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この香りはまるで…

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「お、おじゃまします…」

 家の灯りを付け、どこかよそよそしい大和を僕は居間へと招いた。

 僕の部屋は、ちょっと広めの1Kだ。
 居間に入るなり大和は、物珍しそうに僕の部屋を隅々まで目で追っては眺めている…

 そ、そんなに色々見ないでよ…恥ずかしい…

「へぇ…裕翔、部屋綺麗だな」

「僕、ごちゃごちゃしてるのあまり好きじゃないんだ…出来れば綺麗にしておきたくてね?」

 誰かが来る訳じゃないけれど、部屋が散らかったりしているのが僕はどうしても苦手で、常に綺麗にしておこうと意識はしていた。

 なのにまさか今日、大和が家に来るなんて思ってなかったから掃除機もかけてない…とほほ、タイミングの悪いこと…

 居間には、二人がけのソファーと僕がいつも寝ているシングルベッド、ご飯や勉強をするテーブルも置かれている。

 ソファーに座ればいいものの、大和は僕が寝ているベッドに腰をかけ、柔らかさを確認しているようだった。

「ねぇ、大和?」

「んっ?なんだ?」

「僕ね?家に帰ってきたら一番にやる事があって…その、お風呂に入ってきていいかな?」

 外から帰ってきたら、僕はすぐにお風呂へ入ると決めていたんだ。

 汗でベタベタした身体を帰ってきたらすぐ様に洗い流したい…きっとこれは僕の性格がこうしているんだと思う。

「ああ、わかったよ、でも具合悪くなったらすぐ呼べよ?」

「うん、ありがとう!あ、冷蔵庫にジュース入ってるから好きなの飲んでね?」

 僕はそう言い残して、浴室へと向かっていったんだ。

 ◇ ◇

 ──お風呂から上がり、大和も汗を流したいかな?と考えた僕は、大和も入れるようにと脱衣場で色々と準備をして居間に戻った。

「大和~っ!大和もお風呂入っ……」

 バスタオルで頭を拭きながら、大和を見つけるとそこには、僕のベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに眠る姿があったんだ。

 甚平姿のまま僕が使っているタオルケットを身体に巻き付け、満足気に眠っている…

 きっとお互い慣れない下駄を履き、沢山歩き回って僕のことも心配してくれて、気疲れまでしてしまったんだろう…

 ただ、その思いとは裏腹に大和の眠る姿を見た僕の気持ちは、また胸の鼓動をドキドキと早くさせてしまう…

 初めて見る大和の寝顔…
 僕のベットの上で満足そうに眠る大和…
 ズレた甚平から見える大和の肌やパンツの襟元…
 大和の柔らかそうな唇や優しく閉じられた目…
 すらっとした綺麗な長い足には、少し足りていないタオルケット…

 僕はその全てが愛おしいと思った。
 愛おしい…そうか、やっぱりそうなんだ…
 僕…やっぱり大和のことが…

 この締め付けられる胸の痛み…
 Ωだと言うことを隠さなければいけない痛みと共に、僕の心は大和で染め上げられていくのが分かる。

 僕…大和の事が好きだ…
 これがきっと恋をするということなんだ…

 そう確信するのはもう少しだけ後になるけれど、僕の心は大和で埋め尽くされていく感覚…これは紛れもなく、僕が大和を愛している証拠だった。

 僕はドキドキとしながらも大和を起こさないようにそっと居間の灯りを消して、二人がけのソファーで眠りにつく事にしたんだ。

 大和、今日はありがとう…
 一緒にいれて僕、幸せだったよ…?
 おやすみなさい…
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