帰らなければ良かった

jun

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犯人

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エドワード視点

「大丈夫か?」

声をかけると、スーザンが意識を取り戻した。

「私…ここは…」

「ここは備品保管室だ。何があったか分かるか?」

「あの…私、ここでタオルの補充をしようと…」

「とりあえず、医務室に戻ろう」

スーザンを抱え、医務室に戻ると、

「スーザン、何があったんだ!」
と先生が寄ってきた。

「備品保管室に倒れていました。」

「ベッドに運んでくれ。」

スーザンをベッドに運び、先生が診察をしてくれ、問題がないと許可が出たので質問を始めた。

「ラルスの所にお茶を持って行ったよね?」

「はい。あちらの空き部屋に行ってから、何も食べていないようだったので、お茶でもと思いました。
先生に相談したら、お茶でも持っていけばと言われたので、持って行きました。
途中、エドワード団長に頼まれて差し入れを持ってきたという女性の方に会いました。
なので、一緒にラルス団長とブライアン副団長がいる部屋に入りました。」

「それから?」

「その女性は、私に話した事と同じ事をラルス団長に話した後、バスケットからサンドイッチや焼き菓子を出してから帰って行きました。私もお茶を置いてから戻って、備品保管室に行った後は覚えていません。」

「何をされて気を失ったのかは覚えてるか?」

「いえ…気付いたら気を失っていました。」

「その女性は名前を言わなかったのか?」

「すみません、聞きませんでした…」

「どんな女性か覚えているか?」

「茶髪で目の色は薄い緑で、若いご令嬢でした。」

「茶髪で薄い緑…」

昼間のフランシスを思い出した。
フランシスも茶髪の薄い緑の瞳だ。

すぐ、走り出し、フランシスのいる貴族牢に向かった。

凄い勢いで走ってきた俺を見て、ギョッとしている部下に、
「フランシスは中にいるのか?」

「私はずっとここにいますので、出てはいません。」

「中を確認する。」

鍵を開け、中を確認すると、

フランシスはいた。

「な、なんですか?」

「お前、ここから出なかったよな?」

「出れるわけないじゃないですか。窓もないのに。」

念の為、中を確認する。

抜け穴もないし、本人の態度を見ても嘘をついている様子はない。

「なんなんですか?」

「誰かここにきたのか?」

「誰も来てません」

「分かった」

部屋を出て、鍵を閉めると、

「団長、何かあったのですか?」

「ラルスとブライアン、ミッシェルに睡眠薬を飲ませて眠らせた後、シシリーが毒を注射された。
一命は取り留めたが、まだどうなるか分からん。」

「え⁉︎毒?」

「そうだ、これからファルコンの全員招集する。副団長とリーダーと副リーダーが襲われたんだ、そのうち一人は殺されるところだった。
犯人はファルコンが捕まえる。」

「はい!ここは絶対死守します!」

「頼んだぞ」


その後は宿舎に戻っていた団員達を集めて、捜査にあたらせた。

しかし、フランシスじゃなければ誰だ。
待て、フランシスはラルスの義理の妹だ。
ラルスがフランシスに気付かない事なんてない。


ヤコブに後の事を頼み、急いで医務室に向かう。

何か違和感がある…
何だ…

医務室に入ると、薬品の匂いがした。

匂い…

そして…

ああ、そうか…違和感が何か分かった。
備品保管室では薬品の匂いがしなかった。



「先生、スーザンは?」

「もう帰ったよ。今日は疲れただろうからね、明日は午後からで良いと言ってある。」

「いつ帰りました?」

「今さっきだ。」

また医務室を飛び出し、通ったであろう廊下を全速力で走った。
いた。
少し先の角を曲がった。
その先はもう出口になる。

この時間では乗り合い馬車もないから、歩きか、迎えの馬車か…。
スーザンの家名は…聞かなかった。

角を曲がると馬車が出る所だった。



先生に書いてもらった住所を頭に入れてから、厩舎に向かった。

馬に乗り、馬車を追う。

しばらく走ると、馬車が見えてきた。
だが、実家と方向が違う。

こんな時間にどこに行くんだ…

馬車の家紋は見えなかった。

気付かれない距離を保ちながら後をつけた。

すると、大きな屋敷に入った。

そこは、イザリス公爵邸だった。

あの女…フランシスと繋がっていたのか…。

どうする…乗り込んで、スーザンを出せと言うか。
でも、そんな人知らないと言われたらそれまでだ。

だが…。とにかく今屋敷に入ったのが誰かを確認しよう。

俺はイザリス公爵邸の門番に、王宮内であった事件の関係者と思われる人物を追っていたが、この近くで見失った。
念の為、確認させてはもらえないかと伝えた。
門番は、俺の言葉を伝えるために屋敷の中に入った。

すぐに執事と思われる男が出てきた。

「ファルコン騎士団団長様、門番から話しは聞きました。我が屋敷には不審な人物が侵入した様子はございません。」

「先程、馬車が入ったようだが、こんな遅い時間、どなたがご帰宅されたのであろうか?」

「先程の馬車ですか?あ、医師でございます。奥様が急に体調を崩されまして、急遽、医師をお呼び致しました。」

「その医師の名前を聞いてもよろしいか?」

「名前は、今日急遽、初めてお願いした方でして、申し訳ございません、お名前を失念致しました。」

「ちなみに男性ですか?女性ですか?」

「男性です。」

「どちらに住んでおられる方だろうか?」

「王都だったかと。」

「こんな夜中でも往診してもらえる医師など珍しいな、騎士団にも何かの際にはお願いしたい。王都のどちらに?」

「セフィーロ地区だったかと…」

「セフィーロ地区の男性医師だな。探してみる。もしまた来る。
夫人の体調不良はフランシス嬢の事でか?」

「そう…です。」

「では夜中に済まなかった。」

「いえ、お疲れ様でございます。」

そう言って屋敷を出た俺は、少し離れた場所から屋敷を見張った。

何かがおかしい。

本当にあの馬車はスーザンが乗っていた馬車だったのか?

俺が厩舎に行っている間に変わったのか?

俺が馬車が走り出すのを見た後、厩舎に行き、馬で追いかけて、あそこで追いつくだろうか?

もっと先、または公爵邸に着く直前ではないだろうか…。

執事の受け答えも台本があるような答えだった。

どこだ、何がおかしい。

戻ろう。

ここにいる意味はきっとない。

おそらくここにいる事が一番犯人が望んでいる事なんだと思う。
確信はないが、そんな気がする。

馬で、ゆっくり帰る。何処か脇の道に入ったのかも知れないと思い、馬車が入れそうな道を入念に見ていく。

王宮のすぐ近くにギリギリ馬車が入れそうな細い道を見つけた。
その道を馬を降りて入っていく。

すると、だいぶ奥に行くと小さな小屋があった。
灯りが漏れている。

音をたてないように注意して、小屋に近付く。

隙間だらけのその小屋の中を覗くと、
毛布に包まり、足を抱えて蹲っているスーザンがいた。
灯りはあるが、暖房器具はなくかなり寒そうだ。
こんな所にいる意味は、一つしかない。
隠れているのだ。

公爵家との関係は何だろう…。
脅されているのか、自発的なのか。
それとも金か。
どっちにしても、話しを聞くしかない。

バンとドアを蹴った。

「探したよ、スーザン。」

驚いて目を見開くスーザンは、俺を見て叫んだ。

「わ、私は何もしてない。何もしてない!」

「話しは後で聞く。」

と言い、腰につけている拘束具をつけ、肩に担いで馬まで戻った。
担がれた最初は暴れていたが、そのうち大人しくなった。
馬には俺の前に乗せ、猛スピードで王宮まで戻ったら気絶していた。


これから、尋問だが、最近、女の尋問、それも全てシシリーへの嫉妬から始まるものばかり。
もう、うんざりだと思いながら、担いで取調室へ向かった。











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