬を受け取りに行けるか……？）
　告白をされた勢いで、その場で襲ってしまいそうな気が……でも、何年も耐えてきたんだから、耐えれるよな……いや、両想いと分かった今耐える必要はないな。

「今日も絶好調だな、おい！」
　叫んだのはシェルフだ。
　イアンは書類から目を逸らし隣に座るシェルフを見ると彼は顔を真っ赤にしていた。