たばことネオンとキミ

2525はなちゃん

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第一章 仕事

学生時代.3

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「真美、後悔しないようにしなね。」

週明けの月曜日。看護学生の1日が始まった。
1限までの時間を、入学してからすぐ仲良くなった理沙ちゃんがそう言った。

「後悔か。。」

「そうだよ。理沙の言う通り。2年間も片想いなんて、もっと早く伝えておくべきだったと思うよ!?」

「かおりー。そういうけどさー。。」

「とにかく私たちは真美には幸せになってほしいの。3年間、ずっと真美と過ごして、まじで思ってるからね!?もし櫻井さんとダメだったとしても、ちゃんとズバッと振られないと次進めないよ??」

「うん。まぁ、そうだよねー。。」

「絶対、後悔だけはしないでね!!」

確かにかおりの言う通りだなと思う。もし気持ちを伝えずにこのままお別れしたら、私は一生引きずるのではないか。告白することで振られてしまうかもしれないけど、当たって砕けろ。振られたら次だ次!!

揺れ動く気持ちをそう奮い立たせて、櫻井さんの最後の出勤日を迎えた。


~~~~~~~~~~~~~~~

「神谷。今日私、いくわ。」

「え?まじ?」

「まじ。たまたまだけど上がり一緒の時間だったから、上がったら伝える。当たって砕けろって感じでね。」

「そっか。がんばれ。応援してる。」

「うん!」

そしてドキドキする鼓動に気づかないように、平静を装ってバイトをした。

「櫻井さん、今日バイト終わり、少しだけ時間もらっていいですか?」

「ん?いいけど、どうしたの?」

「終わったら、バイト終わったら、話したいことがあって、」

「いいよ?」

櫻井さんとの最後のバイト休憩。涙で滲んだ賄い。あと数時間で、、、

~~~~~~~~~~~~~~~

「ありがとうございましたー!」

「店長、お世話になりました。また制服返しに来ますね。本当に4年間、お世話になりました!」

「櫻井くん、お疲れ様。国家試験がんばってね。制服、いつでもいいから、落ち着いたら報告しに来てね」

店長と櫻井さんのそんな会話が聞こえる。

「お前、上がる時間だろ。行ってこい」

神谷に背中を押してもらって私は急いで更衣室に向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~

着替えが終わってバイト先を出ると、櫻井さんが店の入り口に立っていた。

「お疲れ様!いやー、終わったねー。最後まで忙しかったわー!」

櫻井さんがそう言いながら駐輪場まで歩いて行く。私も緊張で足が震えながらも必死に後をついていった。

「で、話ってなに?」

櫻井さんがこっちを向いて立ち止まる。




静かに深呼吸をした。

「櫻井さん、お疲れ様でした。そして、3年間ありがとうございました。

私、いろいろあって男の人が怖かったんです。でも、ここに入って、櫻井さんが良くしてくれて、恐怖心がなくなったというか、、、バイト来るの楽しかったです。櫻井さんとお昼いっぱいかぶって、たくさん話できてよかったです。

私、櫻井さんのこと好きなんです。ずっとずっと好きでした。大好きでした。本当にどうしようもないくらい、大好きでした。辞めちゃうの、寂しいです。辞めてほしくないです。でも、国家試験、頑張ってください。夢、叶えてください。応援してます。」

気がつけば頬には大きな涙が伝っていた。止まることのない涙。あー泣いちゃだめだよ、困っちゃうよ、櫻井さん。頭の中でそう思っても涙は止まらない。

あー。私本当に好きだったんだな。こんなに泣くなんて。本当に大好きで仕方なかったんだろうな。

どのくらい時間が経っただろう。櫻井さんがふっと笑った。

「ありがとう。すごく、嬉しいよ。

でも、今は勉強に集中したいから。国家試験終わって落ち着いたら、彼女の候補の1人にしておくね。
せっかく仲良くなったし、これからもよろしくね。」

~~~~~~~~~~~~~


自転車で走り去る櫻井さんを見送ってどのくらいの時間が経っただろう。涙はもうとっくに止まっていて身体がぐっと重い。

「工藤」

声が聞こえた方を見る。でも思うように体は動かなくて、ゆっくりとそちらを見た。

「神谷。。どうしたの」

「それはこっちのセリフだよ。雨も降ってきたのに何突っ立ってんだよ」

気がつかなかった。雨が降ってきていたんだ。

「もう8時だけど。お前まさか2時間もここにいたの?」

「え?あ、まじか。」

駐輪場で櫻井さんのいた場所をずっと見ていたようだった。

「なぁ。ちょっと付き合って欲しいんだけど。駅前のお前が好きな居酒屋、行かね?」

神谷の漕ぐ自転車の後ろに乗り、私たちは駅を目指した。
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