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馬車の中
しおりを挟むラルス視点
エドの指揮の下、イザリス家の隠された闇が暴かれていっている。
途中、ヤコブとシックスも
暴れて暴言を吐きまくっているジュリアーナがポロポロとボロを出しまくっている。
「マイク、マイク、私を助けなさい!あんなに可愛がってあげたでしょ!サム、サム、薬をあげないわよ!」
とか。
男性使用人を何人も愛人にしていた。
女性の使用人は言う事を聞かなければ麻薬を与え、自分の思い通りに使っていた。
従順なふりをしていた使用人は難を逃れていたが、結局はジュリアーナのいいなりになっていたのだ、なにかしら悪事に加担しているだろう。
執事は薬の調達と公爵の世話をしていたようだ。
公爵はベッドの上で以前のような凛々しさも威厳もなくなり、げっそり痩せ、目も虚ろにし、
「ジュリアーナ…薬を…くれ…」と苦しそうに呟いていた。
クララの父親は再婚してから、クララを顧みなくなった。
いつから薬をやっていたのか分からないが、ひょっとしたら再婚自体、ジュリアーナが何らかの薬を盛って、公爵を籠絡させたのかもしれない。
この姿をクララには見せたくないな…
と思った。たった一人の肉親だ。
幼い頃は可愛がっていたと聞いている。
あの女のした事は、首を刎ねただけでは足りないほどだ。
「ラルス、公爵は治療院に移そう。話しは聞けそうにないな。」
「ああ、薬を常用している者たちもそっちに移送しよう。どれくらいいるのか…酷いな。」
「証拠となるものは大凡集めた。一旦終了し、公爵夫人の取調べに入ろう。」
「そうだな。押収品もかなりの量だしな。」
押収品を次々に運び出し、治療院に連れて行く者達を馬車に乗せていく。
男爵夫人は男爵がいる王宮へ移送した。
ジュリアーナはガッチリ拘束し、うるさいので猿轡をさせた。
そして、馬車の中、俺の真正面に座り、フーフー唸っている。
「なんだ?文句があるのか、義母上。」
「ウーウー!」
「ほらほら、ヨダレが垂れて汚いじゃないか、公爵夫人ともあろうお方がダメだよ。」
「ウーウー、ウーウーウーウー!」
「あんた、薬使って公爵を籠絡したの?
そうだよね、あんたなんか薬でも使わないと公爵夫人になんかなれないもんね。」
「ウーーーーーー!」
「だってそうでしょ?大して美人でもないのに、みーーんな言ってたでしょ、なんで?って。最初は大人しくしてたんだろうね、でも周りのそんな声を聞いて耐えられなくなった?で、薬に手ぇ、出したの?安直過ぎない?自分が選んでその場所を掴み取ったんでしょ?犯罪紛いのことしてまで。
それで、悪口言われたからって、麻薬に手ェ出して、自分の旦那にも薬宛てがうって、頭おかしいんじゃないの?
ひょっとしてフランシスにも?だからあんな事しちゃったんだ!
ひっどい母親だな、あんた!」
と馬車を降りるまで、延々嫌味を言い続けた。
「この女の猿轡は絶対取るなよ。取る時は、録音をすぐに開始しろ。」
とジュリアーナを移動させる団員にそう伝えた。
「ラルス、今から夫人の取調べをしようと思うが、お前はどうする?」
「俺も行くよ、多分、あの女、俺に言いたい事たくさんあるから、俺がいないとね。」
「お前何したの、俺達も乗せないで二人きりで。」
「いつもの嫌味をずっーーーと言ってやっただけ。だから猿轡外した瞬間、喚き出すと思うよ。」
「取調べが早く済みそうで良いけどな。お前、大丈夫か?」
「え?俺?俺は気分爽快だよ。長年の恨みを晴らせるから。」
「だったら良いけど。負の感情は意外と身体に負担がかかる。無理はするな。」
「エドもね。前半、お前はキレ過ぎだったから後半は俺が引き受けるよ。」
「キレ過ぎか、そうだな。確かに怒鳴り過ぎて疲れた。」
「だろ。だからジュリアーナは俺に任せろ。多分勝手に向こうが話すと思うけど。」
「分かった、任せた。」
二人でそんな話しをしている後ろを、
ブライアン、シックス、ヤコブ、ミッシェルが、
「馬車の中でアレやったんだな。見たかったな。」
とブライアン。
「団長、好きですから、アレ。」
とシックス。
「私はアレ怖い。あんなににこやかに毒吐けるラルス団長、怖すぎる。」
とミッシェル。
「アレってなんですか?怖いんですか?教えて下さいよ!」
とヤコブ。
「ヤコブも来い。見せてやるよ。」
「え?良いんですか!って何を見せてくれるんですか?」
「取調べ。」
「え!良いんですか?」
「エド、良いよな?」
「ああ、ヤコブはいずれは一番隊のリーダーになる男だ、見ておいて損はない。」
「ありがとうございます!勉強させてもらいます!」
「ヤコブ、ラルス団長の尋問は勉強になる。しっかり見ておけ。」
「はい!」
ブライアンは俺のやり方が気に入ったようだ。
俺もブライアンはこっちの方が合っていると思う。
取調室に着いた。
ブライアン、シックス、ミッシェルは団員達の所に戻り指示を出すのだろう。
俺、エド、ヤコブが中に入ると、
猿轡をし、目を真っ赤に充血させて唸っている公爵夫人がいた。
その姿を見て、思わずクスッと笑った俺を見て、ヤコブはエ?って顔をし、エドはハア~と溜息を吐いた。
さて始めようかな。
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