200 / 240
西国編
小手調べのつもりだったんだが大反響?
しおりを挟む
「ちゃんと追跡出来てるか?」
「うむ、問題ないようじゃな。」
敵の船団もあとわずか、というところでアクアによる潮流の包囲網をワザと緩めていく。あくまで自然現象の範疇に収まりそうな絶妙さだ。残り10艘にも満たない敵船は好機とばかりに逃げていくが、途中から水中に追跡者が居る事など必死で逃げる彼等が気付くはずもなく。
「陽動で何艘か囮になるかとも思ったけどその辺はどうです?アクア様。」
「そんな余裕は無いようじゃな。纏まって逃げておる。拠点に行くのは間違いなかろう。」
傭兵の経験があるテルとしては比較的当たり前の行動を懸念しただけの事だがその心配はないらしい。シャチによる追跡は群れで行っており、標的が何手かに別れても逃がさず追跡できるようにしていた。やるな、ヌシのヤツ。
「よし、追跡が出来てるんなら問題ない。みんなお疲れ様。これより帰投する。エスプリ、180度反転。」
「反転180度、よーそろー。」
お?エスプリのヤツ、どこで覚えたんだよそんな専門用語。渋い声でそんな返しをされちゃ俺も面舵とか取り舵とか言わなくちゃダメな流れになるじゃねえか。
ハカタの造船ドックに帰投し、イセカイ号をドック内部に停泊させるとたちまち人だかりが出来上がった。造船に携わってる職人達だな。
「旦那、お疲れさんでした。船のメンテナンスはどうしやす?」
話し掛けてきたのは船大工の棟梁だ。この男もゴツい外見なんだが意外と気配りが出来るんだよな。でなきゃ頭領とか務まらないか。
「そうだな…攻撃は全く受けていないんだが…建造中の船に支障が出ないなら頼めるか?」
「へへっ!単艦で敵の大船団を殲滅してくださったんだ、メンテはするのが当然!それに旦那たちの戦いを見てこいつ等も気合が漲ってましてねぇ。逆に工期を短縮して見せまさぁ!」
「そ、そうなのか?じゃあ済まないがよろしく頼むよ。」
「へい!旦那たちはゆっくり休んでくだせえ!おう、てめえら!ちゃきちゃき取っ掛かりやがれィ!」
《へいっ!》
ははは。ホントに気合が入ってやがるな。ああいう気風のいいのは嫌いじゃないが、夜通しの戦闘の後だしみんなを休ませたいから早々にドックを離れて砦の中の屋敷へ移動するために砦へと歩みを進める。
「……どう思う?これ。」
「まあ、あれだけ明るくして派手にブチかませばねぇ…」
「あいつらも徹夜で観戦してたってか?」
「少なくとも敵船団が来襲してくる情報は流れたんだからぐっすり眠っている訳にもいかないですよ、カズトさん。」
まあ、それもそうか。一応迎撃の為戦闘待機くらいはしていただろうな。と言うのは、砦の門の外に守備兵が総出で俺達を出迎えているようなんだ。その集団の先頭には愛用の槍を肩に構えたホンダ卿がいる。
「あー、敵は殲滅した。いくらか逃がして泳がせているから直に敵の拠点も割れると思う。こちらの被害はない。」
ホンダ卿に向けて一応戦勝報告をする。
《うおおおおおおおお!!!》
途端に兵達の歓声が爆発した。しばらく雷鳴の如き歓声で盛り上がっていたが、ホンダ卿が左手をサッと上げるとピタリと歓声が止む。
「見事。」
ホンダ卿の短すぎる労いの言葉。しかしその一言には万感の思いが込められている事が伝わってくる。その思いを感じた俺達もみな自然と笑顔になった。恐らく、ゲンの来襲以来ここまでの圧勝は初めてなんだろう。敵は海から小突いてさっと逃げる戦いに終始してたって言うしな。それだけに今回の圧勝は希望をもたらした筈だ。
「次は新造艦にホンダ卿も乗り込んで思う存分やればいい。なかなか爽快ですよ。」
「うむ。是非にも。」
男臭い笑みを交換しながら拳を突き合わせる。
そんな短いやりとりをして俺達はあてがわれた屋敷へ戻って休息をとった。
「殿、今戻ったぞい。」
「アタシらいない間にド派手にやってくれちゃって。寂しいじゃないか。」
俺達が屋敷に戻り、充分な休息をとった頃を見計らうかのようなタイミングでハカタの街へ偵察に出ていた爺さんと千代ちゃんが戻って来た。まあ、確かに今回はタイミングが悪かったがそれを俺に言われてもなぁ…
「文句ならゲンの奴らに言ってくれ。で、どうだった?」
「うむ。このチンゼイを治める御仁方はなかなかのものじゃった。配下の裏切りまでは分からんが、御領主様方は内通の心配はいらんわい。」
「ただ、隣接する領主同士の仲がよろしくないのが玉に瑕だけどねぇ。」
まあそれくらいなら問題ないだろう。仲良くなれとは言わないが、ゲンを退けるまでの間くらいは休戦協定を結んで貰う。強引にでもな。
「じゃが、その心配もいらんかもしれん。殿、諸侯会議はあっさりと終わるやもしれんぞい?」
「へえ?どうしてだ?ここらの領主達は良くも悪くも頑固者が多いって話だが。」
「昨夜の戦じゃよ。殿を中心にまとまれば勝てる。その思いで諸侯は一致し始めたようじゃ。」
「ハカタの街からでも良く見えたよ。お館様の、ありゃあ『天罰』かい?いつもと色が違ってたけど。」
それは朗報だな。瓢箪から駒というか棚から牡丹餅というか。頑固な爺さん達を説得するのが一番面倒だったし。
「ま、何にしても悪い話が無くて何よりだ。二人共ありがとな。ゆっくり休んでくれ。」
「そうだねえ。でもまだ諸侯が揃った訳じゃないから安心はできない。少し休んだらアタシらはもう一仕事してくるさね。」
全く、日本人ってのは昔から勤勉なんだな。仲間が働いてたら俺ものんびりしてられねえだろが。
「サンタナ、アクア、スプライト、イオタ。多重融合に慣れておきたい。悪いが付き合ってくれ。」
負担が大きい多重融合にも慣れておく為に鍛錬しておこう。
「うむ、問題ないようじゃな。」
敵の船団もあとわずか、というところでアクアによる潮流の包囲網をワザと緩めていく。あくまで自然現象の範疇に収まりそうな絶妙さだ。残り10艘にも満たない敵船は好機とばかりに逃げていくが、途中から水中に追跡者が居る事など必死で逃げる彼等が気付くはずもなく。
「陽動で何艘か囮になるかとも思ったけどその辺はどうです?アクア様。」
「そんな余裕は無いようじゃな。纏まって逃げておる。拠点に行くのは間違いなかろう。」
傭兵の経験があるテルとしては比較的当たり前の行動を懸念しただけの事だがその心配はないらしい。シャチによる追跡は群れで行っており、標的が何手かに別れても逃がさず追跡できるようにしていた。やるな、ヌシのヤツ。
「よし、追跡が出来てるんなら問題ない。みんなお疲れ様。これより帰投する。エスプリ、180度反転。」
「反転180度、よーそろー。」
お?エスプリのヤツ、どこで覚えたんだよそんな専門用語。渋い声でそんな返しをされちゃ俺も面舵とか取り舵とか言わなくちゃダメな流れになるじゃねえか。
ハカタの造船ドックに帰投し、イセカイ号をドック内部に停泊させるとたちまち人だかりが出来上がった。造船に携わってる職人達だな。
「旦那、お疲れさんでした。船のメンテナンスはどうしやす?」
話し掛けてきたのは船大工の棟梁だ。この男もゴツい外見なんだが意外と気配りが出来るんだよな。でなきゃ頭領とか務まらないか。
「そうだな…攻撃は全く受けていないんだが…建造中の船に支障が出ないなら頼めるか?」
「へへっ!単艦で敵の大船団を殲滅してくださったんだ、メンテはするのが当然!それに旦那たちの戦いを見てこいつ等も気合が漲ってましてねぇ。逆に工期を短縮して見せまさぁ!」
「そ、そうなのか?じゃあ済まないがよろしく頼むよ。」
「へい!旦那たちはゆっくり休んでくだせえ!おう、てめえら!ちゃきちゃき取っ掛かりやがれィ!」
《へいっ!》
ははは。ホントに気合が入ってやがるな。ああいう気風のいいのは嫌いじゃないが、夜通しの戦闘の後だしみんなを休ませたいから早々にドックを離れて砦の中の屋敷へ移動するために砦へと歩みを進める。
「……どう思う?これ。」
「まあ、あれだけ明るくして派手にブチかませばねぇ…」
「あいつらも徹夜で観戦してたってか?」
「少なくとも敵船団が来襲してくる情報は流れたんだからぐっすり眠っている訳にもいかないですよ、カズトさん。」
まあ、それもそうか。一応迎撃の為戦闘待機くらいはしていただろうな。と言うのは、砦の門の外に守備兵が総出で俺達を出迎えているようなんだ。その集団の先頭には愛用の槍を肩に構えたホンダ卿がいる。
「あー、敵は殲滅した。いくらか逃がして泳がせているから直に敵の拠点も割れると思う。こちらの被害はない。」
ホンダ卿に向けて一応戦勝報告をする。
《うおおおおおおおお!!!》
途端に兵達の歓声が爆発した。しばらく雷鳴の如き歓声で盛り上がっていたが、ホンダ卿が左手をサッと上げるとピタリと歓声が止む。
「見事。」
ホンダ卿の短すぎる労いの言葉。しかしその一言には万感の思いが込められている事が伝わってくる。その思いを感じた俺達もみな自然と笑顔になった。恐らく、ゲンの来襲以来ここまでの圧勝は初めてなんだろう。敵は海から小突いてさっと逃げる戦いに終始してたって言うしな。それだけに今回の圧勝は希望をもたらした筈だ。
「次は新造艦にホンダ卿も乗り込んで思う存分やればいい。なかなか爽快ですよ。」
「うむ。是非にも。」
男臭い笑みを交換しながら拳を突き合わせる。
そんな短いやりとりをして俺達はあてがわれた屋敷へ戻って休息をとった。
「殿、今戻ったぞい。」
「アタシらいない間にド派手にやってくれちゃって。寂しいじゃないか。」
俺達が屋敷に戻り、充分な休息をとった頃を見計らうかのようなタイミングでハカタの街へ偵察に出ていた爺さんと千代ちゃんが戻って来た。まあ、確かに今回はタイミングが悪かったがそれを俺に言われてもなぁ…
「文句ならゲンの奴らに言ってくれ。で、どうだった?」
「うむ。このチンゼイを治める御仁方はなかなかのものじゃった。配下の裏切りまでは分からんが、御領主様方は内通の心配はいらんわい。」
「ただ、隣接する領主同士の仲がよろしくないのが玉に瑕だけどねぇ。」
まあそれくらいなら問題ないだろう。仲良くなれとは言わないが、ゲンを退けるまでの間くらいは休戦協定を結んで貰う。強引にでもな。
「じゃが、その心配もいらんかもしれん。殿、諸侯会議はあっさりと終わるやもしれんぞい?」
「へえ?どうしてだ?ここらの領主達は良くも悪くも頑固者が多いって話だが。」
「昨夜の戦じゃよ。殿を中心にまとまれば勝てる。その思いで諸侯は一致し始めたようじゃ。」
「ハカタの街からでも良く見えたよ。お館様の、ありゃあ『天罰』かい?いつもと色が違ってたけど。」
それは朗報だな。瓢箪から駒というか棚から牡丹餅というか。頑固な爺さん達を説得するのが一番面倒だったし。
「ま、何にしても悪い話が無くて何よりだ。二人共ありがとな。ゆっくり休んでくれ。」
「そうだねえ。でもまだ諸侯が揃った訳じゃないから安心はできない。少し休んだらアタシらはもう一仕事してくるさね。」
全く、日本人ってのは昔から勤勉なんだな。仲間が働いてたら俺ものんびりしてられねえだろが。
「サンタナ、アクア、スプライト、イオタ。多重融合に慣れておきたい。悪いが付き合ってくれ。」
負担が大きい多重融合にも慣れておく為に鍛錬しておこう。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。