ガラスの靴は誰のもの?〜王子様あなたのことを最大限利用させて頂きます〜

kfa

文字の大きさ
2 / 8

死んだはずの母とトラウマの葬儀、そして奇妙な家族事情

しおりを挟む
「もぅ…そんなに怒って…お母さん悲しい…。」



「その理由の一つ目はお母様!あなたよ!!病死して、この世に居るはずのない人間が、こんな事で悲しんでいる場合じゃないでしょう!!」



何とこの年齢不詳な女性はシンドラの母だった!
しかも、既に他界した筈の人間だったのである。



「だって……人付き合いに疲れちゃったんだもん。」



悪びれる様子を見せないこの母は、シンドラが幼少期の頃に突然、『私、もう引き籠って生きていきたい。だから、死んだことにしてちょうだい。』と、言い放ち、どこから手に入れたかは知れない棺をベッド下から引きずり出すと、そのまま屋根裏部屋へ引き籠った。



「だもんじゃない!だもんじゃ!!いきなり葬儀屋がやって来たこっちの身にもなれ!あれは最早!トラウマよ!!」



母のその行動を説明しに向かった父に、放っておくようにと言われたのも束の間に、突然屋敷のチャイムが鳴り響いた。
玄関のドアを開けると、悲壮な顔をした黒ずくめの二人組に『この度は……ご愁傷さまです。』と声を掛けられ、霊柩車まで屋敷に到着してしまった。
父と二人青い顔になって驚愕したが、もうどうにもならない状況に、急遽葬儀を開き、空の棺を土の中に埋めたのである。



「しかも!話を聞きつけて集まった親戚や近隣住民の人達に後日いくら慰められても、土深くに埋めた棺で眠っているはずの当の本人は、屋根裏部屋で悠々自適に生活していたのだから、外で声を掛けられるだけならまだしも、屋敷の中で対応しなきゃならない時には、お父様と二人いつも気が気じゃなくて、涙の一滴も出なかったのよ!!」



「大変だったのね~。」



「…ッチ!それに、どうしても事業のパーティーで夫妻での参加を迫られたお父様が、お母様の友人である、お義母様に事情を伝えて、再婚してもらったじゃない!!ここまで聞いて、そろそろ少しは悪いと思わないの!?」



「それは……思うわよ。だから作ってくれる料理だって好き嫌いもしていないし……」



「子供か!!」



何年経っても全く変わらない母の態度に毎回腹が立つ。
そして、友人だった縁で、初対面の日から何かと気を使ってくれる、優しい義母と、義姉二人には、こんな母の世話をさせ続けていることに、シンドラは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



「だっだって…だって…お母さん本当に限界だったんだもん!!もぅ…このままって…だからっそんなに怒らないでよ~っひっ、うっ、うっ、う……」



「あのね…お母様?お父様が生きていた頃に遺してくれた財産でなんとか暮らしてきたけれど、そろそろ底をつきかけているの、知っているわよね?それに未だ、私を疎んでいるように見られている、お義母様達は半ばうつ状態になっているし!!引き篭もりの元気な暇人が嘘泣きしている暇なんてないでしょ!」



「……ダメかぁ。」



「ダメに決まっているでしょう!!」



顔を覆っていた手を広げおちゃらけて見せる母。
これが実母なのだからと情けなくなる。



「それに、誰が今後この家族の家計を維持するの?」



「それはもちろん!!……シンドラちゃん?」



「そうよね。この状況ではそうなるわよね。」



いい笑顔で伝えてくる母に、冷めた瞳を向けその言葉を肯定してみせる。



「うん!うん!!」



「そして、私が王子様と結婚したら?」



「みんな一緒に悠々自適な生活?」



「お母様ーー。」



ようやく自分の発言を肯定され嬉しそうな母に、全く見えていない現実を突きつけるために質問をしてみると、思った通りの答えが返ってきた。



そして私は母に向けて笑みを深くした。



「んな訳あるかーー!!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

【完結】無罪なのに断罪されたモブ令嬢ですが、神に物申したら上手くいった話

もわゆぬ
恋愛
この世は可笑しい。 本当にしたかも分からない罪で”悪役”が作り上げられ断罪される。 そんな世界にむしゃくしゃしながらも、何も出来ないで居たサラ。 しかし、平凡な自分も婚約者から突然婚約破棄をされる。 隣国へと逃亡したが、よく分からないこんな世界に怒りが収まらず神に一言物申してやろうと教会へと向かうのだった… 【短編です、物語7話+‪α‬で終わります】

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...