帰らなければ良かった

jun

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カールの事

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復帰祝いの後、ブライアンは団長達に捕まり、二次会に突入した。

私とミッシェルは私とブライアンの家に帰り、飲み直すことになった。

多分、ミッシェルは二人きりで話す事があるんだろうなと思ったから。


食堂から持ち帰ったおつまみを広げ、グラスにワインを注いだ。

なんとなく二人で黙ってしまった。

「シシリー、ちょっと話しがあるんだけど、いいかな?」

「うん、話しがあるんだなと思った。」

「そっか…なんとなく言いづらくて…」

「カールの事だね。」

「うん。誰も何も言わないのも変な話しだなと思って。」

「みんな、気をつかってくれてるんだなとは思ってたから、こっちからは聞かなかった。ブライアンはカールの事、好きじゃなかったし。」

「だよね。ブライアンは好きじゃなかったね、カールもだけど。」

「私はそこまでとは思ってなかったんだけどね…気が合わないのかなくらいにしか思ってなかった。私の鈍さが悪かったんだなって思う…。」

「シシリーが悪いんじゃないよ、カールのバカが悪いんだよ。
私は知ってたけど…知ってたのに…カールの本当の気持ちが分からなかった…あんなにシシリーの事が好きだったってこと。」

「ブライアンは知ってたからカールが嫌いだったんだね…。そんな事も知らずにヘラヘラしてた私は最低だ…。」

「シシリー、ごめん、シシリーがそう言うと思って言えなかった。でも、言えば良かったと今は思う。本当にごめん。」

「ミッシェルは私を思って黙ってくれてたんだから、ミッシェルが気にすることないよ。」

「あのね、シシリー、今日はその事じゃなくて、カールの処罰が決まった事だけ言おうと思ってたの。でも、カールの名前出したらこうなるよね…なんかごめん…」

「ううん、誰も何も教えてくれないし、聞きづらかったから良かった。教えて。」

「カールは、騎士団を懲戒解雇になった。証拠保管庫から媚薬盗んだからね。
それで、王都追放になった。怪我が治り次第だからまだ病院だけど。」

「そっか…。解雇か…そうだよね、もう戻れるわけないもんね…私があの時、ブライアンを呼んでもらってたら、カールはこんな事しなかったんだろうね…カールに中途半端に頼ったから…」

「シシリー、ブライアンの場合もそうだけど、勝手に好きになられて、勝手に相手が暴走した事を自分のせいにするのは間違ってるよ。
それはシシリーやブライアンのせいじゃない。自分勝手な相手が悪いの。
相手の事も考えずに自分の思いを押し付けて、分かってもらえない、分かってほしいから、なんて理由で、やってはいけない事をする奴らが悪いの。
何回も言ってるけど、シシリーが悪いわけじゃない。でも、鈍ちんは直せ!」

「鈍ちんって…」

「シシリーは自分がモテてる事をもっと自覚した方がいいと思う!もう鈍すぎて若干嫌味に感じるよ!」

「そんな事言ったらミッシェルだってモテてるくせに!」

「私?私がモテてたらとっくに彼氏出来てるし!」

「ハア~ミッシェル…ミッシェルは鈍い…」

「だって今まで告白された事なんてない!」

「そんな事言ったら、私だってブライアン以外いないし!」

「それはシシリーは綺麗過ぎて近寄り難いからだよ!」

「そっくり返すよ、その言葉!」

「言っとくけど、あんたとブライアン、並んでると誰も近付けないから!並ぶ自信ないから!」

「なんでよ!団長もガース先輩もヤコブもラルス団長も並ぶよ!」

「それは役職付いてるからだよ!ヤコブはバカだから!」

「私知ってるよ、ミッシェルが団長の事好きなこと!」

「ふぇ⁉︎なんで⁉︎」

「フフン、鈍くはないからだ、ミッシェルくん!」

「カールの事、気付かなかったくせになんで私の事は気付くんだよ!」

「・・・カール…」

「あ、ごめん…」

「あーーん、私が気付かなかったばっかりにーーー」

「そんな事言ったら、私だってーーーーー」






「何これ…どんな状況?」

「あ、ライだぁーーーーライ、おかえりーーーーー!」

「あ、乙女なブライアンだーーーーーー」

「うわ、酒臭!二人共飲み過ぎ!そして乙女ってなんだ?飲み過ぎだ、二人とも!」

「「そんなに飲んでないよー」」


私とミッシェルが飲んだワインはワインではなくブライアン用の度数の強いお酒だった。

知らずにガボガボ飲んで、へべれけになった…らしい。

途中までは覚えてるけど、泣いた辺りから覚えていない。

ミッシェルはそのまま家に泊まり、三人で騎士団へ行った。
私とミッシェルは二日酔いで、その日は使い物にならなくて、団長に怒られた。


でも、気になっていたカールの事もミッシェルのおかげで少し気持ちが軽くなった。

「シシリー先輩、大丈夫っすか?水持ってきますか?それとも氷持ってきますか?横になりますか?」

「うーーーー、うるさい、ヤコブ…」






優しい後輩ヤコブの有り難みを感じた一日だった。













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