帰らなければ良かった

jun

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ラルスからの報告

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団長のかけ声で一斉に山盛りのステーキ肉に群がる厳つい男達をよそに、私はミッシェルとヤコブとブライアンで、目の前でコック長が焼いてくれる海産物が焼けるのを待っている。

バターの香りが食欲をそそる。

「めちゃめちゃお腹空きましたよー、良い匂いっす!」

「今回、ヤコブは頑張ったもんね、沢山お食べ。」

「頑張りました!シシリー先輩の分まで頑張りました!」

「そうなんだ、ありがとう、ヤコブ。」

「お前は馴れ馴れしくするな!あっちに行け!」

「なんでですか、心が狭いっすよ、副団長!」

「なんでリーダーって呼ばないんだよ!まだリーダーだろ!」

「今から練習してるんですよ、ねえ、シシリー先輩。」

「ちょっとヤコブ!シシリーは先輩なのに、なんで私はパイセンなのよ!」

「ガースさんにそう言われたので。」

「はあ?あのおとぼけリーダー・・仕事ボイコットしてやる!」

「何?何をボイコットするの?ミッシェル、ねえ、なんの事?」

「ゲッ…」

「ガース先輩、色々ご迷惑おかけしてすみませんでした。」

「良いの良いの、シシリーには迷惑かけられてないから。迷惑かけてるのはミッシェルとヤコブだから。」

「ちょっと待って下さいよ!なんで俺なんですか!」

「お前は年がら年中俺の所に来てはくっだらない話で俺の時間を奪っている。
ミッシェルはすぐ居なくなる。」

「まあまあ、ガース先輩、ほら、海老が焼けましたよ。」

ヤコブとミッシェルはピタッと喋らなくなった。

コック長が、
「シシリー、復帰おめでとう、良かったな。」

「コック長、ありがとう。ご心配おかけしました。」

「お前がいなかったから、ミッシェルが寂しそうにしていた。良かったな、ミッシェル。」

「うん、やっぱりシシリーがいないとね、ね、ブライアン。」

「ああ、シシリーがいないと俺はダメだと実感した。」

「うわ、副団長ってば、そんな事言えるようになったの?凄いじゃん!」

「ガース先輩、俺はいつもシシリーには素直です。」

「あ、そう。」

「ガースさんって、副団長に対して塩対応っていうか、雑ですね。」

「ヤコブ、良い事言った。俺はいつもこの人に雑に扱われている。
そして、この騎士団で一番俺の事を笑い者にしている!」

「俺はこの騎士団の中で二番目に可愛がってるつもりなんだけど。」

「二番目?一番は?」とヤコブ。

「「「団長!」」」

声を揃えて私、ミッシェル、ガース先輩が言った。

「あ~なるほど。」

「俺もブライアンの事は可愛がっているぞ、ブライアンはとても美味しそうにスイーツを食べてくれるからな。」

「「「「ブッ!」」」」

「お前達、何故笑う⁉︎コック長のスイーツはとても美味しいじゃないか!」

「あまりの美味しさに吹き出したんだ、ブライアン。」とガース先輩。

「そうそう、ブライアンはショートケーキ大好きだもんね!」とミッシェル。

「いやあ、アレは可愛いですもんね~」とヤコブ。

「ヤコブ、ケーキは可愛いではない美味しいだ。」

「ちょっと~笑わせないでよーブライアン!」とガース先輩。

そこへ、
「楽しそうだな。」

「団長、今日はありがとうございます。無事に復帰する事が出来ました。」

「おお、シシリー、後遺症もなく復帰出来て良かったな。」

「はい。忙しい時に休んでしまい、申し訳ありませんでした。」

「お前は被害者なんだ、気にする必要はないぞ、その分ヤコブが頑張ってくれたからな。」

それからは団長が加わり、肉に飽きた団員達がこちらに加わり、賑やかに宴は続いた。

少し外の空気が吸いたくなり、食堂を出ると、ラルス団長が声をかけてきた。

「シシリー、退院おめでとう。」

「ラルス団長、ありがとうございます。お見舞いもありがとうございました。クララ様にもよろしくお伝えください。とても美味しかったです。」

奥様のクララ様から、手作りの美味しいクッキーを頂いていた。

「あのクッキーね、娘と作ったんだよ~凄いでしょう!」

「フフ、はい、凄いです。」

「シシリー、君にはまだ伝えてなかったから僕から伝えるね。

ジュリアーナ…イザリス元公爵夫人が死んだ。施設に入って一週間後に。」

「え⁉︎」

「まあ、そういう施設だから驚く程の事ではなかったんだけど、こんなに早くとは思っていなかった。」

「そう…ですか…。」

「シシリーはあまり良い気にはならないよね、俺は何の感情も湧かなかったよ…。」

「そうですね…黒幕、大元、元凶…がジュリアーナだったわけですから、本来なら即刻処刑の所を一週間も生きれたと思えばいいんでしょうけど、一度直接話しを聞きたかったです…私には調書を何度読んでも理解出来なかったので、あの人の思考が。
裕福ではないけど、貧乏でもなかった。
両親に愛されてなかった訳でもない。
見た目も悪くない。
なのにああなってしまった理由を知りたかったです。
公爵夫人になりたかったから?
公爵の事を愛してしまったから?
虐められたから?
きちんと聞きたかった。」

「そうだね…きちんと聞けなかったな、ごめんね、俺達のミスだね。」

「いえ、そういう意味で言ったわけではありません、私が目を見て聞いて見たかったってだけですから。」

「分かってるよ。でも、俺はかなり私情を挟んでしまった。まだまだだね、俺は。」

「ラルス団長は、クララ様の為にあの人と戦ったんです。私情挟んで何が悪いんですか!みんなに聞きました、ラルス団長と団長のお陰で全員の士気が上がったって言ってましたよ。
特にラルス団長のフランシス嬢の尋問は凄かったって言ってました。」

「アハハハ、凄くはないけど、俺の煽りに綺麗に乗っかってくれたから、あれは気持ち良かったね。」

「私は誰の尋問も出来ませんでした。
まあ、関係者なので怪我がなくとも出来なかったんですけど、せめてその場に居たかったです。」

「そうだね、本当はアイツらの話しをその耳で聞いておくのは大事な事だったと思う。
ストレスは半端ないけど。
でもね、文字を読むだけでも疲れるほど、醜悪で吐き気がするほどの悪意の塊りと対峙するには団長、副団長クラスにならないとね。」

「そうですね、私は飲まれていたかもしれません…。」

「エドも凄かったんだよ~あいつ尋問でストレス発散してたと思うよ、毎回キレてたから。」

「そうらしいですね、後で録音聞いてみます。」

「シシリー!ここにいた!」

ブライアンが慌てた様子で私達の所に来た。

「どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ、いないから探した!」

「ブライアン、シシリーは子供じゃないんだから、そんなに焦らなくてもいいじゃない。」

「…心配したんです…具合が悪くなったのかと…」

「相変わらず溺愛してるな~ブライアンは。」

「溺愛って…してますけど…」

「もうやめてください!恥ずかしい!」

「はいはい、見せつけない!中に戻るよ!」


三人で食堂に戻ったが、ブライアンはピッタリ私にくっついて、男性陣が近付こうものならガルルっと唸りそうな勢いで、追い払っていた。
コック長が、
「ブライアン、苺のショートケーキがもう無くなりそうだぞ!」
と言うと、走って行ってしまった。


全員がブライアンを見た後、爆笑した。


復帰祝いという宴は大盛り上がりで終わった。











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