ガラスの靴は誰のもの?〜王子様あなたのことを最大限利用させて頂きます〜

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作戦開始!鋼の右足を持つお義姉様登場!

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特設の台が設置された広場に集まった大勢の令嬢達に、何が始まるのかと民衆も押し寄せ、出店を開き、さながら意中の相手探しは祭りのような活気のある雰囲気に変貌していた。



「こんなに多くの女性と踊った記憶はないのだけれどね……。」



特設台よりも少し遠くの方に用意された周りを見渡せる高めの場所に作られた席で、王子はこの予定とは違う様子に、笑顔で対応しつつも内心困惑していた。



「どうしたらいいと思う?」



「最初にお伝えした通り、場所は王城に指定すれば良かったと思いますよ。」



隣に立っていた近衛騎士団長に打開策を聞くが、元よりこの場所の指定を反対していた騎士団長は、すこぶる機嫌の悪そうな笑顔で、すでに手遅れな提案をされた。



「……そうだね。次の機会があったらそうするよ。」



次からは、大々的な愛の告白を、国民の前でやろうとは考えないようにしようと、この時王子は決意した。



ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー



(大丈夫!私ならできるわ!!)



(これで…ようやく!自分らしく生きられるのよ!)



話を聞きあわよくばと考えた、舞踏会に参加していない令嬢まで集まったこの広場の中で、並々ならぬ闘志を感じさせる赤いドレスを着用した二人の令嬢がいた。

『お義姉達、ごめんなさい。ガラスの靴を落としてしまって…、何とかしたくて、その為に色々と考えたのだけれど……協力してくれないかしら?』



それはシンドラに頼まれ、家族の危機を乗り越えるべくこの場の参加を託された義姉達だったーー。



「次の方!」



ガラスの靴に挑戦する令嬢が並んでいる長蛇の列が2/3程になった頃、姉1の前に並んでいた令嬢が肩を落として階段を下りてきた。
その姿を見届け、ようやく自分の番が訪れた姉1は、後ろに並んでいた姉2に真剣な視線を向ける。



「……。」



(責任を取るのは私だけで良いのよ、妹よ後は頼んだわ…!)



「……。」



(お姉様!……貴女の犠牲は無駄にはしないわ!頑張って!)



姉1が無言で見つめてくる。
その力強い視線に姉2は涙を浮かべ、特設の台の階段を上り始めた姉1の背中を見送った。




「まぁ!!これは私の靴だわ!!」



「これで何十人目の方が言っていたのか分かりませんので、早く履いていただけますか?次が詰まってますので……。」



ガラスの靴を見つめ、姉1は大きな声で所有権を主張したが、近くに居た近衛騎士達は既に耳にタコができる程聞いたその台詞を冷ややかな声で受け流した。



「ええ。」



姉1は刺繍が施された幅広で大きな靴から右足を抜くと幅狭で華奢なガラスの靴に足の指を入れた。



(さぁ行くわよ!!轟け!私の頑丈な右足!!!)



「ふぅ~。くっ!!うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!ぬぬぬぬぬぬ!ぬぬぬぬぬぬ!ぬぬぬぬぬぬ!ぬぬぬぬ!……………」


姉1は一息吐くと、右の足に全体重を乗せて、足の指を奥へ、奥へとねじ込んでいく。
次第に顔は真っ赤に染まり蟀谷こめかみ近くには血管が浮き上がる。



「そんなに…無理せんでも。そろそろ血管切れちゃいますよ~。」



「…………ぬぬぬ!!!……はぁ!はぁ!はぁ!」



(……あんなに練習したのにおかしいわ?!私この豊満な右足で割れないなんて!?)



ついに体力切れを起こし汗をかきながら肩で息を始めた姉1は、シンドラが用意した、いくつものガラスの靴を壊し続けた鋼の右足を前に、うん、とも、すん、とも言わないこの靴の耐久性の高さに驚き、そして焦りを感じた。



「……もう気は済みましたでしょうか?」



「いえ…もう一度…」



「う!し!ろ!が詰まっておりますので、申し訳ございませんがご遠慮いたたけますか?」



「……分かりました。」



もう一度自分の右足を信じて、強固なガラスの靴に挑もうとしたが、近衛騎士が語りかけるように話しかけてくる優しげな声音からは、凄むような気迫を感じた。
気圧され姉1は二度目挑戦を諦め、特設台から降りるべく踵を返す。



ードスン!ドスン!ドスン!



「……。」



(……ごめんなさい妹よ。私には無理だったみたい……。)



「……。」



(……お姉様…大丈夫!後は任せてちょうだい!)




「次の方!」




姉1は階段を下る際、姉2に悲壮な視線を向けて横を通り過ぎる。
その視線を受け取った姉2はやりきった姉1を気遣いつつ、特設台の階段を睨みつけるように、強い視線を向けると片方の足を一段目にかける。


ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー




(ああ。……上のお義姉様が敗れてしまったわ。)


王子に身バレしないように、母に金色の髪を黒く染めてもらい変装したシンドラは、灰色のフード付きのパーカーを着用して民衆に紛れ込んでいた。

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