帰らなければ良かった

jun

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離婚



ラルス視点


ジュリアーナの一度目の尋問の後、男爵夫人の聞き取りをした。
何か決定打になるものがないかと。
攫われてから救出されるまでの話しを聞いた。
男爵邸から馬車に乗せられ、納屋に入れられるまでの間にジュリアーナとの接触はなかった。

だが、どうやってスーザンの存在を知った?
医務室は利用するが、スーザンの名前など今回の事が無ければ知らなかった。
いる事すら知らなかったというのに、ジュリアーナは知っていた。
誰かが教えた。

誰が?

医務室は皆使う。
頻繁に使うのは騎士団だ。

しかし騎士団の人間が言うだろうか…
言わない。
でも、流れで話す事はあるかもしれない。
教えようと思ってなくても、無意識で言ってしまう事はある。
でもここ数日はナタリアやキャシー、フランシスと立て続けて取調べをしていて騎士団はバタバタしている。
ほとんど騎士団内から出てはいない。
休みも返上している。

騎士からではないなら誰だ?

スーザンの存在をジュリアーナに教えた人物。

ダメだ、行き詰まった。

じゃあ、先に公爵から行こう。
息子のテリーズには連絡したのでもうすぐこちらに来るだろう。
なら今のうちに公爵の様子を見に行こう。

そんな事を考えながら歩いていると、腕を掴まれた。

「ラルス、どうした?柱にぶつかるぞ。」

「あ、エド、ありがとう、考え事をしてた。なあ、エド、ジュリアーナはどうやってスーザンの事を知ったんだろう。」

「そういえばそうだな。俺は申し訳ないが、今回の事がなけれはスーザンの名前も知らなかった。」

「俺もだ。なんとなく覚えてる程度だ。
全員がそうではないだろうが、そんなスーザンをどこで聞きつけたのかと思ってたんだ。
行き詰まったから公爵の所に行こうかと。」

「公爵とは会話が出来んぞ。」

「でもたまに正気に戻る事があるらしい。その時にサインしてもらう。」

「何に?」

「離婚申請書。お前は証人になれ。」

「なんで、急に?」

「あの女に公爵夫人って地位がある限り、いくらでも逃げおおせると思っている。
先ずそこを崩す。
そこがなくなれば、使用人も恐れる事なく証言するだろう。
あの女が夫人でいる限り、重要な証言は取れない。公爵が正気にならないのなら、テリーズに当主代理としてサインさせる。」

「しかし、テリーズは実の母親だ。サインなんかするわけないだろう!」

「だから来る前に行く。」

「ラルス、お前、大丈夫か?」

「俺は至って大丈夫だ。今があの女を追い詰める最大の好機だ。
この好機を逃せば次いつ来るか分からない。だからここであの女を潰す。」

「ジュリアーナを堕とせる事はいいが、お前があまりにもいつもと違うのが、心配なんだ。本当に大丈夫なんだな?」

「ああ、アイツがクララにしてきた事、そっくりアイツに返せると思ったら、すこぶる気分が良い。」

「そうか、分かった、行こう。」

それから二人で治療院に行く事を伝え、公爵の元へ向かった。


病室に入り、腕に薬を注入されて眠る公爵がいた。

「寝てるな。」

「ああ、少し待つか。それとも叩き起こすか?」

「お前な…」

「冗談だよ。でも俺はこの人も許せない。」

「分かったから、少し冷静になれ。」

「俺、そんなにいつもと違う?」

「違う。いつもはもっと時間をかけてどうやったら甚振れるのかを考えるのに、今回はその余裕がない。」

「ちょっと、俺そんな意地悪じゃないんだけど!」

「ハイハイ、お前は優しいよ。」

「酷いな~エド~。」



「誰だ?」

「イザリス公爵!」

「ここは何処だ?」

「ここは治療院です。私はイーグル騎士団の団長、ラルス・リルマグです。
あなたの身体は今長年の多種多様の薬物によりボロボロの状態です。
ですので家宅捜査の際、貴方を治療院に入院させました。」

「家宅捜査…?」

「はい、ジュリアーナ夫人のボタニア男爵夫人誘拐容疑による家宅捜査です。」

「誘拐…?」

「はい。何故誘拐したのかを説明する時間はありません、また後日にでもさせて頂きます。
公爵は結婚当初から薬を与えられていましたね?」

「ああ、少しずつ飲まされていたらしい。
気付いた時には薬がないと眠れない、不安になる、そして夜はあの女を抱く生活を強いられた。
もう嫌だ…あの家には帰りたくない…」

「公爵、このままでは一生あの女に薬漬けにされます。今離れる為には離婚するしかありません。ここにサインして頂けますか、公爵!」

「サイン?」

「離婚申請書です。」

「離婚…」

「したくはないのですか?」

「アイツがサインをしない。」

「あの女は貴方に薬を盛り、今まで貴方を操ってきたのです。命に関わる事象を起こした相手の籍は、貴方だけのサインで抜く事が出来るんです。後は私達騎士団にお任せ下さい。
死ぬまで、あの女は貴方に寄生しますよ!」

「嫌だ、もう嫌だ…ペンを…」


震える手にペンを握らせ、横になったまま公爵はサインした。
ハッキリと離婚理由も書いていた。
そして陛下に直接提出してやる!

「ありがとうございます、これで貴方は安心して息子夫婦をあの家に呼べますよ。」

「息子…テリーズ…もうしばらく会っていない…」

「もうすぐ来ますよ。」

「そうか…」

「では、少しお休み下さい。俺達はこれで。」

「あ、ラルス殿…」

「はい、何でしょう。」

「娘をよろしく…頼む…そして、済まなかった…と。」

「・・・・それでは、失礼します。」


病室から出て、

「ハァーーーーー」

「大丈夫か?
でも公爵が意外と普通で驚いた。公爵邸にいた時は、もうダメだろうと思ったのに。」

「ちゃんと治療してたら良かったんだよ。
そして嫌ならさっさと離婚すれば良かったんだ!グズグズしてたのは自分だ、自業自得だ!」

「まあ、そうだな。」



その時、

「エドワード様、ラルス様、父は?」

とテリーズが走ってきた。

「部屋はここだ。今、離婚届にサインしてもらった。」

「離婚届?」

「もう嫌だとさ、あの家には帰りたくないそうだ。」

「そう…ですか…」

「中入ったら?じゃあ俺達は行くから。
後で騎士団に来てくれる?
説明するし、君から話し聞きたいしね。
妹の事も母親の事も。」

「はい…分かりました…」


項垂れて中へ入った義理の弟が少し可哀想に思ったが、今はイザリス家の人間全員、許す気はない。


「行こう、エド。陛下に謁見を申し込む。」


次こそ、ジュリアーナを堕とす。





********************
「煮詰まった」→「行き詰まった」に訂正しました。

御指摘ありがとうございます!

この場を借りてお礼申し上げます。

これからもよろしくお願いします!!







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