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死んだはずの母とトラウマの葬儀、そして奇妙な家族事情
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「もぅ…そんなに怒って…お母さん悲しい…。」
「その理由の一つ目はお母様!あなたよ!!病死して、この世に居るはずのない人間が、こんな事で悲しんでいる場合じゃないでしょう!!」
何とこの年齢不詳な女性はシンドラの母だった!
しかも、既に他界した筈の人間だったのである。
「だって……人付き合いに疲れちゃったんだもん。」
悪びれる様子を見せないこの母は、シンドラが幼少期の頃に突然、『私、もう引き籠って生きていきたい。だから、死んだことにしてちょうだい。』と、言い放ち、どこから手に入れたかは知れない棺をベッド下から引きずり出すと、そのまま屋根裏部屋へ引き籠った。
「だもんじゃない!だもんじゃ!!いきなり葬儀屋がやって来たこっちの身にもなれ!あれは最早!トラウマよ!!」
母のその行動を説明しに向かった父に、放っておくようにと言われたのも束の間に、突然屋敷のチャイムが鳴り響いた。
玄関のドアを開けると、悲壮な顔をした黒ずくめの二人組に『この度は……ご愁傷さまです。』と声を掛けられ、霊柩車まで屋敷に到着してしまった。
父と二人青い顔になって驚愕したが、もうどうにもならない状況に、急遽葬儀を開き、空の棺を土の中に埋めたのである。
「しかも!話を聞きつけて集まった親戚や近隣住民の人達に後日いくら慰められても、土深くに埋めた棺で眠っているはずの当の本人は、屋根裏部屋で悠々自適に生活していたのだから、外で声を掛けられるだけならまだしも、屋敷の中で対応しなきゃならない時には、お父様と二人いつも気が気じゃなくて、涙の一滴も出なかったのよ!!」
「大変だったのね~。」
「…ッチ!それに、どうしても事業のパーティーで夫妻での参加を迫られたお父様が、お母様の友人である、お義母様に事情を伝えて、再婚してもらったじゃない!!ここまで聞いて、そろそろ少しは悪いと思わないの!?」
「それは……思うわよ。だから作ってくれる料理だって好き嫌いもしていないし……」
「子供か!!」
何年経っても全く変わらない母の態度に毎回腹が立つ。
そして、友人だった縁で、初対面の日から何かと気を使ってくれる、優しい義母と、義姉二人には、こんな母の世話をさせ続けていることに、シンドラは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「だっだって…だって…お母さん本当に限界だったんだもん!!もぅ…このままって…だからっそんなに怒らないでよ~っひっ、うっ、うっ、う……」
「あのね…お母様?お父様が生きていた頃に遺してくれた財産でなんとか暮らしてきたけれど、そろそろ底をつきかけているの、知っているわよね?それに未だ、私を疎んでいるように見られている、お義母様達は半ばうつ状態になっているし!!引き篭もりの元気な暇人が嘘泣きしている暇なんてないでしょ!」
「……ダメかぁ。」
「ダメに決まっているでしょう!!」
顔を覆っていた手を広げおちゃらけて見せる母。
これが実母なのだからと情けなくなる。
「それに、誰が今後この家族の家計を維持するの?」
「それはもちろん!!……シンドラちゃん?」
「そうよね。この状況ではそうなるわよね。」
いい笑顔で伝えてくる母に、冷めた瞳を向けその言葉を肯定してみせる。
「うん!うん!!」
「そして、私が王子様と結婚したら?」
「みんな一緒に悠々自適な生活?」
「お母様ーー。」
ようやく自分の発言を肯定され嬉しそうな母に、全く見えていない現実を突きつけるために質問をしてみると、思った通りの答えが返ってきた。
そして私は母に向けて笑みを深くした。
「んな訳あるかーー!!」
「その理由の一つ目はお母様!あなたよ!!病死して、この世に居るはずのない人間が、こんな事で悲しんでいる場合じゃないでしょう!!」
何とこの年齢不詳な女性はシンドラの母だった!
しかも、既に他界した筈の人間だったのである。
「だって……人付き合いに疲れちゃったんだもん。」
悪びれる様子を見せないこの母は、シンドラが幼少期の頃に突然、『私、もう引き籠って生きていきたい。だから、死んだことにしてちょうだい。』と、言い放ち、どこから手に入れたかは知れない棺をベッド下から引きずり出すと、そのまま屋根裏部屋へ引き籠った。
「だもんじゃない!だもんじゃ!!いきなり葬儀屋がやって来たこっちの身にもなれ!あれは最早!トラウマよ!!」
母のその行動を説明しに向かった父に、放っておくようにと言われたのも束の間に、突然屋敷のチャイムが鳴り響いた。
玄関のドアを開けると、悲壮な顔をした黒ずくめの二人組に『この度は……ご愁傷さまです。』と声を掛けられ、霊柩車まで屋敷に到着してしまった。
父と二人青い顔になって驚愕したが、もうどうにもならない状況に、急遽葬儀を開き、空の棺を土の中に埋めたのである。
「しかも!話を聞きつけて集まった親戚や近隣住民の人達に後日いくら慰められても、土深くに埋めた棺で眠っているはずの当の本人は、屋根裏部屋で悠々自適に生活していたのだから、外で声を掛けられるだけならまだしも、屋敷の中で対応しなきゃならない時には、お父様と二人いつも気が気じゃなくて、涙の一滴も出なかったのよ!!」
「大変だったのね~。」
「…ッチ!それに、どうしても事業のパーティーで夫妻での参加を迫られたお父様が、お母様の友人である、お義母様に事情を伝えて、再婚してもらったじゃない!!ここまで聞いて、そろそろ少しは悪いと思わないの!?」
「それは……思うわよ。だから作ってくれる料理だって好き嫌いもしていないし……」
「子供か!!」
何年経っても全く変わらない母の態度に毎回腹が立つ。
そして、友人だった縁で、初対面の日から何かと気を使ってくれる、優しい義母と、義姉二人には、こんな母の世話をさせ続けていることに、シンドラは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「だっだって…だって…お母さん本当に限界だったんだもん!!もぅ…このままって…だからっそんなに怒らないでよ~っひっ、うっ、うっ、う……」
「あのね…お母様?お父様が生きていた頃に遺してくれた財産でなんとか暮らしてきたけれど、そろそろ底をつきかけているの、知っているわよね?それに未だ、私を疎んでいるように見られている、お義母様達は半ばうつ状態になっているし!!引き篭もりの元気な暇人が嘘泣きしている暇なんてないでしょ!」
「……ダメかぁ。」
「ダメに決まっているでしょう!!」
顔を覆っていた手を広げおちゃらけて見せる母。
これが実母なのだからと情けなくなる。
「それに、誰が今後この家族の家計を維持するの?」
「それはもちろん!!……シンドラちゃん?」
「そうよね。この状況ではそうなるわよね。」
いい笑顔で伝えてくる母に、冷めた瞳を向けその言葉を肯定してみせる。
「うん!うん!!」
「そして、私が王子様と結婚したら?」
「みんな一緒に悠々自適な生活?」
「お母様ーー。」
ようやく自分の発言を肯定され嬉しそうな母に、全く見えていない現実を突きつけるために質問をしてみると、思った通りの答えが返ってきた。
そして私は母に向けて笑みを深くした。
「んな訳あるかーー!!」
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