108 / 240
第二部 バンドー皇国編 3章
206.環境の変化に順応しようとする者は成長するが…
しおりを挟む
テル達からの情報ではこちらに着くまで数日かかるらしい。その間に俺達は訓練、ローレルとおっちゃんにはソレイユと千代ちゃん、段蔵爺さんの装備を手入れして貰っている。ソレイユの7人は以前テルとユキが作って貰い今も愛用しているオーガの骨を仕込んだレザーアーマーを仕立てて貰う。
「アタシは片目が魔眼になっちゃってから良く見えるようになったのよ。だから近接武器よりは弓の方がいいかな。」
ソレイユの7人は今回の装備の素材となったオーガとの戦いで全員が身体のどこかしらを欠損する怪我を負った。その際にライムとアクアの治癒魔法により回復したのだが、その欠損した箇所限定で水属性の魔力を纏うようになった。おそらく原因はアクアだろうが本人はそうなった原因は分からないと言っている。そんな中、エリーゼ以外の6人は身体強化だったり魔法だったり、直接戦闘に役立つ能力を身に付ける事が出来た。しかしエリーゼが身に付けたのは『魔眼』。目に魔力を流すと『良く見える』能力。
他のメンバーがどんどん『強く』なって行くのを横目に自分だけは変わらない『強さ』。何度も折れそうになった事だろう。皇女の思い、赤備えに加入する時の自分自身への誓い。それだけを支えに他の6人に置いて行かれそうな自分を奮い立たせて道を探した。
そして彼女が導き出した答えが『支援特化』だ。『魔眼』の力は単に視力向上だけではなく、『魔力』を見る事が出来る。伏兵を見破る。発動前に魔法を潰す。危険予知において仲間をサポートする重要なポジションだ。ホントは狙撃用ライフルでも持たせたら無双しそうなんだけどな。
ともあれ、他の6人のメンバーも試行錯誤する彼女を貶したり見下したりする事なく共に戦う道を模索した。そして先頃の戦闘では彼女の『魔眼』により何度も危機を脱している。そして絆はより強固なものとなった。
普段は飄々としている2人の忍び。しかし胸の内はどうなのか。2人の武器を仕立てる為の会話でこんなやり取りがあった。
「人知れず自軍を勝利に導くのが忍び。その存在すら悟られずに成し遂げるのが忍びの技量。しかしの、研鑽を積んだ技を晴れがましい舞台で披露したい、そんな思いもあるんじゃよ。」
「アタシらくのいちは男の忍びよりも下衆な存在として扱われる事が多くてねえ。まあ、武術で真向から戦う事もするが男に取り入って情報を探る事も多いだろ?好きでもない男に抱かれ、男を喜ばすための技を磨く。そんな風に思ってる輩が多くてね。もちろん間違いじゃないさ。けどそれだけじゃないんだよ。事が終わった後でこっそり泣いている娘だっているのさ。本当は身に付けた武術で役に立ちたいのにってね。」
なるほど。それじゃあ俺が2人に陽の光を浴びさせてやろう。
「爺さん、千代ちゃん。戦場での得物は何を使うんだ?」
「ほ?儂ゃ苦無や手裏剣じゃが?」
「アタシもかねぇ。あと吹き矢とか。」
「そうじゃねえよ。暗殺に使うものじゃない。俺達と戦場を駆け巡る時に使う武器だ。」
「!! なんと、儂らを戦場に?間諜の仕事ではなくかの?」
「当たり前だろ。ユキに深手を負わせるくらい強いヤツに裏方なんて勿体ねえ。諜報活動なら気にすんな。アテは別にあるから。」
「あ、あの殿?アタシはくのいちだよ?」
「それが?」
戦国の世、忍びが表舞台に立って活躍すれば当然顔も売れてしまうだろう。いくら変装するとは言っても姿形は明るみに出ない方が好ましいのは分かる。特にくのいちは男に取り入って情報を探るのだから裸ひとつで任務をこなす必要もあるだろう。変装どころの騒ぎではないはずだ。
だからこそ、この2人は表舞台に立つ事に免疫がない。でもな、ここは戦国時代じゃないんだ。それに雇い主は俺だし。
「別に堂々と顔と名前を売り出せばいいじゃないか。こっちの世界にバレたらまずい知り合いがいる訳でもないだろう?」
2人は感極まった顔で俺の前に控えた。
「殿。儂には小太刀を二振りお願いしたい。まさかこの歳になって血沸き肉躍るとはのう…」
「私には薙刀と脇差を。戦場では『くのいち』ではなく『もののふ』としての望月千代女をご覧に入れまする。」
「わかった。ガイアとローレルには言っておく。後で2人と仕様を詰めてくれ。期待しているよ。」
この2人、オンオフの切り替えが突然過ぎてびっくりするぜ…
◇◇◇
「結構集まりましたね、テルさん。」
義勇兵を募集したところ集まった冒険者や傭兵、ならず者達は200人を数えた。
「皇女殿下の命懸けの行動に胸を打たれた連中ですよ。」
少しだけ感激した表情を見せたジュリエッタだがすぐに感情を飲み込み表情を引き締める。
「期待に応えねばなりませんね…」
「確かにそうだが別に殿下おひとりで背負う物でもない。ジュリア殿下やセリカ様やカズト殿、そして私達もいる。」
ユキの言葉にジュリエッタが頷いた時、伝令が入って来た。
「申し上げます!エツリアのディアス王太子殿下が2000の援軍を率いて到着なされました!」
伝令の後をズカズカと大股で歩いて来る華美な甲冑とマントを身にまとった男。まっすぐにジュリエッタへと向かって来る。スッとジュリエッタの前に立ち塞がるテルとユキ。
その男のテルを見る目は憎悪に燃えていた。
「アタシは片目が魔眼になっちゃってから良く見えるようになったのよ。だから近接武器よりは弓の方がいいかな。」
ソレイユの7人は今回の装備の素材となったオーガとの戦いで全員が身体のどこかしらを欠損する怪我を負った。その際にライムとアクアの治癒魔法により回復したのだが、その欠損した箇所限定で水属性の魔力を纏うようになった。おそらく原因はアクアだろうが本人はそうなった原因は分からないと言っている。そんな中、エリーゼ以外の6人は身体強化だったり魔法だったり、直接戦闘に役立つ能力を身に付ける事が出来た。しかしエリーゼが身に付けたのは『魔眼』。目に魔力を流すと『良く見える』能力。
他のメンバーがどんどん『強く』なって行くのを横目に自分だけは変わらない『強さ』。何度も折れそうになった事だろう。皇女の思い、赤備えに加入する時の自分自身への誓い。それだけを支えに他の6人に置いて行かれそうな自分を奮い立たせて道を探した。
そして彼女が導き出した答えが『支援特化』だ。『魔眼』の力は単に視力向上だけではなく、『魔力』を見る事が出来る。伏兵を見破る。発動前に魔法を潰す。危険予知において仲間をサポートする重要なポジションだ。ホントは狙撃用ライフルでも持たせたら無双しそうなんだけどな。
ともあれ、他の6人のメンバーも試行錯誤する彼女を貶したり見下したりする事なく共に戦う道を模索した。そして先頃の戦闘では彼女の『魔眼』により何度も危機を脱している。そして絆はより強固なものとなった。
普段は飄々としている2人の忍び。しかし胸の内はどうなのか。2人の武器を仕立てる為の会話でこんなやり取りがあった。
「人知れず自軍を勝利に導くのが忍び。その存在すら悟られずに成し遂げるのが忍びの技量。しかしの、研鑽を積んだ技を晴れがましい舞台で披露したい、そんな思いもあるんじゃよ。」
「アタシらくのいちは男の忍びよりも下衆な存在として扱われる事が多くてねえ。まあ、武術で真向から戦う事もするが男に取り入って情報を探る事も多いだろ?好きでもない男に抱かれ、男を喜ばすための技を磨く。そんな風に思ってる輩が多くてね。もちろん間違いじゃないさ。けどそれだけじゃないんだよ。事が終わった後でこっそり泣いている娘だっているのさ。本当は身に付けた武術で役に立ちたいのにってね。」
なるほど。それじゃあ俺が2人に陽の光を浴びさせてやろう。
「爺さん、千代ちゃん。戦場での得物は何を使うんだ?」
「ほ?儂ゃ苦無や手裏剣じゃが?」
「アタシもかねぇ。あと吹き矢とか。」
「そうじゃねえよ。暗殺に使うものじゃない。俺達と戦場を駆け巡る時に使う武器だ。」
「!! なんと、儂らを戦場に?間諜の仕事ではなくかの?」
「当たり前だろ。ユキに深手を負わせるくらい強いヤツに裏方なんて勿体ねえ。諜報活動なら気にすんな。アテは別にあるから。」
「あ、あの殿?アタシはくのいちだよ?」
「それが?」
戦国の世、忍びが表舞台に立って活躍すれば当然顔も売れてしまうだろう。いくら変装するとは言っても姿形は明るみに出ない方が好ましいのは分かる。特にくのいちは男に取り入って情報を探るのだから裸ひとつで任務をこなす必要もあるだろう。変装どころの騒ぎではないはずだ。
だからこそ、この2人は表舞台に立つ事に免疫がない。でもな、ここは戦国時代じゃないんだ。それに雇い主は俺だし。
「別に堂々と顔と名前を売り出せばいいじゃないか。こっちの世界にバレたらまずい知り合いがいる訳でもないだろう?」
2人は感極まった顔で俺の前に控えた。
「殿。儂には小太刀を二振りお願いしたい。まさかこの歳になって血沸き肉躍るとはのう…」
「私には薙刀と脇差を。戦場では『くのいち』ではなく『もののふ』としての望月千代女をご覧に入れまする。」
「わかった。ガイアとローレルには言っておく。後で2人と仕様を詰めてくれ。期待しているよ。」
この2人、オンオフの切り替えが突然過ぎてびっくりするぜ…
◇◇◇
「結構集まりましたね、テルさん。」
義勇兵を募集したところ集まった冒険者や傭兵、ならず者達は200人を数えた。
「皇女殿下の命懸けの行動に胸を打たれた連中ですよ。」
少しだけ感激した表情を見せたジュリエッタだがすぐに感情を飲み込み表情を引き締める。
「期待に応えねばなりませんね…」
「確かにそうだが別に殿下おひとりで背負う物でもない。ジュリア殿下やセリカ様やカズト殿、そして私達もいる。」
ユキの言葉にジュリエッタが頷いた時、伝令が入って来た。
「申し上げます!エツリアのディアス王太子殿下が2000の援軍を率いて到着なされました!」
伝令の後をズカズカと大股で歩いて来る華美な甲冑とマントを身にまとった男。まっすぐにジュリエッタへと向かって来る。スッとジュリエッタの前に立ち塞がるテルとユキ。
その男のテルを見る目は憎悪に燃えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。