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俺の妻は有能
しおりを挟むシックス視点
団長から聞いたお茶会の話しを妻のサンディにすると、
「その話、私も聞いたわ。とっても腹が立っていたの!
あなたから聞いた二人はとても仲良しで相思相愛、それにブライアン様がシシリー様を溺愛してるって聞いてたのに、噂の話しは本当に腹が立つのよ!
お二人はとてもお辛い思いをしたのでしょう?なのにこんな話!
私は絶対許しません!
シックス!私、お茶会にバンバン出席して情報をかき集めるわ!
何処の誰が何を言ったのか、事細かに調べてくるわ!
あんな小娘なんかに好きにはさせないわ!」
「落ち着いて、サンディ!お前はそんな密偵みたいな事しなくていいから!」
「い・い・え!私は私のやり方であのお二人の仇を取ります!」
「仇って…まだ分からないでしょ?」
「やだ、シックスったら。この噂が何の意味もなく広がっていると思うの?
そんな事ないじゃない!
これはね、裏で汚い事を考えている人達のやり方なのよ!私、小説で読んだもの!」
「だから、サンディ、興奮しないで。
お腹に悪いから!」
「何を言ってるの、シックス。私は三人目よ、ちょっとやそっとで倒れないわ!
それに子供っぽいやり方が一番効果が出るの。下手に手を出すよりもこうやって周りを固めて、徐々に力を削いでいく小狡いやり方は意外と効くうえに、収めるのが大変なんだから。今のうちにコテンパンにしないと!」
「分かったから!もう言わなきゃ良かった…」
「シックス!後で聞いたら、怒っていたわ!」
「うん、そうだと思って言ったんだけどね、こんなに興奮すると思わなかったから。」
「心配しないで。私はこれでも連絡網があるから歩き回る事もないわ。」
「え?何?」
「ううん、何でもない。」
こうして、妻が率先して情報収集を手伝ってくれた。
次の日の夜、
「シックス!大変!」
そう言ったサンディは、集めてきた情報を俺に報告してきた。
「かなりの令嬢が二人の事を話してるんだけど、その噂を広めているのがイシュリン伯爵とグリア伯爵の娘よ。イシュリン伯爵の娘が特に酷いそうなの!
イシュリン伯爵っていえば財務部、グリア伯爵は経理部。
気に入らないと難癖つけて予算削る奴らよ、騎士団の予算を人質にされる前に何とかしないと!」
「イシュリン伯爵とグリア伯爵か…で、なんでその娘がブライアン達の噂流してるんだ?」
「そこはまだハッキリ分からないんだけど、婚約を解消されて、結婚相手を探してるって話しだけど、シシリー様をブライアン様と別れさせて、自分がブライアン様の相手に、なんてあり得ないでしょ?
だからイマイチ理由が分からないのよね。」
「婚約解消?どうして?もういい歳だよね?」
「そう、二十三よ。なんでも、相手から解消をとお願いされたらしいわ。ずっと解消して欲しいと伝えてたらしいけど、聞き入れてもらえなかったみたい。
で、お金で解決したみたい。」
「解消したかった理由ってなんだろう…相手は分かる?」
「うーーん、相手の事も聞いておくわ!」
「サンディって危ない事はしてないよね?」
「してないしてない!」
「だったら良いけど、絶対危ない事はしないでね。」
「うん、ありがとう。」
サンディは学生時代の同級生で、俺の猛アタックで婚約まで漕ぎつけた。
サンディは何かと忙しくなかなかデートもままならなかった。
どうしてそんなに忙しいのと聞くと、
「家の仕事を手伝ってるの」
と言っていた。
サンディの家は領地の葡萄が名産で、その葡萄で作ったワインも人気だ。
家の手伝いもない事はないだろうが、学生のサンディが何を手伝っているのかは教えてくれなかった。
いまだに謎が多いが、良き妻、良き母である事に変わりはない。
なので俺はサンディのやる事に口は出さない。でも、今、サンディは妊娠五ヶ月だ。
無理はしないでほしい。
次の日、団長が言っていた通り、ガースが俺の所にきた。
「シックス先輩、お願いがあるのですが…」
「噂の事だろ?」
「あれ?何で分かったんですか?」
「団長がそのうちガースが来ると言っていた。ウチのサンディにお茶会の事を少し調べてもらったぞ。」
「いやあ、さすがですね、ラルス団長!
シックス先輩もありがとうございます!」
そしてガースにサンディから聞いた話を教えた。
「イシュリン伯爵家とグリア伯爵家…。あまり関わりたくない家ですね。
目的は何でしょう?やっぱりブライアンですかね?」
「今のところそれくらいしか思いつかないな。でも婚約解消をゴネていたなら、その相手の事が好きだったんだろ?急に難関のブライアン狙うか?」
「ですよね…。もう少し探ります。先輩ありがとうございました。また何か分かったら教えて下さい。もういい加減あの二人を落ち着かせてあげたいので。」
「俺もそう思う。何か分かったら連絡する。」
「ガース、何だって?例の事?」
「はい、やっぱり探っていたようです。
ガース、ミッシェル、ヤコブが動いてるそうですが、既婚者を一人仲間に入れたいと言われました。」
「なるほど、ご婦人の情報網は侮れないよ。」
「そうですね、サンディも話した次の日には令嬢の名前をしっかり探り出しました。」
「そうだろうね、サンディなら。」
「え?」
「いや、何でもないよ。じゃあシックスはガース達を手伝ってあげて。」
「はい、分かりました。」
団長…“サンディなら”って言ったよな…。
ウチの奥さん、何やらかしたんだろう…なんで団長があんな言い方するの?
怖い怖い!
今は怖いから聞かないけど、今度団長に聞こう!
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