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訳あって目立つのが嫌で大人しくして居た私を、無能な女と決め付け捨てた婚約者は妹を選びました。

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 大人しい性格で…目立つのが苦手な私。

 そしてある理由から、極力目立たないよう大人しく暮らして居たのだが…それを理由に、婚約者に婚約破棄を告げられた─。



「お前のような無能な女はもう要らない…俺は、お前の妹と婚約する!」

「私が、無能…?」

「お前にはこれと言って取柄もないし…ずば抜けた能力もないじゃないか。それに比べお前の妹はどうだ。魔力が強いと大変評判で、彼女自身も皆に魔法を見せ自分の力をきちんと証明して居るぞ?」



 あの子…まだそんな事をして居たのね─。

 彼の言葉に、私は内心呆れてしまった。



「婚約するなら、俺はそんな力を持った女の方が良い。今後も何かと俺の役に立ってくれそうだからな。地味で何の力もないお前では役不足だ。」



 どうやら彼は自分の願望を叶える事に夢中で、婚約前に私が話した事を忘れてしまったようね。



 でもまぁ、それでもいいわ。

 だって彼には、ちっとも大事にされて居なかったし…ここで彼と別れても、私には何の支障もないもの─。



 そう思った私は、彼の要求を受け入れるのだった─。



(婚約者視点)



「嬉しい!ちゃんとお姉様と別れてくれたのね!」

「あぁ、君の言う通りにしたよ。」

 あの女を家から追い出した後…俺はすぐに、あいつの妹をこの家に呼び寄せた。



「君の魔力は実に素晴らしい…。魔力持ちは貴重だし、この先その力で俺に幸運と繁栄をもたらしてくれ。」

「勿論、私に任せておいて─!」



 ところが、その数日後─。

 突然屋敷に憲兵が押しかけて来て、彼女を罪人として捕らえると言う。



「か、彼女が一体何をしたと言うんだ!?」

「この女は禁じられて居る魔法を用い、人の心を魅了した。このままでは危険だという事で、魔力を剥奪…その後、この国から追放される。」



 そして彼女は、縄をかけられ連行されてしまった。



「み、魅了だって?じゃあ、俺が彼女を素晴らしいと思ったのは…婚約者にしたいと思ったのはそのせいなのか…?だったら俺があいつを捨てた事は、間違いだったんじゃ─!?」



(ヒロイン視点)



「…それで、私の所に来たんですね?」

「まさかあの子が、そんな悪女だった何て…。俺は、すっかり騙されてしまったよ。」

「あの子が使って居たのは、古来から伝わる闇魔法の一種です。それが分かった時、私はあの子に忠告しました。人前で、その魔法を見せてはいけない…。自分の力を人にひけらかす事はしないようにと─。でもあの子はちっとも言う事を聞かず、ついには憲兵の目に留まりこんな事に─。」

「闇魔法を使えるという事は、あの子は闇の魔力の持ち主か。そう言えば…以前あの子は、お前にも魔力があると言って居たが…果たしてどれほどの力の持ち主なんだ?」



 そう尋ねる彼の目は、期待に満ちて居る。

 恐らく、私の力量によっては復縁してやってもいいと、そう思って居るのだろう─。



「…婚約前に言いましたよね?私は、自分の力をひけらかすような事はしたくないと─。私がそんな事をしたら、後が大変だから、って─。」

「そうだったか?まぁ、いいじゃないか…出し惜しみせずお前の力をここで証明してくれよ。そうするまで、俺は帰らないからな!」



 一歩も引き下がらない彼にこれではらちが明かないと思った私は、自身の腕にある腕輪を外したが…その瞬間、私の身体はものすごい光に包まれた。



「ま、眩しい…!目が…目が痛い─!」



 するとその光をまともに見てしまった彼は…目を抑え、その場に蹲った。



「これで分ったでしょう?私が、自分の力を人前で見せない訳が─。私は、とてつもない光の魔力の持ち主なの。その為、普段はこの魔道具の腕輪でその力を抑え込んで居る。するとこの秘密を嗅ぎ付けた今は亡きあなたのお父様が、あなたの婚約者になるよう要求して来た。私の家は妹の浪費で借金を抱えて居たから、その申し出を断る事が出来なくて…。でも結局、私はあなたから婚約破棄されてしまったけれどね─。」

「わ、分かった…もう分かったから、その光を抑えてくれ─!」



 その後、彼は私の力に恐れをなしたのか床を這いずり逃げて行った。



 しかし後から聞いた話では…彼は余りの光に目が見えなくなってしまったそうで…そのショックから、心身を病んでしまったらしい



 妹の闇魔法でその身が穢れて居たから、私の光の魔力を浴びた事が余計に堪えたのでしょう…。

 でも彼が私に力を見せろと要求して来たんだから、私には何も責任は無いわ─。



 この件があっても、私は変わらずこの力を人前で見せないよう…目立たないよう、大人しく暮らす事を続けて居たが…同じく光の魔力を持った殿方と運命的に出会い、意気投合─。

 後に、その方と婚約する事が決まった。



 彼は同じ力を持つが故に、私が目立たなくしていても私の力の凄さにすぐに気付き…そしてそんな私を受け入れてくれたのだ。



 余りに強い力を持つが故に、これまでずっと自分を抑え込み生きて来たけれど…そんな私を受け入れ、こうして愛してくれる人と漸く出会う事が出来て私はこれで幸せになれるわね─。
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