65 / 102
お茶会の噂
しおりを挟むラルス視点
仕事が終わり、屋敷へ帰ってクララと夕食を食べていた時、
「ラルス様、ブライアン様は…その、シシリー様とは仲良くなさっておられますか?」
「ん?ブライアン?うん、相変わらずあの二人は仲良しだよ。どうして?」
「今日、アメリア様のお茶会に行ったのですが、そこでブライアン様とシシリー様のお話しが出たのです…。
その話しは、私が知っているお二人と違って、ブライアン様は浮気をしてるとか、シシリーさんがその…自害されたとか…とてもお二人には聞かせられないお話しで…。
それをとても楽しそうにお話ししている方々がいて…私、体調が悪いと帰らせていただいたんです…。」
「何それ?クララは体調大丈夫なの?」
「あまりにも酷い内容のお話しなので聞きたくありませんでした。それで体調が悪いと嘘をついてしまったのです…ご心配をおかけしてすみません、ラルス様。」
「クララが大丈夫ならいいよ。
でも、ちょっと気になるな…。誰が言っていたのか分かるかい?」
「初めてお会いするご令嬢だったので、お名前は分かりません…。でも、アメリア様に聞けば分かるかと。」
「クララ、じゃあそのご令嬢の名前聞いておいてもらえるかな?」
「はい。アメリア様はお優しい方なので、そのお話しをされているご令嬢達を嗜めておりましたから。」
「そうか、クララはそういった令嬢に近付いてはダメだよ。」
「はい、ラルス様。ブライアン様とシシリー様は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ、エドにも言っておくから。」
「よろしくお願いいたします。シシリー様は私とお友達になって下さったのです。
ですから、シシリー様とブライアン様のお二人を守って下さいませ。」
「うん、分かったよ。」
その日は、可愛いクララにそう言ったが、やはり少し気になった。
こういった噂は二人の周りにはいつでもあった。結婚式が延期になった事も噂になった原因だろう。
でも、あんな事があったばかりなので、エドには話しておこうと思い、次の日エドに話した。
エドはやはり気になったのか、真剣な顔で俺に礼を言った後も何か考えていた。
俺も気になって、シックスにその話しをした。
「なんか嫌ですね、その話。」
「俺も気になる。多分、エドは動くと思う。俺も今度こそアイツらに結婚式を挙げさせたい。シックス、お前の奥さんにそれとなくお茶会の噂聞いておいてくれるか?
近々、ガース辺りが聞きに来ると思うから。」
「はい。情報を集めておきます。俺もあの二人を応援しているので。」
その日、家に帰るとクララが出迎えてくれた。
「ラルス様、私、アメリア様に聞きに行ったのです。あの時のご令嬢は誰だったのか。
詳しい事は言いませんでしたよ。
私の大事なお友達の事なので気になったと言ったら、教えて下さいました。」
「クララ、昨日の今日で聞きに行ってくれたの?」
「はい。私、とても怒っていたのです。
ブライアン様とシシリー様をあんな風に言う方に。」
「そうか、ありがとう。じゃあ、夕食の時に聞こうかな。」
そして、クララがアメリア夫人から聞いてきた話しをしてくれた。
「アメリア様は同じ年代の方しかお呼びしていなかったそうです。
ですが、イシュリン伯爵の奥様が急な用事で行けないので、娘さんが出席しますと連絡が来たそうです。
なので、あの日はいないはずの方でした。
奥様の代わりで来るのは構わなかったそうですが、何故かお友達もご一緒にお連れになったそうです。
ご令嬢方のお名前は、ライラ・イシュリン伯爵令嬢、バーバラ・グリア伯爵令嬢という方々です。
このお二人は席に着いた途端、シシリー様方のお話しを始めました。
最初から招待されていた方達も、とても不快そうにされておりました。私はここで退席してしまったので、この後の事は聞いた話です。
ご令嬢方は、アメリア様に嗜められて大人しくなるどころか、本当の話しをして何がいけないのかとアメリア様に仰ったそうです。
アメリア様はそこでお茶会をお開きにしたと言っておりました。
気分を害してしまってごめんなさいと謝って下さいました。」
「そう、今度アメリア夫人に、何かお礼をしないとね。ありがとう、クララ。
とても助かったよ。」
「シシリー様とブライアン様のお力になれたでしょうか?」
「なったなった。大助かりだよ。それより、子供達は寝ちゃったかな。」
そう言って、クララがこれ以上関わらないように話しを切った。
後、シックスの奥さんにも聞いた話しを教えておかないと。
あの人絶対クララに話し、聞きにくるから。
そう、イシュリン家とグリア家ね。
あまり良い話は聞かない家だ。
親も親なら娘も娘なのか…。
寝ている娘の頭をそっと撫でながら、どうか俺には似ずにクララに似ますようにと願った。
105
あなたにおすすめの小説
【完結】最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる