いや、自由に生きろって言われても。

SHO

文字の大きさ
109 / 240
第二部 バンドー皇国編 3章

207.器の違い

しおりを挟む
 「こうしてカズト様の元には人が集まって来るのですね。」

 「まあね。でもカズにぃだから出来る事で他の人じゃこうは行かないでしょ。」

 「そうですね…人の貴賤を問わず、いえ、もはや人かどうかすら関係なく受け入れる度量の広さと何者にも媚びないその強さ。敵には容赦しない苛烈さを持っていながら従っている者は恐怖からではない。」

 「あははっ!そんなに大袈裟なもんじゃないよ?カズにぃね、捨てられてる動物とかほっとけないない人なの。後先考えずに助けちゃってさ。動物に好かれやすい性質タチのクセにそんな事するからさ、そのうち動物園でも作るんじゃないかって心配だよ。」

 「…私やセリカ様、精霊王様ですら捨て犬や捨て猫と同じですか…」

 「そうだね。相手の立場や身分で差別しないし助けるにあたって見返りを求めるでもない。人も動物もカズにぃからすれば一緒。」

 おい、さっきから黙って聞いてれば。ライム結構ひどくない?しかも全然フォローになってねえし。

 「そんな人がさ、居場所をくれたり命を救ってくれたらさ、もう一生掛けて恩返ししたいって思っちゃうよ…」

 あれ?

 「あっ!分かります!すっごく分かりますよライム様!!!」

 俺は今ソレイユの訓練を見てる。狼たちとの連携とか魔法の運用とかなかなか内容の濃い訓練だ。胡坐をかいて座って見ているんだが背中には横たわっている巨大な銀狼、フェンリルのエスプリが、膝の中にはビートが黒猫姿で丸くなっている。モフリストとしては極楽状態だ。でもな。

 「お前らな、人の噂は聞こえない所でやれよ…」

 すぐ横でライムとジュリアが女子トークしてるんだよ。

 「何言ってるのさ?どれだけカズにぃへの愛が深いかこれからカズにぃに聞こえるように話すんだから。」

 それ、話さなきゃいけない??充分伝わってるから大丈夫だよ??

 【ふむ、マスターよ、取り込み中済まぬがステイブル・ブリジで面白い事になっておるのじゃ。】

 ん?アクアに連絡って事はユキに何かあったか?

 【いえ、正確にはテルにも、ですがね。】

 実況中継してもらうか。

◇◇◇

 「下郎、そこをどけ。私はジュリエッタに用があるのだ。」

 「失礼ですがあなたはどちら様ですか?皇女殿下を呼び捨てするような無礼な方を近づける訳には行かないのですが。」

 いきなり乱入してきて偉そうな態度のディアスにテルはやんわりとした口調だがきっぱりと拒絶の意を示す。視線は据わり頬の傷も相まって関わりたくない人種の人が逆に逃げ出しそうな迫力だ。

 ユキは視線でジュリエッタに確認するがジュリエッタは首を振る。

 「どうやら皇女殿下もあなたの事をご存知無いようだ。お引き取りを。」

 「くっ…私はエツリア王国王太子、ディアスだ!」

 以前エツリアへ助力を求めに行ったジュリエッタだが、謁見の間にディアスはいなかった。面識は無い。

 「その王太子殿下が手順も踏まずになんとも情けない事ですね。」

 今度はジュリエッタが氷の視線で一言浴びせる。

 「なっ!私は貴様の要求に応えて援軍を率いてわざわざやって来たのだぞ?無礼は貴様の方だろうが。」

 そもそもこのディアス、強行に出陣を主張したのは次世代の近隣諸国の王、つまりセリカや双子の皇女の『出来の良さ』に危機感を覚えたからであった。このままでは自分は埋没してしまう。その前に戦で手柄を立てて自分を認めさせる。危機感を持って行動を起こす。これは悪い事とは言い切れないだろう。

 しかし父王が言った『テルに従え』という言葉。これが我慢ならなかった。おそらく父は自分の器を見定めようとしている。それはなんとなく理解した。しかしディアスは間違った方向に解釈してしまった。傲慢な態度で接し、自分を大きくみせてやろうと。なんとも幼い思考回路だがこれが現時点でのディアスと言う人間なのだろう。

 「あら、それは失礼致しました。ご無礼、お許し下さい。重ねて、今回の派兵に感謝致します。」

 まさに口先だけのジュリエッタの謝罪と謝辞。

 「き、きさまぁ!!!」

 ジュリエッタに掴みかかろうとしたディアス。しかしユキがフッと動いた時にはディアスは宙を舞い床に叩き付けられていた。そして喉元にはテルの愛刀が抜き身で突き付けられていた。

 「ぐっ…貴様ら…私に向かってこのような真似をしてタダで済むと思っているのか!?」

 「殿下!貴様ら殿下に何を!」

 駆け寄って来るディアスの側近たちの前にユキが立ちふさがり威圧する。

 「まず自分達の主がどれだけの無礼を働いたか聞いたらどうだ?手順も踏まず他国の城内にズカズカと踏み込み皇女殿下に手を上げたのだ。今首をやるからそこで待っていろ。」

 「今ユキが言った通りだ。そして俺達はジュリエッタ殿下に雇われた護衛。危害を及ぼす者は王子だろうが王だろうが排除する。覚悟はいいか?」

 それを聞いたディアスは口元を歪めてニヤリと笑う。

 「いいのか?貴様。私は知っているぞ?」

 「?」

 「貴様、キャスター辺境伯家の長男にして一家皆殺しの犯人だろう?この事が知れればお前はエツリア中のお尋ね者だ。」
しおりを挟む
感想 591

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。